2019年3月27日水曜日

今年もまた熱い夏が来る 〜フェスタサマーミューザKAWASAKI2019 ラインナップ記者発表会

2019年3月27日(水)、ミューザ川崎シンフォニーホールの市民交流室で「フェスタサマーミューザKAWASAKI 2019」(以下フェスタサマー)のラインナップ記者発表会が開催された。福田紀彦 川崎市長、そしておなじみホールアドバイザーの秋山和慶と松居直美、小川典子、そしてこのホールを本拠地として活躍する東京交響楽団 楽団長の大野順二にくわえ、日本オーケストラ連盟から名倉真紀が登壇した会見では、休館からの復帰公演のシリーズとなり、より注目を集める(厳密には7月初旬から公演が始まる)フェスタサマーと、ホール15周年を飾る公演について熱い言葉が語られた。


今年は7月27日(土)に開幕し、8月12日(月・振休)まで16日間にわたって数多くのコンサートが連日開催される(8/5のみ演奏会なし)。首都圏のオーケストラによる特色を活かした公演の数々、ホールアドバイザーによる企画、そしてゲストの登場にと多彩なプログラムは今年も健在。今年の注目ポイントはやはり、初の首都圏外からの参加となる仙台フィルハーモニー管弦楽団の登場だろう(8/4)。これで首都圏のオーケストラによるお祭りから、”日本の”オーケストラの祭りへと、スケールがまた大きくなることになる。
ではプログラムを見ていこう。かつては定期公演の”ハーフ・ポーション”公演も特徴としていたフェスタサマーだが、もはやその枠に収まらない公演が目立つようになった。「定期公演で仕上げた演奏を、最高の会場でさらに高める演奏会」や、「ぜひ機会を作って演奏したかった作品に挑む絶好の機会」など、それぞれがひとつのチャレンジの場としてこのフェスタサマーを活用しているようにさえ見える。今年のプログラムでは、クロスオーヴァー的な軽めの演奏会はなくなって、どれを取っても聴き応え十分のプログラムが並んでいる。会見の中で山本事業課長が語ったところによれば、「セット券として組んだ公演ごとにテーマをもたせた格好」とのことなので、ぜひ皆様もその意図のほどを読み解いてみてほしい。
広く市民、いや首都圏民に楽しまれるフェスタサマーだが、意外にレアな作品も多く演奏されることはご存知の方も多いだろうけれど、今年は開幕公演から「ノット&東響の『サンダーバード』」(!!!)、「アラン&都響のヴォルフ、レスピーギ」「川瀬&神奈川フィルのスペイン物 with 渡辺香津美(エレキギター使用!!!!)」「藤岡&シティ・フィルの芥川交響曲第一番」(!!!!)などは聴き逃せない。また、いわゆる「王道」プログラムの数々も充実している。「上岡&新日本フィルのロシア物」「ミッキー&読響のブルックナー 第八番」「コバケン&日本フィルのチャイコン・ベートーヴェン 第七番」などなど、それぞれに聴きどころあるコンサートが今年も揃っている。これまで夏のコンサートとして軽めのプログラムを披露してきたN響も、名曲プロとはいえクラシック作品のみ(しかもソリストに反田恭平!)と、ライト層からコア層まで存分に楽しめることだろう。
もはや日本を代表すると言っていいホールに初登場の仙台フィルハーモニー管弦楽団は、郷古廉をソリストに迎えてストラヴィンスキーとチャイコフスキーのロシア物を演奏する。一曲目こそあまり演奏されない「サーカス・ポルカ」だが(個人的には大いにオススメしたい)、チャイコフスキーは名曲中の名曲を揃えたプログラムで、堂々たるミューザデビューとなることだろう(なお、フェスタサマー期間中、このホールでヴァイオリン独奏が聴けるのはこの公演だけなので、その点からも注目してほしい)。

佐山雅弘の急逝は、このホールのエンタメ部門への多大な貢献を思えば小さからぬ影響をフェスタにも与えるかに思われた。しかし故人の遺志を組んだかたちでフェスタサマーに今度は単独で再登場する大西順子トリオ(8/8)、共演も好評だったオルガニストのルドルフ・ルッツによるリサイタル(8/10)は私たちを楽しませ、また故人を忍ばせてくれるものとなるだろう。

アウトリーチ公演の充実もフェスタサマーの変わらぬ特徴の一つだ。休館明けてすぐの「ミューザの日2019 ウェルカムコンサート」(7/1、まさに15年前に開館したその日の開催)から続けて楽しめるプログラムが今年も用意されている。
「こどもフェスタ」として開催されるホールアドバイザーの小川典子による「イッツ・ア・ピアノワールド」(7/28)、かわさきジュニアオーケストラ発表会(8/10)の二公演、そして市内の音楽大学による演奏会(洗足学園の恒例”バレエとのコラボ”公演は8/1、昭和音大のコンサートは8/9)は廉価で楽しめるコンサートとして今年も好評で迎えられるだろう。無料企画の「音と科学の実験室 夏ラボ!」や、「若手演奏家支援事業2019 ミニコンサート」も来場者を楽しませてくれるのだから、幅広く多くの方が来場されることを期待したい。
大震災により強いられた休館の副産物として、川崎市西部での開催が続いている「出張サマーミューザ@しんゆり!」も今年も開催される。堂々たるドイツ音楽プログラムを東京交響楽団、神奈川フィルハーモニー管弦楽団が披露するので、川崎市西部、東京都多摩地区や町田エリアにお住まいの皆様はお見逃しなく。

特別参加として一昨年以来にワレリー・ゲルギエフ指揮PMFオーケストラが参加することもこの日発表された。メインにはショスタコーヴィチの交響曲第四番が置かれ、またしても堂々たる大コンサートの予感である。なお、未発表の独奏者は「第16回チャイコフスキー国際コンクール・木管楽器部門 優勝者」を予定しているとのことで、見出されたばかりの若き才能に見える機会ともなることが明かされている。
そうそう、今年のフェスタサマーのタイトルは「15年目の熱響へ!」である。少し気が早いが言っておこう、今年もまた熱い夏がやってくるのだ、と。

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会見では、ミューザ川崎シンフォニーホールの開館15周年記念公演として秋に行われるシェーンベルクの大作「グレの歌」の演奏会についても触れられた。開館からこれまで、節目を飾ってきたマーラーの交響曲第八番から演奏頻度の低い、しかしこのホールこそ作品に最適と思える作品として、かつノット&東京交響楽団が演奏すべき作品として、この大編成の作品を選んだ、と竹内淳事業部長は語った。もっとも、今年在京オーケストラで「グレの歌」公演が連続したのは予想外だったとのことだが、「解像度の高いサウンドを特徴とするミューザ川崎シンフォニーホールで、声楽を交えた大編成のこの作品を聴いていただくのが最適だと考える」と自信を見せた。
また、現在進行中の改修工事は順調に進んでいることも明かされ、「好評で迎えられてきた従来のサウンドと、PAを使用した場合の聴きにくさの改善」が図られているのだという。内装などの変化もないということで、一見したところではわからないかもしれない改修だということだった。

ただし、以前からホールのホームページなどで紹介されていたオルガンの調整については、松居直美から「これまでも高く評価されてきたミューザのオルガンの美点である、全体の音像が調和する特性がより良くなった」とのコメントがあった。従来のホールの強みを更に伸ばし、弱みとされた部分や旧態化した設備を入れ替えて、と正常進化してミューザ川崎シンフォニーホールは再登場する、ということなのだろう。
そのサウンドの健在ぶりを、進化の程を確認するためだけにでも来場する価値のあるフェスタサマーは、今年もノット&東響のオープニングファンファーレで開幕し、尾高忠明と東響、そして昨年の浜松国際ピアノコンクールの覇者チャクムルの共演で幕を下ろす。4月のチケット発売まで、まずはじっくりとスケジュールとプログラムを読み解いてお待ちください、と私からも申し上げておこう。
>フェスタサマーミューザKAWASAKI2019 公式サイト

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私なりの聴きどころを簡単にまとめました。三つもあるから長いんですけど、よろしければどうぞ。

>その一 セット券で読む
>その二 レア曲を聴く!
>その三 独奏者を聴く

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