2017年4月6日木曜日

テオドール・クルレンツィス、SWR響の首席指揮者に

こんにちは。千葉です。
オーケストラの人事の話、今日はSWR交響楽団の情報です。

●Teodor Currentzis wird Chefdirigent des SWR Symphonieorchesters

テオドール・クルレンツィスは、もはや最も注目を集める指揮者の一人、と言ってしまっていいでしょう。少し前までなら「知る人ぞ知る」「鬼才」といった表現をせざるを得なかったところですけれど。
かく言う私にしても、ショスタコーヴィチの交響曲第一四番の録音で話題になるまでは名前を見かけた程度の認識でしたし、その後も「継続して新譜が出ているな、今時珍しいな」くらいの注目度でした。「”ムジカ・エテルナ”はブルッヘ(ブリュージュ)とペルミ、地名つけないとわかんなくなっちゃうな」とかね。



ですが、2016年度のレコード・アカデミー賞を、パトリツィア・コパチンスカヤとのチャイコフスキーで受賞してしまってなおそんなぼんやりした認識でいるわけにもいきません。なんといっても大好きなヴァイオリニストですから、コパチンスカヤ。



私個人は「ソル・ガベッタとのデュオ・リサイタルで来日するヴァイオリニスト」くらいの認識で聴いたショスタコーヴィチの協奏曲で完全にファンになってしまったわけですが、そもそもが現代作品を非常に得意とし、ここに貼ったコンサートのような意欲的なプログラムにも取り組む実にユニークな人だったんです。チラシの写真がかわいい感じだったから「ヴィジュアル売りかよ…」なんて思って流していた過去の私を殴ってやりたい(笑)。

脇筋が長すぎてもいけないので本題に戻ります。彼女がチャイコフスキーを録音する、それもクルレンツィスと組む、と来ては無視なんてできるはずもない、カップリングがストラヴィンスキーの「結婚」とくればなおのこと。



こんな演奏をされてしまえば嫌でも気になりますよテオドール・クルレンツィス。気がつけば小さいレーベル(すみません)からソニー・クラシカルに移籍して、セッションレコーディングでモーツァルトの「ダ・ポンテ三部作」を録音するという破格の待遇を得る存在になっていた彼ですが、如何せん中央アジアに近いペルミの歌劇場をホームとして、長時間の濃厚なリハーサルを行った上での演奏活動であるため登場頻度も多くない、さらにサイトやYouTubeチャンネルのロシア語・キリル文字のハードルも低いとはいえない(他の言語ができるとは申しませんが、パッと見で受け取れる情報がキリル文字の場合ほぼゼロになってしまうのです。勉強しようかな、ロシア語…)。あえて申しますなら、クルレンツィスとアニマ・エテルナ・ペルミ(便宜的にこう書きます)は「常設のサイトウ・キネン・オーケストラ」的な、プロによるアマチュア並みの時間をかけた演奏活動なんです、彼ら。それも作品の年代に合わせて使用楽器を変えたりといった、かなり考えられたアプローチの。


おや?コンマス裏にいるこのヴァイオリニストは…

私の恥はさておいて、そんな活躍を続けるテオドール・クルレンツィスが、2018年からSWR交響楽団の首席指揮者になる、というニュースがこの記事でお伝えしたいことなんです。やっと本題にたどり着いた(なお、Südwestrundfunkで南西ドイツ放送)。
これからの活動がどのようなものになるかはこれからの発表になりますが、なにより彼の演奏にアクセスしやすくなるのがありがたいところ。なにせSWR交響楽団は合併後最初の演奏会※を現在自身のサイトで全曲公開しているくらいですから、この先も期待できるでしょう、きっと。

※ご存知かもしれませんが、SWR交響楽団はかつてギーレン、カンブルラン、ロトが活躍したフライブルクのオーケストラと、チェリビダッケ、ジェルメッティ、ノリントンらが活躍したシュトゥットガルトのオーケストラが2016年に合併したものです。公式サイトはリンク先でどうぞ。

キリル・ペトレンコがそうだったように、”日本にいる私たちが知らないままにいきなり巨匠として登場する”指揮者、これからも増える予感がします。もっとも未来のことはわからないけれど、この指揮者が強烈な個性の持ち主であり、すでに世界が注目する存在であることは疑いようもない。せっかくなのでご存じなかった方はこの機会に彼の名を覚えてくださいませ。

ということでこの記事はおしまい。ではまた、ごきげんよう。


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