2016年5月23日月曜日

書きました:“白鳥の騎士”再臨~新国立劇場「ローエングリン」ゲネプロレポート

こんにちは。千葉です。

今週は少しおとなしい週になるはずだったのに、という思いがなくはないのだけれど、こうして紹介できる記事があることはいいことです(大人の感想)。なにか場所あったらください書きますので(さりげない宣伝←そうだろうか)。

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さて今日公開された記事の紹介ですよ。

●“白鳥の騎士”再臨~新国立劇場「ローエングリン」ゲネプロレポート

書いている最中には割と冷静だったつもりなんですが。

今読み返すとこれ、クラウス・フロリアン・フォークトへのファンレターですね(笑)。そのくらい、圧倒的な存在感だったんですよ彼。少なくとも、ゲネプロでそれぞれの事情アリで歌っていた中では。

どういい声だったか、どう独特だったかは記事に書きましたので、できたらぜひ読んでいただいて、新国立劇場にお運びくださいませ。あの声を聴くだけで損はしません。というか、カウフマンを外来オペラのプロダクションで呼ぶのが困難である以上、フォークト以上のローエングリンが日本に登場する可能性、ないんじゃないのかなあ…(もちろん、私見ですけど)

そんな思いもありまして、あのような文章になりました(笑)。ということで。

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なお、ですね。2010年の「パルジファル」コンサート形式の映像が全幕配信されてます(これは三幕ですが、ちゃんと全幕あります。この幕を選んだのは、比較的「ローエングリン」に近い存在になった後だから、ですよ)。




ゲネプロで聴いた声はこんなもんじゃなかった、と思うのは、彼が5年以上も最高のヘルデンテノールとして経験を積んできたからなのか、それとも録音なんてしょせんそんなもの、だからか(酷い言い方をしていますが、これはれっきとした公式配信なので音はよく録れていると思います)。そのあたりをぜひ、会場でお確かめくださいませな。

ということで本日はこれにて。ごきげんよう、おやすみなさい。

2016年5月22日日曜日

書きました:優美で笑いに溢れたウィーン・フォルクスオーパー「こうもり」開幕

こんにちは。千葉です。

4月下旬から、相当に濃い経験をさせていただいたのですが、いわゆる記事として出せる場所がないのでここに書くしかないな、と思いつつまだ手がついていません。もうちょっとだけお待ちください、ジョナサン・ノット&東京交響楽団からアンドレア・バッティストーニ&東京フィルハーモニー交響楽団、そして公開リハーサルだけどアレクサンドル・ラザレフ&日本フィルハーモニー交響楽団を見たことで、何も思わなかったほどはダメになっていないはずなので。

ただ、〆切があればそちらが優先されてしまう現実に千葉の筆が勝てないという、素朴で哀しい事情がございますことをご理解くださいませ…

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さて、こちらは本日最終日の舞台の、初日レポートです。

●優美で笑いに溢れたウィーン・フォルクスオーパー「こうもり」開幕

先日の「チャルダーシュの女王」で目が開いた千葉のオペレッタ理解ですが(本公演はきっと、千葉が拝見したリハーサルより楽しかったはず。あの過剰なサーヴィス精神が、本公演で盛りを増やさないわけがありませぬ)、「こうもり」で決定的なものになった感があります。

前回、今回と往年のハリウッド映画を参照するようなことを記事中に書いたのですが、個人的にはそれらの映画よりもオペレッタのほうがより好ましく感じられます。良くも悪くもフォーマットが安定していて、それ故にその中で変化球を投げ続けたハリウッドのミュージカル映画は、時として現在の目にはお話の作りが…だったりして。NHKのBSプレミアムではそういう映画がよく放送されているので、少なからず録画して見たものなのですが。

名作として評価が定まっている映画ならここで引き合いに出しても傷もつきませんでしょうから、あえて例をあげましょう。ジーン・ケリーの「パリのアメリカ人」、楽しいっちゃあ楽しいのですけれど、「負け役」の女性キャラクターの扱いとか、けっこう酷いものだったりします。「ドン・ジョヴァンニ」で「ドンナ・エルヴィーラをえんえんと小馬鹿にする演出を見せられるような不快感」がある、と言ったらおわかりいただけますでしょうか。スターがいて、成就すべき恋のヒロインがいて、それを助ける友人がいて、まではいいんだけど、引き立て役がとにかく残念な感じに作られちゃっているのがテンプレート的な作品の限界かなあ…なんて考察はですね、きっと現在の多くのエンタテインメントにも適用できる不満点ではないかな、とか思ったりします。

さすがに名作、「パリのアメリカ人」はそこまで酷くないのだけれど、悪役をらしく描くために意味不明なほどの憎悪を背負わされているキャラクタ、や、否定されるべきキャラクタをより悪く見せるために、立て看板みたいな台詞を喋らされたりしてるところ、見聞きした覚えはありませんか?ジャンル的「趣向」を突き詰めていくとどうしてもキワモノっぽい一点突破が出てきてしまう(そして、それが割と受けちゃう)ように思うのだけれど、これはまた別途考えるべきですねそうですね。

本題に戻りますと、オペレッタはさすがに「源流」。艶笑譚でも下卑たところまでは踏み込まず(かなり示唆はしてますけどね)、笑われ役もただの薄っぺらい看板になったりはしない。作品がそうできているのに加えて演者の皆さんが役に厚みを加えるからこそ、そのように楽しめるものになっているわけです。そんなわけで、「オペレッタは全幕に、実演に限る」と感じているわけです。CDで音楽だけで聴いていてはこの楽しさすべてはわからないし、たとえばかつて新宿コマ劇場で上演されていたような座長公演だとさすがに旧さを感じてしまうかもしれない。でも現在のつくり手によって洗練されて供されるこの舞台なら、そんなことは絶対にない。

クラシック音楽はどこか聴衆に挑みかかるようなところがある、そして聴き手は「挑戦を受けて立っては常に負ける」、立て看板のような負け役にしかなれない(笑)、これは音を出せない以上は仕方ない。でもオペレッタは別物です。文字どおりのエンタテインメントとして聴衆を楽しませることしか考えていないから、挑むどころか向こうから近づいてきて肩を引き寄せられる(でも壁ドンとか無作法になるところまでは踏み入らない配慮がある)。そんな心地よい感触は、最良の舞台に触れられたから一度で理解できたんだなあ、と感じているところなのであります。

ウィーン・フォルクスオーパー来日公演2016は、本日が「こうもり」の最終日、そして次の「メリー・ウィドウ」で終演です。ぜひ皆さんも楽しんで!としか、お薦めのしようがないなと感じておりますよ。「メリー・ウィドウ」と言ったらヒッチコックの「疑惑の影」になってしまう程度の千葉ですからね、この語彙のなさはご容赦ください(笑)。

そうそう、現在宝塚でも「こうもり」上演中なんですよね。この前の新国立劇場「アンドレア・シェニエ」と、帝国劇場ミュージカル「1789」の並行以上に直接的なバッティングは誰の悪戯なんでしょうね(笑)、とボケたところでひとまずはおしまい。ではまた。




来シーズンの告知を見ればおわかりいただけるように、オペレッタの他にもオペラ、バレエ、そしてミュージカルを上演するウィーン・フォルクスオーパーであります。ある意味、現在の「ザッツ・エンタテインメント」なのかも、とか思ったりした次第ですよ。

2016年5月18日水曜日

書きました:5/14開幕 ウィーン・フォルクスオーパー 最終舞台稽古レポート!

こんにちは。千葉です。

嵐のような忙しさ(なんて小さい嵐なのかと)もひと段落いたしましたが、それでも前説が思いつきません。っていうか、最近の世間話は書きにくいことばっかりで嫌になります。世知辛いのう…


でもせっかくだから一個だけ。

個人がおクスリに手を出していた残念な案件の裁判について、ワイドショーまるまる使って報じるのはどうかと思うよ。以上。

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さて、先日寄稿させていただきました、こちらの記事をご紹介。

●5/14開幕 ウィーン・フォルクスオーパー 最終舞台稽古レポート!

14日に開幕した、ウィーン・フォルクスオーパー来日公演2016の、開幕前日に行われたゲネプロのレポートです。記事については、たくさんある写真を見て楽しんでください!(自分の手柄ではまったくない)

…冗談はさておき(冗談になってなかったらごめんなさい)、オペレッタはですね、会場でライヴで全幕を見るのと、録画や録音で楽しむのでは別物でした。これでもか、というくらいにサーヴィスのいいエンタテインメントはライヴに、全幕に限りますよほんと。ニューイヤーコンサートで聴く断片的な音楽に食傷していたのか、どこかオペレッタ自体に近づいていなかった不明を大いに恥じております。

この件から千葉が得るべき教訓は、ひとえに「知らないままに遠ざけるな」ですね。他に偉そうに言えることがない。

なお、文中でもグランド・ホテル形式的云々とすれ違いや入れ替わりギミックについて触れていますが、この手の仕掛はとにかくライヴがわかりやすいなっていつも思います。たとえば「フィガロの結婚」、音声だけで聴いているとときどき「今誰がなんのためになにしてるんだっけ?」と、ゲシュタルト崩壊してしまうことが、なくはないです千葉の場合。これはきっと、この演目で良い舞台を経験していないというのが理由かなと思われます(入れ替わりが多くても、千葉のオペラ原体験である「ドン・ジョヴァンニ」で迷子になったことはないので)。

こう考えてくるとつい「修行ですね」とか〆たくなりますが、オペレッタはその逆を向いているんだな、というのが今回の感想なんですよね。クラシックの公演にはどこかある種の「果たし合い」の気配があるけれど、オペレッタはそうではない。楽しんでいってよ、と供される素敵な舞台を素直に楽しめばそれでいい。プリズムショーはみんなを笑顔にしてくれるんだ(おい)、ということで。

以上ご案内でした。ではまた、ごきげんよう。

2016年5月15日日曜日

5月はなんとコンサートなし(そういうこと言わない

こんにちは。千葉です。

こんなバタバタの時に公共放送の看板番組を告知する自分の間の悪さには脱帽するぜ!イエイ!(ほんと疲れてきた)というわけで、今晩からのプレミアムシアターのご案内だよ!


●5月16日(月)【5月15日(日)深夜】午前0時~4時

・ドキュメンタリー作曲家サティー生誕150年『サティースフィクション』(2015年 ドイツ)
・スカラ座 イン マルペンサ空港 歌劇『愛の妙薬 』【5.1サラウンド】

5月最初の回はまずエリック・サティのドキュメンタリーから。ドイツのドキュメンタリー、だと調べようがないので詳細はわからず。不覚なり。

後半は、というか尺的にはメインになるのが「スカラ座 イン マルペンサ空港」と題したドニゼッティの「愛の妙薬」。こんなプロモーション映像がありますね。



スカラ座!ファビオ・ルイージ!グリゴーロ!とか言わず、気楽に楽しみましょうかね…2015年9月17日、ミラノのマルペンサ空港でのイヴェントです。

●5月23日(月)【5月22日(日)深夜】午前0時~4時

・ウィーン国立バレエ公演『海賊』【5.1サラウンド】
・サンクトペテルブルク白夜祭2008 ワレリー・ゲルギエフ指揮 バレエ『火の鳥』『春の祭典』『結婚』

翌週はバレエ。最近はバレエについては多くをコメントできない、というスタンスでしたが、この回の再放送部分が自分には要チェック(おい)。

前半はウィーン国立バレエ公演「海賊」。これですね。



このバレエはまともに見てもいないのに、かってに脳内でクライマックスの場面が思い浮かぶな、なんでだろう…と少し考えて萩尾望都先生の影響であることに気づいたりして。「メドゥーラ!」なんつってね(「海賊と姫君」参照)。2016年3月31日、4月2日、ウィーン国立歌劇場の舞台です。

そうそう、この動画もそうなんですけれど、ウィーン国立歌劇場の公式配信ってあまり話題にならないのはどうしてなんでしょうね(話をそらすな)。

で、千葉が録画しなければならない再放送はサンクトペテルブルク白夜祭2008、ワレリー・ゲルギエフ指揮のバレエ「火の鳥」「春の祭典」「結婚」です。もしかしてもう持ってたかな、という気もしなくはないのだけれど、バレエ・リュスのオリジナルは確実に手元に置きたいのであります。

●5月30日(月)【5月29日(日)深夜】午前0時~

・ミニ・ドキュメント 『スーパースター ネトレプコ来日』
・アンナ・ネトレプコ IN 東京【5.1サラウンド】
・ザルツブルク音楽祭2012 歌劇『ボエーム』【5.1サラウンド】

最終週はアンナ・ネトレプコ祭。3月の来日公演はドキュメンタリー付きでやる気充分の模様。個人的には新国立劇場「アンドレア・シェニエ」でいい指揮をしていたヤデル・ビニャミーニが気になりますね(そこだけなのか←実は細切れのアリアを集めたコンサート、そんなに好きじゃないんだ)。2016年3月18日、サントリーホールでの公演。

後半は再放送、ザルツブルク音楽祭2012での歌劇「ボエーム」です。
新国立劇場でもおなじみの演出家ミキエレットによるポップな「ラ・ボエーム」、ちょっと調べてたら海外の人達が「RENT」を引き合いに出していて笑っちゃいました、それ先祖帰りだから!(笑)
ダニエレ・ガッティ指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団ほか、2012年8月1日のザルツブルク祝祭大劇場での舞台です。あ、でもネトレプコ的には2008年の映画を期待しないようにね!(でも音楽的にはあの映画苦手、”冷たい手”のアリアで音を下げる奴は嫌いだよ!)


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一週くらいはオーケストラのコンサートがあってくれてもいいんですよ?っていうか、昨日から話題のあれとか、収録ないんだろうなあ…はあ。いいんだ、この数日聴いてるものはいいものだモン!(モンとか言うなおっさんキモイ)

ボケはさておいて、この記事はここまで。ではまた、ごきげんよう。

書きました:バッティストーニ&東京フィルが示す「器楽的」イタリア音楽の真髄

こんにちは。千葉です。


またまた寄稿させていただきましたァン!(ちょっと疲れてます)

●バッティストーニ&東京フィルが示す「器楽的」イタリア音楽の真髄

アンドレア・バッティストーニ、「イタリア三羽烏」と称される期待の若手指揮者のひとりですね(と、今さら紹介している自分がちょっと恥ずかしい感もある)。ちなみにあとの二人は今度6月に東響に来るダニエーレ・ルスティオーニ(取材したい)、そしてMETなどでの活躍が知られるミケーレ・マリオッティ(2011年のボローニャ歌劇場の来日公演で来た)、です。

日本コロムビアが特設サイトを用意するほどに力を入れているマエストロ、見せてもらおうか、その能力とやらを!と、仮面をつけて赤い乗り物に乗って取材に伺いました(一部嘘)。

で、入魂の記事を書かせていただいたとおりなので、できましたらそちらをお読みください

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書き足りない部分は正直ありますが、せっかく東京フィルハーモニー交響楽団YouTubeチャンネルに多くの動画がありましたので、まずは聴いてみていただきたい気持ちが強くございましてあのような構成になっています。ほら、近くばよって音に聞け、であります(それ違う)。

昨日14日は文京シビックホールのコンサートに伺ってまいりましたが、定期のリハで聴かせた楷書体の演奏ではなく、すでに取り上げた作品をよりこなれた形で演奏する行書体だったように思います。すこし崩したところで演奏は楽譜からの読み取りによる真摯なものであることは変わらず。若いマエストロなので、聴くたびに演奏スタイルに違いがあることもございましょうし、もしかするとリハーサルとコンサートでやり方を変えるのかも、などと思ったりして。

なお、この日のプッチーニを聴いて、しみじみと「トゥーランドット聴きたかったなあ…」と思いました。藤原様でも二期会様でも新国立劇場様でもいいので(だいぶ無礼な物言い)、彼の「ラ・ボエーム」やってくれませんかお願いします。冒頭だけじゃ足りないっす(厳密には「ラ・ボエーム」冒頭ではないんだけど)。

まだ30歳にもなっていない彼の演奏、もっといろいろと聴いてみたくなりました。そんなわけで月曜の定期にも伺います。コンサート前には書いておきたくないこともありますので公演の後にはもうひとつ記事を書きます。

そうですね、軽いネタバレになるかもしれないことを言いますなら。
・彼の演奏は張りきった強音も魅力的だけど、弱音部の作りこみをこそ聴いてほしい(リハーサルで多く時間をかけたのはむしろそちら)
・すっごくマーラーが聴きたくなる、一番なんかじゃなく20世紀に入ってからの曲(これは未だ言えない)
あたりでしょうか。あとは記事参照ください。彼の演奏を知っている人にはきっとわかっちゃうことも多いでしょうから。

もしかすると「こんなにリハーサルを聴いてもコンサート楽しめるの?」と思われるかもしれないのですが、リハーサルはリハーサル、コンサートはコンサート、です。厨房をいくら取材しても料理の味は食べてみるまでわからない、です。
そんなわけで今、明日のコンサートがとっても楽しみですし、当日はさらに集中して聴こうと思っております。皆さまもぜひ、映画「道」を見てからコンサートに行こうね!(ちょっと遅いか)

ということで予告どおり全面改稿しました。ご容赦のほど。ではまた。

追記。

初日の反応を見る限りだと曲が相当に知られていない模様で(千葉は「映画音楽が好き」な層とクラシック音楽を聴く層にはずれがあると日頃から感じている)、もしかするとレスピーギ大好き吹奏楽青少年たちにも情報が届いていない気配を感じてきました。学生券も出るのに!

ということで援護射撃、ロータのバレエ組曲「道」と、レスピーギの「教会のステンドグラス」(英語だと"Church Windows"という味も素っ気もないタイトルに)だけ貼っちゃいます。これよりずーっと面白いよ!あと、アンコールがあるよ!(もう初日やったから許してください)






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なお、こういうのもございます。リハーサルで聴いた「教会のステンドグラス」はもっと強烈でしたので(配信動画と生演奏を比べないように)、ぜひ会場で。



2016年5月13日金曜日

書きました:ラザレフ&日本フィルがロシア音楽”以外”でも魅せる

こんにちは。千葉です。

最近、自分としては珍しく忙しいので前説なしです。世界的運動会については言及しないし見ないし、なので特に言うこともありませんし。

ではSPICEに寄稿させていただいた記事の紹介です。

●ラザレフ&日本フィルがロシア音楽”以外”でも魅せる

千葉がアレクサンドル・ラザレフを尊敬していることは前から書いてきました(最近は聴きに伺えなくて途絶えがちでしたが…)。言葉に還元されない濃厚な音楽については全幅の信頼をおいておりますゆえ、プログラムを見ればこういう形ででも紹介させていただきたくなる、というわけでございまして。いま現在来日中のサー・サイモンさんについても同様ですけど、その話はすると負け惜しみっぽくなるので勘弁してください(泣)。

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で、ラザレフと日本フィルに戻ります。
記事でも触れました、杉並公会堂での公開リハーサルに伺ってきたんですよ昨日。公開リハーサルは第四、第五楽章を仕上げて、第三楽章を一度通して少し直したところで時間切れ、という感じでございました。スコア持参で伺ったかいのある、充実したリハーサルでしたねえ…

……で、ですね。ラザレフと日本フィルに、どんな「幻想」を予想されてますか皆さん。へへへへへへ。

これはねえ、想像なんかしてもどうにもならないです。ヒントを一つだけ出すならば「お手元のスコアを確認してください」だけです。なんならIMSLPにもありますので、気になる方はぜひご確認を。
これは千葉が以前から感じていたマエストロのアプローチの特徴どおりではあるのだけれど、随所で驚かされたりつい笑わされてしまったりで、全曲をコンサートで聴いたら作品についての認識も改まりそうです。

もうひとつヒントというかなんというか。「日本フィルの幻想」って先入観は捨ててください。ミュンシュも小林研一郎も(敬称略)、一度忘れて作品そのものを受け取る貴重な機会になります。断言。

今晩の大宮ソニックシティから三日間ありますので、都合のつく会場でぜひお聴きください、と、記事を書いて公開リハーサルを経てより強く申し上げます。

ということで今回はご案内のみ。ではまた。

※追記。もう大宮の公演が終わったのでネタを割ります。
今回、幻想交響曲をラザレフはものすごく「楽譜通り」に演奏しています。それが結果として多くの音楽的アイディアを浮かび上がらせるという、実に見事な成果につながっているところがたまりません。

公開リハーサルで、最初に第四楽章を通した時にはその意図に気が付かなかったのですが、いつものように手際の良い直しを始めた途端、「そういうことか」と思い当たりました。

楽譜をお持ちの方は確認してほしいのですが、第四楽章の冒頭から見ていって、クレッシェンドはどこに、なんのパートにあるでしょう?はい、正解は練習番号50の二小節前、ティンパニのパートと、同じく練習番号50のアウフタクトの裏拍、シンコペーションを演奏しているパート群ですね。
それが何を意味するかといえば、「そこまでは楽器は増えるけれどクレッシェンドはしていない」、音量は上がっていてもいいけれど、それぞれの楽器は最初に指示されたピアニッシモのままで演奏されるべき、という読みの可能性なんです。ラザレフは今回そう読み取り、オーケストラに徹底させました。その結果、音楽はなかなか方向性を示さずに聴き手を焦らし、練習番号50前後で一気に強音を叩きつけられて驚かされるわけです。

これはあくまでも一例で(同様の処理は第五楽章冒頭でも行われていました)、随所で「楽譜はこうなっているだろう?」という徹底をしてみせたこの演奏は、きっとオーケストラには挑戦だっただろうな、と想像しています。なにせ、これまでの演奏経験を一度なかったことにして楽譜に向き合う必要があったはずなのですから。個人的には、今回のアプローチは名画の洗浄にも似たものであるように感じています。…もっとも、まだ千葉はコンサートでの演奏を聴いていないんですけどね(笑)、日曜に聴かせていただいたらまた何か書きますね(今度は別記事で)。