2012年2月10日金曜日

この時期に聴くのも悪くない、かな

こんにちは。千葉です。

最近、赤貧の度が進むばかりなのでコンサートはもっぱら無料のもの中心になってしまっているのがなんとも…

グチはいいや(笑)、もう日付変わって今日聴きに行くのはこちらのコンサート。申込は必要だったけど、入場無料のコンサートです。

■神奈川フィル×和楽器 スクランブル/ルーレット@厚木

深夜ぼっとテレビを見ていた、なんてどこかの歌詞のような状況で飛び込んできたCMに、まだ受付可能であることを教えられたんですよ、ありがたいことです。その上入場無料というのだから、tvkさまにはしばらく頭が上がりませんね(笑)。

演目としてはタイトルの示す通り、オーケストラと和楽器の共演ということで、神楽と邦楽器、オーケストラを一度に楽しめるもの。オーケストラの方は黛敏郎に武満徹の演奏機会の少ない作品、こんなにありがたい機会はそうめったにありませんよ!
と千葉はこの公演の存在を知ってすぐに思ったのだけれど、世間一般ではどうなんでしょうね?いや、いわゆるクラオタ的にも反応が薄い公演、なのかな?う~ん。
千葉はですね、一時期この時期の恒例行事として「建国記念の日に黛敏郎を聴く」というのをやってました。このネタの意味、もう通じにくくなってますよねきっと。でも説明はしませんよ、ぜひググッてみてくださいませな。高校時代に彼の「打楽器と ウィンド・オーケストラのための協奏曲」を演奏して以来、なんとも引っかかる不思議な存在なんです、黛敏郎氏。かろうじて彼の「題名のない音楽会」の記憶がある、という程度で、おそらく一番親しんだ彼の作品はNTVスポーツ行進曲だと思うけれど…



高校の時には素直にその作品に、演奏者として向き合えたものが、長じるにつれ、ニュースなども見るようになれば憲法変更サイドの集会で活躍する黛氏の姿を何度となく見ることになり、否応なく政治的バイアスのかかったお付き合いになる。どちらかといえば左寄りの千葉のことですから、こうも旗幟鮮明にされてしまうと近づきがたい事この上ない作曲家の一人になってしまったのです。武満徹が大江健三郎とのつながりからいわゆるリベラル寄りに思われ(本当のところは知りませんよ)、一方で彼は大いにアナクロな右翼に思えた。それでも積極的にその音楽に近づこうと思うほど、当時の自分は音楽と作曲家、分けては考えられませんでしたねえ…(今は「カッコに入れて」お付き合いすることができると思います、台本などのテキストで酷いことを言ったりしていなければ)

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上にリンクを貼ったのは岩城宏之指揮、東京佼成ウインドオーケストラによる、黛敏郎吹奏楽作品集です。録音は1998年。作曲者が亡くなって、ようやく再評価を始めようか、そんな思いが岩城さんにはあったのかなあ…吹奏楽の録音の中では、割りとよく雰囲気まで捉えられていると思いますよ、興味のある方はぜひ。

このレコーディングに前後して行われたコンサート、聴きに行ったんですよ。もちろん、演奏した「打楽器とウィンド・オーケストラのための協奏曲」を聴いて、昔懐かしい気持ちになるために、です。でもねえ、こんな鮮烈な音楽を聴いて、そんなノスタルジーだけに浸ることなんてできませんよ(笑)。パワフルとはこういう音楽に使わないといけません、まさに「トーンプレロム」を体感したような気分で、高揚して飲みに行ったのを憶えてますね…そうそう、自分の前に座っていた母娘と思しき女性二人、全くついていけてない感じを丸出しにしていたのも覚えてます、「何やってんの?これ何?」みたいな感じで、マンガなら間違いなく頭上に大量の疑問符が飛び交っていたでしょう、ええ(微小)。ちなみに今度、東京フィルが広上淳一の指揮でオール・マユズミ・プログラムを演奏しますので、興味のある方はぜひ。先入観なしに、黛敏郎の力強い音楽を聴いてみてほしいなあ、などと思ったりします。


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今日聴けるのはバレエ音楽「舞楽」、予習には何を聴くべきかと手元を探すとこの二種が見つかります。



まずは近年のヒット企画、NAXOSレーベルの「日本作曲家撰集」より黛作品集。演奏は湯浅卓雄指揮のニュージーランド交響楽団です、2004年の録音。
なかなかクリアなサウンドのオーケストラで、手際よくまとめられた演奏は、きっと抵抗なく聴けるんじゃないかな、と今回聴きなおして感じました。雅楽の模倣もまあ、そつなくこなせているのではないかと。

もう一枚はこれ。



こちらは岩城宏之指揮、NHK交響楽団による1967年の録音。初演からそう日が経っていない時期の、若き岩城宏之による力強い録音です。さすがに音は古い、というしかないのだけれど、この演奏は黛作品のもつ怪しい力をストレートに表現している、同時代の名演だと思います。ほら、ショスタコーヴィチ作品をコンドラシンが指揮したような意味合いで。あ、この比較、少しも過大評価ではないと思いますよ、「東洋の火山」の圧倒的な力感も、混沌と紙一重の力を感じさせる音楽にしても実に素晴らしい。今はあまり…なオーケストラにも全力で拍手して差し上げたい。このホルン、千葉馨さんですかねえ…

おそらく、音響的に作品を捉えたいなら湯浅盤のほうがわかりやすくていいでしょうね、でも個人的には黛敏郎サウンドの魔力を湛えた岩城盤をオススメしたい。悩ましいところです…

なお、湯浅盤の解説はこのシリーズの他の盤同様に片山杜秀氏による素晴らしいものが収められていますので、その一点だけでも配信で満足せずにCDを買う価値があります。というか、正直なところこの解説がなかったらこっちは手放しちゃっても、いいかな…黛敏郎と武満徹を同時代の文脈に置き直して捉え直すことで、こうも刺激的な戦後日本のクラシック界が見えてくるんですね、面白いなあ…そんなわけでますますもって悩ましい、ですからどうでしょう、これは両方手元におくのがいいんじゃないですかね(笑)。

押し売りはこのあたりにして(笑)今日のブログはお終い。字によるポッドキャスト風に、だだっと一気に書き下ろしてみました(笑)。こっちは定形なしで行こうと思います故、しばらくは方向も文体も定まらないかと思うのだけれど、もしお楽しみいただけるようなら今後ともおつきあいくださいませ。ではまた、ごきげんよう。