突然ですが、コンサートのご案内です。
●東京フィルハーモニー交響楽団 3月定期演奏会&「響きの森クラシックシリーズ」
ロシアのマエストロが、得意のロシア・ソヴィエト音楽を東京フィルと演奏する。素直に歓迎したい、この顔合わせならではのプログラミングではあるけれど、そこで取り上げられるのがチャイコフスキーとハチャトゥリアンであること、そして何よりマエストロがミハイル・プレトニョフであることが、私たちを少し考えさせる。前半にチャイコフスキー、後半にハチャトゥリアンと見れば「ロシアとソヴィエト」「作風の違いでコントラストが」などなど、ほとんど自動的に思考が動き始めるだろう。だがここに、定期演奏会とは別のシリーズ、「響きの森クラシックシリーズ」で演奏されるグラズノフ(ヴァイオリン協奏曲)を入れるとどうだろう?
グラズノフの協奏曲、もっと演奏されてもいいと思いますね。
コンサートにバレエにオペラに、映画にテレビにCMにと誰もがその音楽を耳にしてきたチャイコフスキー(1840-93)、独特の民族的なサウンドと強烈なリズムで体制の壁を超えて広く人々を魅了してきたハチャトゥリアン(1903-78)、この二人の間にショスタコーヴィチの師としても知られるアレクサンドル・グラズノフ(1865-1936)を置くことで見えてくるのは、「三世代のロシア・ソヴィエトが誇るメロディメイカー」揃い踏み、ではないだろうか?
一括りに出身地域でまとめてしまったが、旋律美が特徴とは言ってももちろん三人は生きた時代も違えばその個性も明確に異なる。ロシアの伝統を受け継ぎながらも、生前は「西欧派」などと言われてしまったピョートル・イリイチ・チャイコフスキー。「ロシア五人組」の期待を受けた天才として登場し、しかし革命の時代を生きて最期はパリで客死したアレクサンドル・グラズノフ。晩成ながらも、出身地の特色を活かした音楽が多様な形で今も受容され続けているアラム・ハチャトゥリアン。生きた時代を少しだけ重ねたこの三人が伝えてきたロシア音楽のリレーを感じさせ、またそれぞれの個性を際立たせてくれるだろうプレトニョフの手腕に、それに存分に応えるだろう東京フィルと独奏のユーチン・ツェンに期待しよう。
チャイコフスキー国際コンクールのウィナーズコンサートから。これから三年あまり、その成長ぶりにも注目だ。
・3月定期演奏会 | 2018-2019シーズン
3月13日(水)19:00開演 サントリーホール
3月15日(金)19:00開演 東京オペラシティコンサートホール
3月21日(木・祝)15:00開演 Bunkamura オーチャードホール
指揮:ミハイル・プレトニョフ
ヴァイオリン:ユーチン・ツェン (2015年チャイコフスキー国際コンクール ヴァイオリン部門最高位)
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
チャイコフスキー:
スラヴ行進曲 変ロ短調 Op.31
ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.35
ハチャトゥリアン:
バレエ音楽「スパルタクス」より アダージョ
交響曲第三番 ハ長調 Op.67 「交響詩曲」
・響きの森クラシック・シリーズ Vol. 67
3月23日(土)15:00開演 文京シビックホール
チャイコフスキー:スラヴ行進曲 変ロ短調 Op.31
グラズノフ:ヴァイオリン協奏曲 イ短調 Op.82
ハチャトゥリアン:
バレエ音楽「スパルタクス」より アダージョ
交響曲第三番 「交響詩曲」
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…という感じで読み解くのが妥当なポイントだろうし、仮に何か頼まれたら私だってこう書く。たぶん。あとまだ文字数があればあれかな、「スパルタクス」と「2001年宇宙の旅」くらい触れるかな。文脈的に置きにくいか。
ああそうだ、そういう穏当な紹介で十分、と判断するのが普通だ、とわかっているんだ。メインに置かれた曲があの作品でなければ…
あの何から何まで過剰な作品が、11日のあいだに四度も演奏されるこの機会のために、私も少し過剰に書き残しておこうと思う。そう、次回から、アラム・ハチャトゥリアンが革命30周年の記念曲として書き残し、後に交響曲第三番としたあの作品について少し書く。いやいっぱい書く。
あくまでブログ用なので、どこかの作曲家さんを見習って自由に書くので、粗についてはご容赦いただきたい。ではまた。
(追記)完結しましたので以下にリンクを。最後の2つだけ読めば、いちおうはこの作品について読めるようにしました。その〇は読まなくても大丈夫です(おい)。
>その〇
>その一
>その二
>その三
(さらに追記)
おまけも書きました。興味のある方はご覧くださいませ。
これが、”あの何から何まで過剰な曲”です。
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