2019年3月24日日曜日

8Kふたたび ~ラトル&BPh、ネルソンス&WPh

前に紹介した旧聞同様、こちらももう旧聞なのだけれど(すみません)、1月末に今度は残り三つのうち、ふたつのプログラムを体験できる機会を得た。会場はあのNHKホール…の隣の小さなふれあいホール
これからもこういう機会はあるかなと思うので簡単に会場の印象を。
まずストリームホールで聴いたものより、ずっと音がいい。ストリームホールでは各ジャンルの音楽を流していたこともあってクラシックの音を出すようになっていなかったろうし、このあたりが常設会場でのイヴェントの強みかなと思う。なので、8Kに興味がある方はまたの機会があったらぜひ、本当に行ってあげてください。この日すっごく来場者が少なくて、なにかとても寂しかったので。イヴェントは決まればここで告知されると思います(もう今年のNHK音楽祭が告知されてますね)

ただし苦言を一つ。後方で空調の音がずっと鳴っているので、その点は私にはあまり嬉しくない。また「プロジェクターでスクリーンに8Kの映像を映写する」という場合にどれだけの表現力が得られるものかはわからないのだけれど、餅屋さんの仕事にあれこれ申し上げても仕方ないだろう。私にとっては音がメインなので気にはならなかったが、ギラギラ感は巨大モニターを使っていたストリームホールでのイヴェントのほうが強かったかな、と思いました。

●世界三大オーケストラの響き ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

指揮:サー・サイモン・ラトル
管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

ハンス・アブラハムセン:オーケストラのための三つの小品
ブルックナー:交響曲第九番 ニ短調(第4楽章付・補筆完成版)

まず一曲目は世界初演のハンス・アブラハムセンの「オーケストラのための三つの小品」。3つの楽章は急→中速→緩という構成で、演奏後の場内(もちろんベルリンの方)の反応も微妙に感じられた。三楽章の終盤で映されるパーカッショニストの、地味に高い技工が要求されていたシークエンスは面白かったけど。その点、ブラームスの回に演奏されていたイェルク・ヴィトマンの曲は大受けしていたわけで、なるほどヴィトマンは人気あるんだなあなんて、あとになって思った次第。

そしてお目当ての、ブルックナーの交響曲第九番、四楽章を最後まで演奏できるようにしたヴァージョンのもの(校訂者の名を並べるととても長くなるやつ←と思っていたけど、最終的な版はコールス完成版)。ラトルとベルリン・フィルのCDで聴いて以来、実は私はこの曲をいわゆる未完成交響曲扱いしなくなったほどには感銘を受けていたものだから、この機会は本当に嬉しい。
…と思って始まった演奏なのだが、ときどき新参のメンバー(コンマスのバルグリーや、ホルンのトップを吹いていた人など)ががんばるけれどなにか緩い。テンポじゃなくて、精度が。なんというか、「ベルリン・フィルのブルックナーですから」と言いたげなオケと、四楽章版として再構成したい指揮者の間のすきま風と言いましょうか。ああまたこんな演奏聴かされちゃうのかあ、と感じていた私は昼っから出てきたこともあって少々おネムになりかけていたのだけれど。四楽章が始まったら音が変わった。精度は上がり、表現は録音よりずーっといい!テンポを動かすし、曲線的な、いわゆるブルックナー的ではない表現も駆使しつつ全力で頂点を、超越を目指す指揮者とオーケストラは疑いなく一体となっていた。終楽章だけ、録音のやつと差し替えたい、できるなら今すぐに。



なんというか、未踏峰に挑むときにはどこまでも互いを信じられる仲だった、背中は預けられる関係だけど、普段はそれほどでも…ということなのかな。そんなふうにあらためて感じ、それが彼らの時代だったのだ、と理解することにした。残念だが終わった時代のことだ、考えすぎてもどうにもならない。今後の客演でホームランを打つこともあるでしょうし、そのときはその時で楽しませていただきます。

●世界三大オーケストラの響き ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

指揮:アンドリス・ネルソンス
独唱:カミラ・ニュルンド(ソプラノ) ゲルヒルト・ロンベルガー(メゾソプラノ) クラウス・フロリアン・フォークト(テノール) ゲオルク・ツェッペンフェルト(バス)
合唱:ウィーン楽友協会合唱団
管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

ベートーヴェン:交響曲第九番 ニ短調 Op.125

その後、今度はウィーン・フィルの第九として、アンドリス・ネルソンスが指揮した演奏も上映された。…うん、ステージの下が箱状になっていて、そのまま共鳴箱になってるというホールの性質がわかったよ。22.2chで得た感覚をもって過去の録音を聴いたら受け取り方が変わるかも、というくらい、ステージ上のサウンドがわかった。気がします。演奏そのものは、えーっと…小難しいことを言わないタイプ、と言えばいいかしら?(吉田秀和風)
日本公演の代役できた頃には、ここまでこのオーケストラと懇意になろうとは想像もしませんでしたねえ…実演を経験してこなかったせいか、ネルソンスがやらんとすることが、正直に申し上げてまだよくわからない。貧乏なので仕方がないのだけれど。放送や配信でもう少し聴いてみようと思います(謙虚)。

これであとはコンセルトヘボウ管の公演を何かのかたちで視聴すればなんとか8Kのこの番組コンプリートだな…なんて思っていたら、今度は今年のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 ニューイヤーコンサートが8K版で放送されるのだとか。もうそこまで興味のないイヴェントなのだけれど、タイミングを見てなにか手段を探すとしましょうか。以上8K放送にちょっと詳しい私からのレポートでした。では。

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