2017年2月28日火曜日

METライブビューイング「ロメオとジュリエット」

こんにちは。千葉です。

昨日拝見した「ナブッコ」でも告知があったので、そして既に現地では好評で迎えられている模様なのでご紹介しましょう、METライブビューイング次回作。

●METライブビューイング グノー「ロメオとジュリエット」

ヴィットリオ・グリゴーロとディアナ・ダムラウが主役のこの舞台は新演出のプロダクション。グノーのオペラと言えばまずは「ファウスト」でしょうけれど、これも名作を原作とした作品です。バートレット・シャーの演出、指揮はジャナンドレア・ノセダです。











上映は2月25日より各地劇場にて。METらしい大きい舞台を活用した大きい見せ方、旬の歌手の舞台、お楽しみあれ、です。

<参照> 現地評1 現地評2 現地評3

※追記。2月27日拝見しました。オススメです。
演出のバートレット・シャーは「オテロ」「ホフマン物語」でもいい仕事をしていました、というより渡辺謙を起用した「王様と私」の演出をした、という方が一般的に通りが良いかもしれません。ミュージカルやストレートプレイで活躍する彼の演出は流れもよく美しい場面も多いもの。上に貼っておいた動画のうち、一番下の喧嘩の場面はここに至る流れの作り方に感心しました。先日笈田ヨシさんの講演を伺ったばかりだから、つい演出家が仕事をしている部分に注目してしまった、というのはあるかもしれないのですが、ここの目配りは素晴らしいです。
なおこの舞台、中世ヴェローナに限定されない「どこかの都市、いつかのお話」くらいの虚構性なのだとか(休憩中のインタヴュー参照)。フェリーニの「カサノヴァ」を参照したという衣装デザインはたしかに考証や再現より、表現を意識したもの。セットは基本一つのもので小道具や見せ方で場面を変えるものですが、映像的にも楽しめます。

そして音楽。ノセダの指揮や、ミハイル・ペトレンコのローレンス神父(が腹に一物あるように見えるのは昨年の「ファウストの劫罰」のおかげ←おい)、キャピュレットのローラン・ナウリにマキューシオのエリオット・マドールなど見どころ聴きどころは多いけれど、主役二人の前には霞んでしまう、と言わざるをえない(いや、実際にはこのプロダクションのスキのなさが主役の二人をより盛り立てているのだけれど、お決まりの物言いということで許してください)。
ヴィットリオ・グリゴーロのロメオと、ディアナ・ダムラウのジュリエットは素晴らしいです。これでますます向こうで人気になって、なかなか日本でのオペラ公演には出会えないことでしょう…多くを語ってもしょうがないので、上の動画で気になった人は今週中の上映なので迷ってる暇はないです。ぜひ劇場へ。

グノーの歌劇は「ファウスト」以外ちゃんと聴けていない状態なので「ロメオとジュリエット」も初見でしたが、戯曲から台本に落とす際にうまい具合に名台詞を入れ込んで、エンディングも甘めに改変されていてちょっと泣けます。原作の絶望的な入れ違いを、…ってここからは書かないほうがいいでしょう。ぜひ劇場へ(二回目)。

以上お知らせでした。ではまた、ごきげんよう。

2017年2月26日日曜日

2/26(27)「アンドリス・ネルソンス指揮 ライプチヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団/ミルガ・グラジニーテ・ティーラ指揮 バーミンガム市交響楽団 演奏会/ドキュメンタリー『マエストラ 指揮台への長い旅』」放送

こんにちは。千葉です。

2月26日深夜24:00~(27日未明0:00~)から放送される、NHK BSプレミアムのプレミアムシアターのご案内です。オーケストラの演奏会とドキュメンタリーの三本立ですよ。

●アンドリス・ネルソンス指揮 ライプチヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団演奏会/ドキュメンタリー『マエストラ 指揮台への長い旅』/ミルガ・グラジニーテ・ティーラ指揮 バーミンガム市交響楽団演奏会

順番に少しずつコメントしますね。

・アンドリス・ネルソンス指揮 ライプチヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団演奏会
音楽監督として活躍するボストン交響楽団とのレコーディングがグラミー賞を受賞したばかりの、そして今回放送されるライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の首席指揮者に今年就任するアンドリス・ネルソンスの活躍は、今や無視できないものです。オペラでもシンフォニーでも経験を積んで存分に活躍するマエストロが、「欧米」とくくられながらあり方の違う2つのオーケストラでどんな活躍を見せてくれるものか、この日放送されるコンサートからも伺えるでしょう。

曲目はヴェーベルン、ワーグナーに「春の祭典」ですよ。…ライプツィヒ、ここまでモダンなオケになるとは思いませんでしたなあ、なんてかろうじてクルト・マズアの時代を覚えているおじさんの感慨でした。それはブロムシュテット、シャイーと続いた長い近代化(と書くと何か申し訳ないけど)による成果、良いも悪いもないのですけれど。


「ミュージシャンズ・アット・グーグル」に登場したアンドリス・ネルソンス。一時間くらいあるのでお時間のあるときにでもどうぞ。

・ドキュメンタリー『マエストラ 指揮台への長い旅』(2016年 ドイツ)
おそらく、生きているうちに消えてくれると期待している言葉、「女性指揮者」のドキュメンタリーです。
シルヴィア・カドゥフ、マリン・オールソップ、バーバラ・ハンニガン、アヌ・タリ、コンスタンティア・グルズィが出演者に並んでいますが、この中で演奏を聴いたことがあるのはマリン・オールソップだけ(それもプロムスのラストナイトの放送)、去年アヌ・タリを聴く機会もあっただろう!こういうファンが「女性指揮者」を特別な存在にしてしまっているんだよ、いい加減にしろ!(自虐)ということで、勉強させていただきます。(この姿勢自体が根本的な問題のひとつだとわかっていても、私が無知であることは認めておくべきだと考える次第です)

なお、ソプラノ歌手として壮絶なパフォーマンスを繰り広げる(大げさではない)バーバラ・ハンニガン、指揮者としても活躍していつことは最近知りました。こんな感じみたいですよ。


イェーテボリ交響楽団との演奏会より、ノーノとハイドン(!!!)。


せっかくだからもう一つ、歌い振り(???)でストラヴィンスキーの「放蕩者の遍歴」より。

・ミルガ・グラジニーテ・ティーラ指揮 バーミンガム市交響楽団演奏会

名前も知らなかった彼女がバーミンガム市交響楽団に招かれた、というニュースを、驚きを持って紹介しながらも「このオケならやる」と感じたのも事実です。その首席指揮者デビューとなった一連のコンサートから、プロムスでの演奏会を放送するとのこと。



なお、こちらの演奏会でバーバラ・ハンニガンが披露する「レット・ミー・テル・ユー」はハンス・アブラハムセンの曲で、アンドリス・ネルソンスがボストン響の演奏会でも取り上げています。ということで上手くこの番組全体がつながってくるという。そしてアンドリス・ネルソンスはご存じの方はご存知のとおり、バーミンガム市交響楽団でも活躍していましたから、ひそかにバーミンガム市交響楽団応援番組かもしれません(陰謀論)。

冗談はさておいて。ボストン交響楽団はアンドリス・ネルソンスとともに今年来日しますので、今のうちに聴いておくと良いと思います。ボストンとライプツィヒ、違う特色のある団体をどう振り分けているのか、彼はこの先どことどんな仕事をしていくのか。長くお付き合いすることになるだろう、”この時代のマエストロ”だと思いますので。

では紹介はこのあたりでおしまい。ではまた、ごきげんよう。


2017年2月24日金曜日

書きました:中央大学人文科学研究所主催公開講演会「演出家・笈田ヨシ、《蝶々夫人》を語る」ノート

こんにちは。千葉です。

先日、私からは高崎公演のレヴューをお届けした笈田ヨシ演出の「蝶々夫人」は大好評裏に19日に終演しました。
で、その翌日、中央大学駿河台記念館で行われた講演会に参加してきましたので、そのレポートを寄稿しています。

●「蝶々夫人」論、演技・演出論の”ノート”———中央大学人文科学研究所主催公開講演会「演出家・笈田ヨシ、《蝶々夫人》を語る」

タイトルにも”ノート”と入れていただきましたとおり、あえて全文書き起こしはしていません(やる気がないとかではなく、公式な記録はきっと主催の側でされるかと思いまして。本当ですよ!何ですかその疑いの目は)。ノートとしたのは、ここでは千葉の理解の程度までしか笈田さんの楽しいお話をお伝えできていないという残念な自覚あればこそですけれど、可能な限り話題を拾うよう努めました。先日の「蝶々夫人」をご覧になった方はもちろん、演劇の人として笈田ヨシをよくご存じの方にもお楽しみいただければ幸いです。事実誤認などございましたらこちらでもツイッターでもなんでも構いませんのでご指摘ください。

この日、森岡実穂さんからはペーター・コンヴィチュニーの仕事ぶりとの共通点の指摘がありましたが、私は自分の領分からジョナサン・ノットがよく言及する「即興性」と、笈田さんの言及する”「ふっくら」とした、人間が関係しあっている舞台”の共通性のことを講演を楽しく伺いながら考えていました。舞台上の自由が広義のライヴが生きたものとして共有されるための条件のひとつ、なのかな、とかなんとか。

ともあれ、ぜひご覧くださいませ、あの素敵な舞台を振り返る一助とでもなりましたら幸いであります。

<参考>イェーテボリ歌劇場での上演に先駆けた笈田ヨシのコメント(英語)



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なお。私、著名な方と一緒にお写真を撮る趣味はないもので(何より横でにやけている自分を見るのが厭)この日もお願いしませんでしたが、スズキを好演された鳥木弥生さんがこの日来場されていて(笈田さんも何度となく話を振る)、直接高崎の公演についてお話できたのは予想外の嬉しいことでありました。

鳥木弥生さんが演じたスズキに関連して過去の記事には入れにくかったことを申しますなら、私個人は”スズキが終盤蝶々さんを一人にしたがらない場面”で(これ洋画でよく見るあれだ!)と感じてゾクゾクしました。どういうことかと云いますと、ですね…
こういう瞬間があることで、作品の見え方そのものが変わってくるような気がするんですよ(小学生の感想文並)。いや違うな。
ある出来事が特別のものとして見えたその瞬間に舞台が変容し、作品がまた別の相貌を示し始める特権的な経験において、我々はまた作品を新たに生き直すのである(批評家的な表現)。という照れ隠しでした(とてもわかりにくいYO!)。

なお、鳥木さんはこのあと横須賀でもスズキを(小ホール公演なので残席かなり僅少とのこと/3月12日)、そして立川ではカルメンを演じられる(3月19日)とのこと(それ以降の予定は鳥木さんのブログでどうぞ)。

ではご案内はこれにて、ごきげんよう。


2017年2月23日木曜日

スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ(指揮者、作曲家)死去

こんにちは。千葉です。

また訃報が届いてしまいました。残念です。

●Stanislaw Skrowaczewski, Minnesota Orchestra's conductor laureate, dies at 93(Minnesota Public Radio News)

スタニスラフ・スクロヴァチェフスキが亡くなりました。読売日本交響楽団、NHK交響楽団への客演でも好評だったマエストロ、今年も来日の予定でしたが惜しくもキャンセルが発表済みでした、快癒かなってまた来てくれればと誰もが思っていたのですが…

私はザールブリュッケン放送交響楽団と称されていた頃に(現在はザールブリュッケン・カイザースラウテルン・ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団)、来日公演で聴かせてくれたブルックナーの交響曲第七番がひとつのパラダイムシフトと言えるほどの衝撃だったことを今も鮮明に思い出せます。ブルックナー作品のなかではより柔らかい、美しさが際立つ音楽だと思っていたこの曲が、あれほど力強く意志的な音楽であり得るとは、「第二楽章まででいいかな」なんて酷いことを思っていた後半の三、四楽章があれほど説得的に響くとは。音楽の、演奏の可能性を教えていただいた大切な経験でした。合掌。




hr交響楽団のYouTubeチャンネルより、自作自演とブルックナーの交響曲第九番(どちらも2014年11月27日の演奏会より)

※なお、5月に予定されていた来日が中止となった件についての記事は、本稿に先駆けて更新済みです

訃報に触れるたび頭を垂れて、もう御礼申し上げることくらいしかできないのだ、と再認識させられる私であります。今ひとたび合掌。では。

2017年2月20日月曜日

「調布国際音楽祭2017」開催へ

こんにちは。千葉です。ニュースです。17日に、調布音楽祭からの発表がありました。

●調布国際音楽祭2017(Facebookページ)

2013年に鈴木優人をプロデューサーに迎えてリニューアル以来、昨年まで「調布音楽祭」としてバッハ・コレギウム・ジャパンや森下唯(ピアノ)などが登場する、特色を明確に打ち出した音楽祭として開催されてきました。今年からはタイトルを上記のとおり「調布国際音楽祭」と改めて、新たな一歩を踏み出す、とのこと。

記者会見は行われましたが、現時点ではFacebookページで公演情報を公開する段階のようで、これから公式サイトなどが用意されるのでしょう。古楽(と言いたくないのですが、便宜的に使います)にジャズに、と幅広い演奏会が行われるイヴェント、今年は伺ってみなくては、です。期待して6月の開幕を待ちましょう。

※追記。公式サイトも無事リニューアルオープンしています。ぜひご覧くださいませ。


昨年の「国際」なしの最後の年のリハーサルが配信されていました(調布市文化・コミュニティ振興財団公式 チャンネルより)

ということでお知らせでした。ではまた、ごきげんよう。

2017年2月19日日曜日

2/19(20)「ボリショイ・バレエ『黄金時代』/『マルコ・スパーダ ~あるいは盗賊の娘~』」放送

こんにちは。千葉です。放送予定のご案内を。

●NHK BS プレミアムシアター ボリショイ・バレエ公演 『黄金時代』/『マルコ・スパーダ ~あるいは盗賊の娘~』

ボリショイ・バレエも近年「in シネマ」と題して劇場上映をしてますね。そうして多くの人が触れられる、放送や販売できるコンテンツが増える、と好循環になっている、のでしょうか。だといいなあ、と素朴に思います、劇場で見るのが一番だけれど他事ができない状態で集中できる映画館は次善の策としては上策でしょうし。配信や放送を呑みながら騒いで見るとか最低ですよほんと(嘘ですごめんなさい&自分を棚に上げてみた)。

つまらない冗談はさておいて。前半は昨年上演された「黄金時代」、10月13日、16日の収録です。…ショスタコーヴィチですよ、ショスタコーヴィチ!(そういうのやめなさいまた怒られるよ←酷い子供じみた物言い)



1930年に初演されたバレエなので、当時のショスタコーヴィチは批判など受けるわけもない若い才能としてやり放題(おい)です。さらに「黄金時代」は彼が大好きサッカーを絡めたお話なので、さぞやノリノリで作曲されたことでしょう。作中の音楽ではポルカが飛び抜けて有名ですが(もしかしてショスタコーヴィチ好きの間での認識かもしれない、どきどき)、いろいろな形で転用されるモティーフが見つかるはず。…これもショスタコーヴィチ好きの以下略。
しかしながら、この作品はプラウダ批判を受けて上演されなくなり、復元されたのは1982年のこと。その際に台本は書き換えられて漁師とギャングの抗争という筋書きになってしまったそうなのです。オリジナルの「サッカーと大戦間の陰謀」もので観てみたいなあ、どうですかマリインスキーの皆さん?(ここで書いても伝わらないよ)



後半は19世紀の作品を近年リメイクした「マルコ・スパーダ」。たしか再放送だったはず(あいまい)。音楽はオーベール、「ポルティチの唖娘」でベルギーに革命起こしちゃった人ですから(嘘ではありません、多くを省略してはいますけど)、19世紀のT.M.Revolutionですかしら(かすってもいない)。

…バレエだと多くを語る能力がない(その上学ぶだけの時間も作れない)ので与太話多めになってしまいましたが、私はとても楽しみにしている放送です。特に前半が(しつこい)。
今回放送される演目は、すでに「ボリショイ・バレエ in シネマ」で上映されたものです。今後は何をするのかな、と確認したら!まさかの!



「明るい小川」ですよ!!(ショスタコーヴィチの人にしか伝わらないタイプの興奮)映画館に行けたらいいのですけれど…

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さて”ショスタコーヴィチが大好きな人モード”から切り替えて。
ボリショイ・バレエは、初来日から60年となる今年の6月に来日公演を行います。それに先駆けた記者会見が17日に行われています。その情報は、せっかくなのでロシアのメディア(日本語版)でご覧くださいませ、スプートニクにリンクしておきますね。
来日公演の演目は「ジゼル」「白鳥の湖」と名作、そしてボリショイ・バレエの最近作「パリの炎」(ラトマンスキー版)が用意されております。詳しくは公式サイトでご覧くださいませ。

ともあれ、今週末のプレミアムシアターはバレエですよ、というご案内はここまで。ではまた、ごきげんよう。


2/19「N響 第1850回 定期公演/第1852回から」放送

こんにちは。千葉です。放送予定のご案内ですよ。

●<N響 第1850回 定期公演>

指揮:シャルル・デュトワ
管弦楽:NHK交響楽団

曲目:

プロコフィエフ:組曲「三つのオレンジへの恋」 Op.33bis
ラヴェル:バレエ音楽「マ・メール・ロワ」
ベートーヴェン:交響曲第五番 ハ短調 Op.67
(2016年11月30日 会場:サントリーホール 大ホール)

<1852回から>

オネゲル:交響曲第二番
(2016年12月16日 会場:サントリーホール 大ホール)

N響アワーです。オネゲルですよオネゲル!…すみません取り乱しました。

シャルル・デュトワ時代なくして現在のN響なし、と再評価が進むマエストロが登場した定期演奏会がこれから3回連続放送です。その初回は得意の20世紀音楽とベートーヴェンによるプログラム、プラス別公演でのオネゲルの交響曲です。

この変則的なスケジュールには理由があります。次回から二回に分けてコンサート形式の「カルメン」を放送するため、放送枠をやりくりしていらっしゃるんですね、めちゃめちゃ平たく言ってしまいますと(笑)。
その制約の中でもいろいろと考えてくれたのでしょう、「カルメン」にオネゲルではない、という判断が伺えます(オペラに組合せられるのは、「ピーター・グライムズ」の間奏曲、そしてワディム・レーピンを迎えたコンサートピースにラヴェル)。オネゲルの作風はドイツ的とも言われるしベートーヴェンになぞらえられることもある。うん、いい感じかもしれない!(この曲を知らない人置いてけぼり)

冷静になってもけっきょくオネゲルの話しかしていませんが、それだけ放送を楽しみにしているのだ、ということでご容赦ください。なんでこのコンサート行かなかったんだろう…(もちろんオネゲルの方←おいおいおい)

ちなみに、なんですが。昨年末に放送された方の「セイジ・オザワ 松本フェスティバル2016」のオーケストラ・コンサート、「オネゲルの第一楽章カットなんて!!!」と泣いていたのですが、昨年9月にNHK BSプレミアムで放送された方にはカット無しで収録されています。ちゃんと嵐のような第一楽章からオネゲルの交響曲第三番が楽しめますよ!という耳寄り情報でした(どこまでもオネゲル推し)。

ではまた、ごきげんよう。

2017年2月18日土曜日

アンドレア・バッティストーニ、「題名のない音楽会」に再登場

こんにちは。千葉です。

いよいよアンドレア・バッティストーニ月間とでも言えそうな一ヶ月が始まります。以前ご案内した、東京フィルハーモニー交響楽団の特集サイトぶらあぼANNEXに続く記事も出ております!

まずはその一。以前観覧してきた公開収録がいよいよ19日(日)の午前9時より放送されますのでご案内します。

●題名のない音楽会 2500回記念(3) 祝典の音楽会

「題名のない音楽会」は1964年の放送開始から一時中断から放送局の移動など、紆余曲折を経ながらも2500回もの放送をしてきました。今月放送分はその記念として、特別なゲストや演奏会を放送していますが、19日と26日は私も伺ってきた演奏会が放送されます。
コンサート前半にあたるのが19日放送分、「祝典の音楽祭」のタイトルに合わせてバッティストーニと東京フィルハーモニー交響楽団が演奏した曲はベートーヴェンの交響曲第九番から、終楽章後半です(声楽が入る直前から)。すでに年末の第九でも演奏し、そのレコーディングもリリースされているこの曲、彼の見解は2年半前にこんな風に語ってくれています。



そんな彼らは今回、プロジェクションマッピングとの共演というチャレンジに挑んでいます。サントリーホールのオルガンの高さに、音楽に同調させた映像を投影しての演奏は如何なるものか、まずはご覧あれ。

…ここでこぼれ話を一つ。この演奏会の後半(次回放送分)は出番が終わっていたバッティストーニ、「会場で聴いていく」と聞いてはいたのですが。なんと私のお隣でした。二度のインタヴューで覚えてもらっていたのですけれど、それとこれは別なのであの、とても緊張しました。どうでもいい話ですみません(笑)。

そしてこの次には異種格闘技戦的なコンサートに登場します。いつも「ジャンルにとらわれないで、ポップスやロックを聴いている皆さんもぜひクラシックも聴いてみて」と語っている彼が登場するのはこのイヴェント。

●爆クラ!presents ジェフ・ミルズ×東京フィルハーモニー交響楽団×バッティストーニ クラシック体感系II -宇宙と時間編-

年が明けてからチケットも発売された公演ですが、とくにクラシック音楽ファンの皆さまはこの公演にお気づきでしょうか。以前も東京フィルハーモニー交響楽団と共演したジェフ・ミルズ(DJ)が、今度は新譜「PLANET」を引っさげてバッティストーニと共演する、という注目のイヴェントです。



DJとのコラボ、と言われてもピンとこない皆さま、後半のプログラムならいかがですか。これですよ。

ジョン・アダムズ:ショート・ライド・イン・ア・ファスト・マシーン
ドビュッシー:月の光
リゲティ:ポエム・サンフォニック(100台のメトロノームのための)
黛敏郎:BUGAKU(舞楽)より 第二部

まさかのリゲティのあれ(としか言いようがない)が取り上げられる他も気になりませんか。バッティストーニの黛とか聴きたくなりませんか。22日(水)は大阪のフェスティバルホール、25日(土)は渋谷のBunkamuraオーチャードホールですよ。詳しくは公式サイトでチェキラッ(似合わないからやめなさい)

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そして3月には以前インタヴューを紹介した定期演奏会、そして「平日の午後のコンサート」(これはロシアプロですね←説明はしないスタイル)に登場します。
ということで、この間約一ヶ月にバッティストーニと東京フィルはいくつもの演奏会に登場しますので、この機会にぜひ、どこかひとつでも!聴いていただければきっと、この先長くつきあっていけるだろうこの若い才能の可能性を感じていただけると思うので。

なお、本日はこちらの公演がありました。


そして明日は磐田公演(チケット完売)。えっと、時系列に整理しますね。

2/18 ヴェルディ:レクイエム(新宿文化センター)
2/19 ドヴォルザーク:交響曲第九番 ホ短調(静岡・磐田)
2/22 爆クラ(大阪・フェスティバルホール)
2/25 爆クラ(渋谷・Bunkamuraオーチャードホール)
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3/12 定期・チャイコフスキー:交響曲第六番 ロ短調(渋谷・Bunkamuraオーチャードホール)
3/13 定期・チャイコフスキー:交響曲第六番 ロ短調(初台・東京オペラシティ コンサートホール)
3/15 平日の午後のコンサート・チャイコフスキー:交響曲第六番 ロ短調(初台・東京オペラシティ コンサートホール)

で、東京フィル以外にも3月18日に仙台フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会に初登場します。昔お世話になった仙台フィルとのご縁も上手くいきますように、と南の方から公演の成功をお祈り申し上げます。

怒涛の一ヶ月のあと迎える来シーズンには大阪フィルへの登場や、各地での「アイーダ」にも登場しますから各地の皆さまも彼の演奏に触れる機会が増えるでしょう。今年の4月には著作の日本語版刊行も予定されており、とこれからアンドレア・バッティストーニはこれまで以上に日本各地で活躍してくれます。ぜひコンサートで実際に、というのが一番私から申し上げたいことですが、その前にまずはTVを!です。…長くてすみません(笑)。

なお、本日から配布が始まった「ぶらあぼ」誌には新シーズンについてのインタヴューを掲載いただいています。Webサイトからもご覧いただけますので、ぜひ。

そんなわけでこの文はここまで。ではまた、ごきげんよう。


2017年2月17日金曜日

書きました:笈田ヨシ演出「蝶々夫人」高崎公演レヴュー

こんにちは。千葉です。

寄稿した記事のご紹介です。

●賭けて、すべてを失った。一人の女性の生き方を描くドラマ———高崎の創造舞台芸術 自主制作オペラ《蝶々夫人》

”これはあまり同意してもらえない意見かな”と感じていた「蝶々夫人」観を、笈田ヨシによる演出にかこつけて書いた部分もあります。すみません。

でもこのオペラ、一途な純愛ものとかシンプルな悲恋ものとして読むよりは、一つの可能性に賭けた少女ながら意志の強い女性のドラマと見るほうが筋が通ると思うんです。第一幕で明かされていく彼女の行動を追っていくとこうなります。

・一度面通しをしただけのアメリカ人との結婚を承諾する
・その未来に不要なものを捨てていく、最終的には一族をも捨てて社会から切り離される
・ピンカートンと二人だけの夫婦として生きていくと歌う(もちろんスズキは一緒にいてくれるけれど)

恋の夢とは異なる水準の行動をしているように見えるんです、私には。もちろん、演出によってはピンカートンに気に入ってもらいたくてトクントクンしてる(古、とまぜっかえすことでマクロスFを参照していないことがわかる←どうでもいい)蝶々さんもありでしょうけれど、私には「合衆国に連れて行ってもらってアメリカ人として暮らす」未来を視野に入れていた蝶々さんの方が作品から読み取れる存在のように思えるのです。ただこう読んだ場合には、恋愛の可能性よりも無理な願いを抱いてしまったことが、彼女をさらに追い詰め絶望させる現実となるのですが…
このプロセスを描く中で、この舞台では「何かを捨てる」動作が印象に残ります。彼が不快感を示したお歯黒、そして仏像。その所作を印象的に見せる舞台で最後に彼女が投げ捨てるもの、それがこの舞台のキーである、というのが私のレヴューのキーです。さて扉は開きますかどうか、既にこの舞台をご覧になった方はぜひお読みいただければ幸いですし、これからご覧になる方も終演後にでもぜひご一読くださいませ。


観劇前には情報を入れすぎないため見ておりませんでしたこのメッセージ、深く頷ける部分多数なのです。ぜひご覧ください、笈田ヨシが今回の舞台について、「蝶々夫人」について語っています(約五分、芸劇チャンネルより)

こう考えてくると、市川森一氏のようなヴェテランの脚本家が晩年の仕事として、蝶々さんにせめてもう少しましな可能性をあげたいと願って小説とドラマを作られたのも、理解できるものです(少なくとも私はあのドラマをそのように拝見しました。おそらくは八千草薫以来の、日本人が視覚的に納得する可憐な蝶々さんでしたね宮﨑あおい)。しみじみ。


こんなの見つけちゃいました。名高いオペラ映画撮影のためイタリア入りする八千草薫以下ご一行。かわいい(直球)。

なお当日の話を少し。文中にも書いた、第二幕の有名すぎるアリア「ある日私たちは見るでしょう」(最近こう表記する運動を密かにしています)での感情表現あたりから、周りの皆さんがすすり泣く声が聞こえはじめましてですね。ええもう私ももらい泣きしちゃいますよそりゃあ泣きますって※。目から水が出る程度ですけどね、とめどなく!(呼吸さえコントロールできれば演奏会中に咳き込むこともないくらいには呼吸を鍛えた過去がありますので、嗚咽まではなかなか至りません)
第二幕では”三度の打撃で場面が変わる”仮説を持っているのですが、これはちょっと検証しないとお出しできません。ロイヤル・オペラ・ハウスの上映の頃(4~5月頃と予想)にはお出しできるといいのですが、スコアを確認しないと…

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そうそう、スコアと言えば、プッチーニのスコアは聴くとすぐにそれとわかるのに譜面上はびっくりするほど普通なんですよね(除「トスカ」。あれはかなり緩急も細かく指示があるし、執拗に煽り立てるようなシンコペーションがドラマの性格が違うことを示している、のかも。これは東京二期会「トスカ」を観劇したらまた考えます)。美しいオーケストレーション、八つもの日本の音楽の引用がありながらも自然に聴かせるその技などについて、なにか学ぶすべはないものだろうか、などと考えてしまいます。スコア眺めて演奏を体験して、あとは何をしたらいいだろうか…こんな風に刺激を受けた舞台でありました。これも文中で少し書いていますが、先日公演が終わった新国立劇場の舞台をご覧になった方はそのアプローチの違いを興味深く楽しめるでしょうし、ミラノ・スカラ座が復活させて話題を呼んだ初演版はこの舞台と通底する厳しさがあるように感じました(感想他は後日。今は白塗りや過剰にも思えるオリエンタリズムには、ちゃんと表現意図があると思いますよ、とのみ)。
この先「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン」でも上映がありますから、今さらながら「蝶々夫人」の人気というのは大きいのですわ。その人気は、エキゾティシズムやお涙頂戴によるものではない、とこの舞台は教えてくれていると愚考する次第であります。詳しくはレヴューをぜひ、ご一読くださいませ、と重ねて申し上げます。


この絵面に、ちょっとこの件を思い出して、こちらはアリで向こうはナシであることについて考えてしまう部分もなくはないのですが、どちらも興味深い舞台です。なにせ指揮がシャイーとパッパーノですもん!要チェックですよ。

なお文中でも少し触れましたが群馬音楽センターの建築としての佇まいも素敵で、それだけでも高崎まで足を伸ばした価値は間違いなくありました。また機会があればお伺いしたいものです。

外観からしてかっこいい。ガラス張りの前面、五角形の存在感がたまりません。

休憩中のロビーはこんな感じ。壁画も独特で、この造形が生み出す雰囲気が実にいいんです。

そして一階エントランスには彼が鎮座していました。きっと池袋で目が入るのでしょう。

そう、この週末に東京芸術劇場でこのプロダクションの巡演も終わります。その準備の模様はこんな感じ、高崎とはまた違う印象の舞台になることでしょう。

好演でこのプロダクションのフィナーレが飾られますことをお祈り申し上げてこの記事はおしまい。ではまた、ごきげんよう。

2017年2月16日木曜日

びわ湖ホール「《ニーベルングの指環》新制作記念<びわ湖指環(リング)>寄付募集中!」

こんにちは。千葉です。これはなんと評したらいいのかな…たぶんニュースです。

●《ニーベルングの指環》新制作記念<びわ湖指環(リング)>寄付募集中!

びわ湖ホールは、もしかすると日本で一番”攻めて”いるオペラカンパニーかもしれません。首都圏でもなく、地域の経済圏の中心でもないところから、自主制作のプロダクションが登場してくることは、不景気に加えて文化行政における緊縮ムードの強い現今、コンスタントに新制作を続けるにあたって、首都圏や大都市中心部にはない困難と闘い続けていらっしゃることとお察しします(私も地方出身者ですから、来場される方のそもそもの母数が少ないことがもたらす厳しさは理解しているつもりです)。

びわ湖ホールに限らず。そうした困難に対応するための予算的手法として近年では映画「この世界の片隅に」が大成功したクラウドファンディングが話題を呼んでいますが、びわ湖ホールはワーグナーの大作「ニーベルングの指環」を上演するにあたって独自のアプローチを用意しました!というのがこのニュースでしょうか。

寄付の特典に<びわ湖リング>を差し上げます!…ってことはあの琵琶湖には黄金が眠っていたりそこから奴隷労働的な何かで掘り出したりとかあのその、とかボケたくなりますが(笑)、意欲的な試みを支援できるだけのお志をお持ちの方はぜひ、指環に口づけして世界を手にする可能性を得てくださいね(だから本物じゃないってば)。

※公演のチケットは完売したとのことです。おめでとうございます!

詳しくはリンク先のご案内をお読みくださいませ。では本日はこれにて、ごきげんよう。

2017年2月15日水曜日

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2017 テーマは「ラ・ダンス 舞曲の祭典」

こんにちは。千葉です。

もはや恒例の、と評されるだろう音楽祭のプログラムが昨日発表されました。

●ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2017 「ラ・ダンス 舞曲の祭典」

立ち上げ当初は「この名前、覚えてもらえるんかね?」と思っていた私ですが(すみません)、略称のLFJで通じるようになり、今年で日本開催も13回を数え、といまやGWの定番とさえなっておりますから己の不明を恥じるのみです。

毎年テーマを決めて数多くのアーティストが集まり、さまざまなプログラムが披露される音楽祭、今年のテーマは「ラ・ダンス 舞曲の祭典」。先日開催された本家ナントでの音楽祭と同じです。


ちなみにこちらがナントでの音楽祭のトレイラー。

「クラシックの」というより、文字どおりの意味で「音楽の」お祭りとして開催されるLFJについては、公式サイトで提供されている聴きどころにつけ加えることがあまりないものですから、よろしければリンク先でご覧くださいませ。>LFJ2017の聴きどころ(pdfファイルが開きます)

今のところ「東京国際フォーラムでの開催」と言いきれそうな発表ですが、この音楽祭のことですので様々な企画が登場してさり気なく拡張していくことでしょう、本家だってこんなのやってますしね!(笑)



ですので、この音楽祭を楽しみたい方はこまめに公式サイトをご確認されるのがよろしいかと存じます。なおチケットの先行発売は2月20日から、一般発売は3月18日からです。

以上ご案内でした。ではまた、ごきげんよう。

2017年2月14日火曜日

S.スクロヴァチェフスキ 2017年5月の来日中止→代役決定

こんにちは。千葉です。

急告が読売日本交響楽団より出ていましたのでご紹介します。

●急告:5月スクロヴァチェフスキ氏の来日中止のお知らせ

昨年の11月に脳梗塞のため手術を受けていた、齢93のマエストロ、スタニスラフ・スクロヴァチェフスキは今年の5月に桂冠名誉指揮者を務める読売日本交響楽団への来演を予定していました(曲目はブルックナーを予定)。ですが、”1月16日に本人及びご家族から「誠に残念だが、現在の状況から判断し、5月の来日を断念せざるを得ない」との連絡”(急告より引用)があったとのこと、残念ながら予定の公演は指揮者を変更して実施する運びとなる模様です。

※昨年マエストロが倒れた時期のニュースはリンク先でどうぞ(Star Tribune /英文)

予定どおりに演奏会が行われていれば、「スクロヴァチェフスキ&読売日本交響楽団、ノット&東京交響楽団、高関&京都市交響楽団がほぼ同時期にブルックナーの交響曲第五番を演奏する」はずだったのです(ノット&東響と、高関&京都市響はまったくの同日ながら、使用する楽譜の版違い)。いや、そんな偶然よりも、これだけの高齢で今なおマエストロが活躍されていることにただ頭が下がる次第です。まずは快癒を優先させていただいて、ぜひ次の来園が叶いますよう。

ではご案内は以上です。ごきげんよう。

※続報:代役を務めるマエストロが発表されました。>5月公演 指揮者決定のお知らせ

●第197回土曜マチネーシリーズ/第197回日曜マチネーシリーズ
2017年5月13日(土)、14日(日) 両日とも14:00開演
会場:東京芸術劇場コンサートホール

指揮:オンドレイ・レナルト
ピアノ:ケイト・リウ

ショパン:ピアノ協奏曲第一番
ベートーヴェン:交響曲第三番 「英雄」

オンドレイ・レナルトは1942年生まれのスロヴァキアを代表するマエストロ、2007年以来の読響登場となるとのこと。

●第568回定期演奏会

2017年5月19日(金) 19:00開演
会場:東京芸術劇場 コンサートホール

指揮:ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー(名誉指揮者)  

ブルックナー:交響曲第五番(シャルク版)

…シャルク版ですって!これだけでスイッチが入るタイプの人たちには外せないコンサートになりますね(説明放棄ですね、これ)。ロジェストヴェンスキーさんは1931年生まれ、Mr.Sに比べれば若いですが(それはそうだ)かなりのご高齢でいらっしゃるのは間違いないことで。こうしてまたいらしてくれること自体がありがたいものですのに、そこでシャルク版ですって…(話が戻っちゃった)

Mr.Sの快癒と、公演の成功をともにお祈り申し上げます。
※追記、2月22日。
残念ながらスタニスラフ・スクロヴァチェフスキは亡くなられました。(参照:MPRニュース/ミネソタ公共放送)柔らかさや繊細さが特徴だと思っていたブルックナーの交響曲第七番の、東京オペラシティで聴いた圧倒的に力強い演奏は忘れません。合掌。




書きました:東京二期会オペラ劇場「トスカ」<プレソワレ>レポート

こんにちは。千葉です。

寄稿した記事のご紹介。公演本体も今週ですので、ノーチェックだった皆さんは私の記事でもいいし、公式サイトからでもいいから公演情報を確認してくださいね!

●「原点回帰」。1900年1月にローマ歌劇場で行われた初演のプロダクションに遡り、作品そのものの真の姿に迫る———東京二期会オペラ劇場《トスカ》2月15日(木)に開幕

プレイヴェントのレポートです。記事に詳しく書きましたが、近日開幕する東京二期会オペラ劇場の「トスカ」はローマ歌劇場のプロダクションで上演されます。演出のアレッサンドロ・タレヴィ(南アフリカ出身)は、ローマで演出するローマゆかりのオペラをローマの歌劇場で行われた初演にまで差し戻して、作品そのものの生まれた辞典まで差し戻してこの名作を”試し”、その賭けに勝利したようなのです。その舞台は、ローマ歌劇場が部分的に見せてくれています。



この明るく、色彩豊かな舞台は現実のローマを参照することで生まれたという話を、短くまとめたのが私の記事です。タレヴィは東京二期会のキャストにもご満悦で、ローマの外の舞台でこの演出をかけられることをとても喜んでいたことを付記します。

なお、今回指揮するダニエル・ルスティオーニについては昨年東京交響楽団に登場した際にレヴューしていますので、そちらもよろしければご参照ください。演奏していない時間も人目を引く彼、オペラの現場でどのような音楽を聴かせてくれるのか、というのも間違いなく今回の焦点のひとつです。「蝶々夫人」や「悲愴」とは違う性格のオペラで、彼と都響は何を聴かせてくれるのか、乞うご期待です。



もちろん、東京二期会のキャストの皆さまにも期待ですが、まだその声を聴いていませんので私からはまだ何も申しようがない。好演を期待しましょう。

※18日追記。16日&19日公演でスカルピア役に予定されていた直野資は体調のためキャンセルとなりました。16日は増原英也(カヴァーキャスト)が、最終日となる19日には15日&18日に同役で出演した今井俊輔が同役を演じます。詳しくは東京二期会のサイトでご確認くださいませ。

ではまた、ごきげんよう。

2017年2月13日月曜日

パーヴォ・ヤルヴィ&N響、ヨーロッパ・ツアーへ

こんにちは。千葉です。

これは情報としては昨年中に出ていたものですけれど、間近になって来ましたので記録の意味も込めて掲載しておきますね。

●NHK交響楽団 ヨーロッパ公演2017

月末28日のベルリン公演から3月8日のケルン公演まで三プログラム(曲目重複あり)七公演、指揮はもちろん首席指揮者のパーヴォ・ヤルヴィ、帯同するソリストはヴァイオリンのジャニーヌ・ヤンセン。
プログラムは今週末演奏するシベリウス&ショスタコーヴィチ(のソリストを変更したもの)、そして22日&23日に横浜で披露するマーラーの交響曲第六番(前半を武満徹、モーツァルトの協奏曲の二曲用意)で三プログラム。

こう条件を揃えて行うツアーの選曲に深読みは無用でしょう、これまでこの顔合せで取り組んできた作品を持っていくのは自然なことですし、それらの作品をパーヴォさんが得意としていることも欧州で知れているはずなのだから。
訪問地はベルリン、ルクセンブルク、パリ、アムステルダム、ロンドン、ウィーン、ケルンと最終公演を除くと次々と首都を訪れる豪華ツアー、さすが創設90年記念ツアーということでしょうか。

※新交響楽団は1926年に、日本交響楽協会から近衛秀麿ほかのメンバーが離脱して設立したものです。同年10月に第一回定期演奏会を行い、それからカウントが続いて2月12日現在で第1856回を数えます(もちろん、芥川也寸志と縁の深い、現在のアマチュア団体ではないですよ、為念)

先日のシベリウスも好評でしたから、ショスタコーヴィチとマーラーなら聴きたいなと思ったけど出遅れていてもう私のお財布では対応できませんでした。壮行演奏会を聴けないは残念ですが、定期演奏会はクラシック音楽館でベルリン公演はプレミアムシアターで視聴できるようなので楽しみにしておきます。いい旅を、ぜひ。






最近のパーヴォさんのショスタコーヴィチとマーラーはこんな感じ(マーラーはちょっと前ですが)。N響とはどうなるのか、世界の反響は如何であろうか。興味深いツアーの反応、楽しみにしています。
…私は貧乏で行けないけど、行ける方はぜひ東京、横浜の公演で聴いておくと何倍か楽しめますよ、海外のプレスの反応とかリアリティをもって見られるようになりますので。

コンサート情報はリンク先でご確認くださいませ。というところでこの記事はおしまい。ではまた、ごきげんよう。


内田光子 ドロテア・レシュマンとの共演でグラミー賞受賞

こんにちは。千葉です。今朝のニュースをひとつ。

●第59回グラミー賞 受賞者リスト(ワシントン・ポスト紙サイトより)

「内田光子がグラミー賞を受賞」というザックリとした言い方だとさすがに失礼なので書いておきますが、今回受賞されたのはドロテア・レシュマンとの共演によるシューマンとベルクの歌曲集です。”シューマンの「リーダークライス」「女の愛と生涯」、そしてベルクの「初期の七つの歌」を収めたディスクが受賞”ですから、どうせならこの機会にドロテア・レシュマンという素晴らしい歌手の名前も憶えてくださいよメディアの皆さんも(笑)。

なにもデイム・ミツコの役割が小さいとか言いたいわけではありません、カーネギーホールのYouTubeチャンネルが配信しているリサイタル前のレシュマンへのインタヴューで彼女も内田光子を絶賛していますから、名手の共演がこの結果をもたらした、というのは確か事です。



えー前置きが長くなりましたが、内田光子さんおめでとうございます。2011年にモーツァルトのピアノ協奏曲を弾き振りした盤以来の受賞です。

ちなみに、ドロテア・レシュマンはこういう素敵なモーツァルトが歌える歌手ですので、デイム・ミツコとは音楽観が合ったことでしょう。


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なお、グラミー賞って本当に多くの部門があるのです。レコーディングについても、アルバムのプロデューサーについても。どうせなら同じ部門で受賞した彼のこともこの機会に知ってあげてくださいな(笑)。



イアン・ボストリッジ、せっかくだから名前だけでも憶えてね!(しつこい)

もうひとつ、気になる受賞アルバムがあるのですがそれは別記事でご紹介しますね。ではまた、ごきげんよう。


2017年2月12日日曜日

東京・春・音楽祭2018 東京春祭ワーグナー・シリーズ vol.9《ローエングリン》上演決定!

こんにちは。千葉です。

えー、クラシック音楽の世界ではチケットの販売が早い!スケジュール出るのも相当に早い!なんてのは常識といえば常識のたぐいですが、一年以上先の公演予定ともなるとさすがに早い、早いよ!と(カイ・シデン的に)思うわけですがその内容によっては注目せざるを得ないのです。

●東京・春・音楽祭2018  東京春祭ワーグナー・シリーズ vol.9《ローエングリン》上演決定!

この4月に四年がかりの大事業、「ニーベルングの指環」演奏会形式での上演も大団円を迎える東京・春・音楽祭の、目玉公演ワーグナーシリーズの次回公演の演目、キャストが発表されました。選ばれたのは「ローエングリン」、タイトルロールはクラウス・フロリアン・フォークト!


(参考まで、音楽祭のものは演奏会形式です)

…誰ですか「この前も…」とか言っているのは。世界最高の歌手として認められていて、その全盛期に得意の演目でこんなに来てくれるなんてこと、ありえませんよ?バーバラ・ハンニガンが来てくれますか?まさか。

なお新国立劇場での公演についてはここでも書いていますのでご参照ください。聴いてみることでしかわからない声というものはあるんですよ、言葉で書いても仕方ないし録音で満足することも難しいような、全盛期の歌手の声。
バイエルン国立歌劇場のカンパニー歌手でもあり、キャンセルでどうこうの話もあまり聞かない(昨年のバイロイト「パルジファル」は途中キャンセルしたようですが、これは稀な例でした)。負担の大きい大役を歌いながらも舞台上で崩れることはないし、なにより存在感が凄い。そんな歌手を体験できる機会が増えるんだから、素直に喜んでおきましょうよ(というファンの意見)。…コンサート形式だから、演出が気に入らないってこともありませんしね(小声で)。

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なお、今年は話題のバイエルン国立歌劇場来日公演「タンホイザー」にも登場します。彼の初役、この5月にプレミエの新制作、しかも指揮はキリル・ペトレンコ!という注目ポイントが多すぎる公演はとても無視できるものではない。新情報にはご注目あれ、です。



まだ上演されていない舞台なのでプロダクションの様子もわからない、そんな舞台がすぐに日本に来るのはなかなか新しい趣向です。要注目。

せっかくなのでここで書いておきますが、バイエルン国立歌劇場のYouTube活用はなかなかに興味深いです。>バイエルン国立歌劇場 YouTube公式チャンネル
最近の事例では、ショスタコーヴィチの「ムツェンスク郡のマクベス夫人」を上演するに際して、トレイラーの他に八つの動画を投稿し、おそらくはショスタコーヴィチ好き以外にはそれほど馴染みがないだろう作品の魅力をPRし続けたのです。ひとりのショスタコーヴィチ好きとして喜んだのはもちろんですが、自分たちのプロダクションへの愛を感じて嬉しくなったものです。演奏を配信で聴くこともできたけど、映像で見たいなあどうですか公共放送様(こういうまぜっかえしは久しぶり)。



作品紹介って、皆さん多かれ少なかれ苦労されているかと思いますが、こういう手法は面白いと感じました。もちろん、予算がどうのってこともあるとは思いますが。

これ以上話が散らばらないうちにこの記事はおしまい(笑)。ではまた、ごきげんよう。

2/12(13)「バイエルン国立歌劇場『ラ・ファヴォリータ』/ドキュメンタリー『カラヤン ~ザ・セカンド・ライフ』」放送

こんにちは。千葉です。

放送情報、今月最初のプレミアムシアターですよ。

●バイエルン国立歌劇場『ラ・ファヴォリータ』/ドキュメンタリー『カラヤン ~ザ・セカンド・ライフ』

2月12日24:00(13日未明)に放送されるのはオペラとドキュメンタリーです。
前半はバイエルン国立歌劇場のオペラ、ドニゼッティの「ラ・ファヴォリータ」です。ドニゼッティに限らずベル・カントオペラの悲劇もの、未開拓の領域なのでこれを好機と楽しませていただきます。この枠、以前にはベッリーニの「カプレーティとモンテッキ」も放送してますし、そっちを取り上げたい気持ちがあるのかしらん(笑)。それはさておき、放送されるのは2016年11月3、6日の上演です(歌劇場の配信と同じもの、でしょうね)。



後半はドキュメンタリー「カラヤン ~ザ・セカンド・ライフ」です。…これは前にも放送されてますよね?ベルリン・フィルやソリスト他の共演者、レコーディングスタッフなどの数多くの証言で語られるカラヤン像、興味深く見た覚えがあります。たぶん(おい)。


以上お知らせでした。では、ごきげんよう。

「山田和樹の柴田南雄コンサート受賞」&放送

こんにちは。千葉です。
受賞のニュースとそのコンサートの放送予定です。

まずは受賞のニュース。これ自体は昨年末に発表されています。

●山田和樹指揮「柴田南雄生誕100 年・没後20年 記念演奏会」文化庁芸術祭大賞

2016年11月7日(月)にサントリーホール 大ホールで開催された上記の演奏会が、文化庁芸術祭大賞を受賞しました(文化庁の発表はこのリンク先でご覧ください/pdfファイルが開きます)。このコンサートの概要は以下のとおり。

2017年11月7日(月) 19:00開演 開場:サントリーホール 大ホール

指揮:山田和樹

尺八:関一郎
合唱:東京混声合唱団 武蔵野音楽大学合唱団
管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団

曲目: 作曲はすべて柴田南雄

「ディアフォニア」 ~管弦楽のための no.62(1979)
追分節考 no.41(1973) ※無伴奏合唱曲
交響曲《ゆく河の流れは絶えずして》 no.48(1974 ) ※管弦楽と合唱

で、そのコンサートが2月12日(日)の21時より、Eテレのクラシック音楽館で放送されます。

●<ゆく河の流れは絶えずして・柴田南雄の音楽>

作曲に文筆にと活躍された柴田南雄作品に、こうして映像付きで触れられる機会は希少ですので(裏を返せば実演はもっと希少だったので、行けるものなら行きたかった)、ぜひオンエアなり録画なりでご視聴あれ。

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私にとって柴田南雄さんは何をおいても岩波新書「グスタフ・マーラー」だった時期があります。合唱をやっていたらその作品に触れる機会もあったかもしれないのですが、如何せん吹奏楽作品は遺してくださらなかったもので…その新書の中で”アントン・ヴェーベルンが勤労者によるアマチュア楽団とマーラーの交響曲第六番を演奏して”云々というくだりがあるのですけれど、この件はいつかあの方が詳しく書いてくださる日が来るはず!と信じています(思わせぶりですみません)。

ご存知名曲もいいけど近年の作品もね!という気持ちと(この前放送されたグレツキ、途中で完全に寝落ちしたなあ)という引け目が綯い交ぜなまま(告白)、本日はこのへんで。ではまた、ごきげんよう。


2017年2月11日土曜日

ニコライ・ゲッダ(テノール)死去

こんにちは。千葉です。

まだニュースを拾いはじめて二ヶ月も経っていないのに、もう何度目の訃報でしょうか。仕方がないことではあるのですが…

●Svenske stjärntenoren Nicolai Gedda död

あえて彼の生地の記事にリンクするのはわかりにくくはありますが、他にどの国の記事を参照したものか考えあぐねてしまいました。20世紀後半に幅広いレパートリィで活躍したテノール、ニコライ・ゲッダが亡くなったとのことです。91歳、大往生です。

手元の音源を確認したら、たぶん最初に彼の声を聴いた「蝶々夫人」(カラスとの共演)、「カルメン」(ヴィクトリア・デ・ロス・アンヘレス)、「キリストの幼時」(クリュイタンス盤)などが出てきました。さらにチャイコフスキーのオペラが歌えて、バッハや歌曲でも活躍した、そんなテノールが他にいるのか、いたのかと考えてしまいます。

なにかの(権利的に問題のない)動画はないかと探してみましたら、medici.tvがこちらの動画を用意してくれていました。



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この素晴らしい声を聴いていたら思い出しました、彼の声を最初に聴いたのはバーンスタインの自作自演盤「キャンディード」でした。そうだ、そうだった。
バーンスタインも、あの盤で歌っていた歌手たちも引退したり亡くなっていたりと、こうしたニュースのたびに遠くなってしまうように感じますね、はあ。

それでもこっちは生きているので、日々読んだり聴いたり、書いたりです。かつてゲッダの声に出会えたように、これからも素晴らしいものに出会えますように。では本日はここまで、ごきげんよう。


2017年2月10日金曜日

METライブビューイング2016-2017 「ナブッコ」

こんにちは。千葉です。オペラの劇場上映をご紹介。

●METライブビューイング2016-2017 「ナブッコ」



これから上映を見ますので、レビューはそれ以降となりますが、退任が決まっているジェームズ・レヴァインと、本来の声域とも言えるバリトン歌手として第二のキャリアを謳歌しているプラシド・ドミンゴの共演は貴重なものとなってしまいました。私と同世代のクラシック音楽ファンであれば、それこそ”定番のコンビネーション”として親しんできた彼らの共同作業が終わる日がそう遠くないうちに来ることに、多かれ少なかれ感慨があるのではないかと想像します。

幸い、昨年12月に上演された現地での公演評を見る限りではいい舞台になった模様ですから、まずは上映を楽しんでこようと思っております。スケジュールなどは公式サイトでご確認くださいませ

こんな動画もありましたので、興味のある方はぜひご覧ください。レーザーディスクや来日公演で親しんできた彼ら、こんなおじいさんになっておりました。長く楽しく生きてくださいますよう。



●レヴュー

ネブカドネザル二世による「バビロン捕囚」を元にしたオペラ「ナブッコ」(1842初演/展開は史実とは異なります)は、若きヴェルディの出世作。最後の作品「ファルスタッフ」まで喜劇オペラを封印したほどの苦杯をなめた「一日だけの王様(偽のスタニスラオ)」からの復活を、そしてイタリアのオペラを代表する作曲家へと彼を押し上げた史劇オペラには、彼の後の作品へとつながる要素が多く見いだせるまさに出発点です。生涯オペラ化を夢見た「リア王」を思わせる親子描写(二人の娘と老親の関係は、後に「リゴレット」でより突き詰められ、結果として「リア王」を断念させることになる)、合唱を活かした群像劇(「アイーダ」、そして「オテロ」で完成の域に届くそれの萌芽はこの作品にも見いだされる)、それになにより力強い音楽そのものが素晴らしい。有名すぎてときどきありがたみを忘れそうになる合唱曲「行け、想いよ、黄金の翼に乗って」の他にも聴きどころが多いし、なにより序曲からして素晴らしい。

イライジャ・モシンスキーの演出は、読み替えなど全くなしの直球勝負で実にこのオペラハウスらしいもの(いや、往年の、かな)。METの巨大な舞台(とおそらくはバジェット)を活かして複数面を持つ巨大なセットを中心に据え、回り舞台でヘブライの神殿とバビロニア王国の宮殿、そして牢屋を実物で示すのだから、豪華な衣装や合唱の人数(これ重要)と相まって映像的に楽しめます、それこそテクニカラーのその昔の史劇映画で見たような世界として。近年ではミュージカルの演出家によるポップな舞台や、前回のロベール・ルパージュのようなリアリズムとは違う手法も採られるMETですが、私の世代だとオットー・シェンクやフランコ・ゼッフィレッリの重たい舞台がこの劇場のイメージなもので、この舞台はしっくり来てしまいますね(笑)。

でもこの舞台について話すなら、とにかくプラシド・ドミンゴとジェイムズ・レヴァインについてでしょう。長年の共演の、ひとまずの区切りになるのだろうこの舞台、二人のキャリアの最終盤であることを否応なく感じさせられながらも、その確かな実力に感嘆させられた次第です。
ドミンゴは声域こそバリトンになってもあの声のままだし(笑)、真偽定かならぬ噂ではローレンス・オリヴィエが「俺みたいな演技しやがって、そのうえ歌うとかずるいだろう」なんて言ったとも言われる演技は衰えるわけもなく。はじめのうちはあの声なのに高い音域まで登らないことに違和感がなくはなかったけれど、今は第二のキャリアを楽しむドミンゴが健在であるだけで嬉しく思えます。彼の演技あればこそ、「リア王」に通じるヴェルディのドラマ作りが伝わろうというものですよ。
そして病の影響もあるのでしょう、レヴァインの動作自体は昔のようにはいかなくなっている、けれど最も多くこの劇場で指揮をしてきたマエストロであればこその呼吸の確かさは流石としか言いようもなく。序曲などで見られる部分的な傷などはインタヴューの中で彼が語っていたとおり気にしても仕方がない(かつての演奏と比べるのは残酷かもしれません、まとまりがよく切れのいい演奏が特色でしたから)、ドラマが動くあの感覚を今もなお持ち続けて、病を得てなお活躍されるレヴァインには頭を下げるしかないのです。
(願わくは、彼らの実演を長く聴かれた幸運な方々にはその魅力のほどをですね、多く言葉として残していただければな、と思う次第です。実演でしかわからない部分、いくら録音や映像収録が発達しても残るものと認識しておりますので、ぜひ…)

ドラマを動かす大きい役どころのアビガイッレを歌ったリュドミラ・モナスティルスカは幕間のインタヴューでこの役を難しくないと言ってしまえる余裕ある歌唱で聴かせましたし、イズマエーレのラッセル・トーマスは出番が限定された不思議な役どころ※ながらきっちり歌った印象です。フェネーナは明らかに劇中の役どころと出番のバランスが悪い変な役ではありながら、ジェイミー・バートンはきっちり出番をこなした。ザッカーリアのディミトリ・ペロセルスキーは声域が合っていなかったのが惜しまれるけれど(最低域が鳴らなかったのはどうにも…)、容姿がいいからいいのかな…(笑)

※「マクベス」でもそうなのだけれど、ヴェルディは彼自身を投影したバリトンの主役を用意した時、テノールに仕事をさせてあげない印象があります(笑)

そんなわけで、初期作品にして後期の作品にまで通じるものを多く内包する「ナブッコ」、METの上演は大いに楽しみましたよ。
…パレスチナを舞台にした「サムソンとデリラ」とか見たばかりなので、もう少し攻撃的でもいいかな、とか読替するならどの時代かなどんな設定ならいけるだろう?とか考えてしまいましたけど(笑)。

ではこれにて更新終了、ごきげんよう。


2017年2月9日木曜日

2/15(16)、25「読響シンフォニックライブ」放送

こんにちは。千葉です。放送情報ですよ。

●読響シンフォニックライブ 2017年2月

放送日:2017年2月 日本テレビ 15日(水) 26:29~(16日(木) 2:29~)/BS日テレ 25日(土) 7:00~

出演:

司会:松井咲子

指揮:小林研一郎
管弦楽:読売日本交響楽団

チャイコフスキー:交響曲第四番 ヘ短調 Op.36
(2016年12月3日 パルテノン多摩 大ホールにて収録)

多摩センター駅から坂を登った先にある、ちょっとKING OF PRISMを想い出させる外観を持つ(おいおい)パルテノン多摩で昨年から開催されている「読響パルテノン多摩名曲シリーズ」の公演から、コンサートのメイン曲を全曲放送ということですね。今年は交響曲第五番を演奏されるようなので、このシリーズではチャイコフスキーの後期三大交響曲を取り上げますよ、ということなのでしょう。
小林研一郎さん、近年は演奏が変わったなんて感想を横目で拝見しつつも実演で聴く機会を作れていませんので、そろそろなんとかしないといけませんかしら…と思っていた私には好機であります。

なお。この番組、曲中にCMを入れないことに大いに好感していますので、紹介するこちらもサーヴィスしてこの記事ではリンク多めでお送りしています。キンプリはあまり関係ないけど(笑)。

以上簡単なお知らせでした。ではまた。

見ました:映画「寒い国から来たスパイ」「オデッサ・ファイル」

こんにちは。千葉です。

お金がなくて(直球)映画館には行けないので、録画した映画をよく見ています。あと、気楽に流しておける吹替の洋画(最近、民放BSはよく流してくれるので助かります)。そのあたりを見ては忘れていくのもどうかな、と思ってメモ代わりに少しだけ書いておこうかなと思いまして始めます。
ですが、”読むに値するもの”にする努力はクラシック物のときの半分程度ですし(自分調べ)、いわゆるシネフィルではない千葉の書くことなので、”映画”タグの記事はスルーしていただくほうが良いかもしれません(笑)。

とか言いながらメモその一。

●「寒い国から来たスパイ」

ジョン・ル・カレの1963年の小説を原作としたスパイ小説の映画化(1965)。監督はマーティン・リット、主役のリーマスはリチャード・バートン。
自分の冷戦の記憶はモスクワ・オリンピック以降なので(その時点でもまだまだお子様)、”壁”周りのドラマにはあまりリアリティがなかったりします。”壁”が崩壊したあの日のことは、だいぶ鮮明に覚えているんですけどね…
壁の向こう側に潜入したスパイの、地味だけど緊張感の高い作戦の結果や如何に。結末に至るプロットはツイストも効いていて、なるほど名高い作品であるわけだと思う次第。



もう一作。

●「オデッサ・ファイル」

こっちはフレデリック・フォーサイスの小説(1972)の映画化(1974)。監督はロナルド・ニーム、主演はジョン・ヴォイト。
フリーランスのジャーナリストを生業とする主人公が、ケネディ暗殺の日に自殺した一人の老人を調べることからナチスの、というか収容所幹部の生き残りを巡ってギリギリの調査を繰り広げ、ついにたどり着くゴールのその先は、という感じでしょうか。
ドイツでは、戦争をした世代と戦後世代とが陰に陽にぶつかったのですなあ、という部分に感慨が強く残ったりします。



えー、実のところを言ってしまえばなんのことはない、どちらも「今さら冷戦期のスパイ小説読むのもどうかな」という怠け心もあって見たものでしたが、なかなか楽しめました。名画のたぐいは見ておくべきですね、と今さらながら自戒しましょう。

そしてクラシックの人的な意見を少しばかり。
20世紀のクラシック音楽は、多かれ少なかれこの時代に規定されています。私見ですが、ショスタコーヴィチやプロコフィエフの生涯を考える時にソヴィエトが無視できないのと同じくらい、たとえばカラヤンの時代を知る上でWWIIから冷戦に至る流れは無視できません。スターリン抜きで語られるショスタコーヴィチの前半生が多くの欠落を持つように、壁の建設によって”浮島”になってしまった西ベルリンの状況抜きで考察される”世界最高のオーケストラ”の物語も多くの不足を持つものです。
なにも「必ずそんな要素をも書いた上で、音楽の評価をしろ」と言っているのではなく、「その要素を考慮に入れない、前提として理解していないと音楽についても見落とすものが多い」と申し上げたいのです。”旧東側オーケストラのレコーディングには国の威信がかかっていたりする”とか”オーケストラは国の代表のように扱われていた”とか、そんな時代を理解しておくのは決して損にはなりませんよ、っていうか違うな、損得の話じゃなくて…以降は長くなるからまた別途。

****************

なお、映画はレンタルでも劇場でも放送でも、基本は”原語版を日本語字幕で見る”ようにしていますので、特筆がなければそういうことです、ということで。ではまた、ごきげんよう。


2017年2月6日月曜日

読売日本交響楽団 2017年4月 遠藤真理さんがソロ・チェロ奏者に就任

こんにちは。千葉です。

ニュースのご案内です。情報を知ったらすぐにお出しできるようがんばります(自覚はありますすみません)。


ソリスト、室内楽、そして昨年からは読売日本交響楽団のゲスト首席奏者として活躍してきたチェリストの遠藤真理が、4月からは正式に首席奏者として活躍されるのだとのこと。NHK-FMの「きらクラ!」でご存じの方も多いかもしれません。本人のコメントはこちらのサイトでご覧いただけます>所属事務所ジャパン・アーツのサイト内ニュース

樫本大進の活躍あたりからなのでしょうか、ソリストとして活躍する演奏家がオーケストラにポジションを得て活動するケースが増えてきたように思います(同じチェリストであれば、NHK交響楽団の向山佳絵子の先例もありますね)。独奏者としての個性が求められる(とされる)ソリストと、集団の中で演奏することになるオーケストラの団員は求められるものが違う、とかどこかのオーケストラの団員のコメントで読んだことがあるように思うので、ソリストと(首席とは言え)オケのメンバーとは両立は難しくないのかな、などと考えてしまいますが、彼女のコメントにもある室内楽がその乖離をつなぐものとして存在しているのかもしれません。

文中で名前を挙げた各位の今後のご活躍をお祈り申し上げつつ、併せて敬称を省かせていただきましたおわびをさせていただきます。

では本日はこれにて、ごきげんよう。

2017年2月5日日曜日

2/5「N響 第1849回 定期公演」放送

こんにちは。千葉です。

放送予定のご案内です。ショスタコーヴィチですよ、ショスタコーヴィチ!

●<N響 第1849回 定期公演>

指揮:井上道義

ピアノ:アレクセイ・ヴォロディン
トランペット:菊本和昭
管弦楽:NHK交響楽団

曲目:作曲はすべてドミトリー・ショスタコーヴィチ

ロシアとキルギスの民謡による序曲 作品115
ピアノ協奏曲第一番 ハ短調 作品35
交響曲第一二番 ニ短調 作品112 「1917年」

2016年11月25日にNHKホールで開催された演奏会、いよいよ放送です。

コンサート会場としての日比谷公会堂に再び光を当てた一大プロジェクト、「日露友好ショスタコーヴィチ交響曲全曲演奏プロジェクト」もついにCD化される、定評ある井上道義のショスタコーヴィチが放送されます。(俺はどうして会場に行かなかったのか!と思って確認したら別の公演に行っていました…)

ショスタコーヴィチについていろいろ書いては消して、最終的に残ったのはただ一言「聴いてください」です(笑)。
その昔は「映画音楽かよ」「プロパガンダ音楽に成り下がりやがって」などと散々な扱いを受けたこの交響曲も今聴けば違って聴こえましょうし、協奏曲はかつて映画館でサイレント映画にピアノで音楽をつけていた若きショスタコーヴィチの才気のほどが伺えましょう。日曜の夜はショスタコーヴィチで、ほら、タコサンデー的な(……)

…なんかリカヴァーできない感じなのでこの記事はこれでおしまいです。ではまた、お会い出来ましたら幸いです(恐縮)。

※井上道義が首席指揮者を務める大阪フィルハーモニー交響楽団、次の定期演奏会ではショスタコーヴィチの交響曲を二曲ですよ!「1905年」こと第一一番、そしてこの日放送される第一二番ですって。重いよ!と言わずぜひ近隣の皆様お楽しみあれ。詳しくはリンク先にてご確認ください。


2017年2月4日土曜日

ミューザ川崎シンフォニーホール、第4回 被災地復興支援チャリティ・コンサート開催

こんにちは。千葉です。

被災県の出身者として、そして市民の務めとしてご案内させていただきます。ミューザ川崎シンフォニーホールがあの地震の日に開催する、復興支援チャリティ・コンサートのご案内です。


詳しくはリンク先に書かれているホールからのご案内をお読みいただきたいのです、心のこもった文章で、素晴らしい判断が示されていると思いますので。
入場無料ですが要事前申込、来場された際にチャリティへの協力をお願いする形で開催されます。申込みはハガキのみ、2月20日必着です。詳しくはリンク先にてご確認ください。

※3/12追記。コンサートは無事開催されました。リンク先でその成功を報じる記事をご覧いただけます>東京新聞へ

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この文章の後に何か書いても蛇足にしかならないのだけれど、私からも。

あの地震で自らも大きな痛手を受け、しかし現在はあの日以前と変わらぬ解像度の高い鮮明な響きで私たちに最高の音楽を聴かせてくれるミューザ川崎シンフォニーホールが、各地の復興を助ける側として支援する側に立って活躍してくれることを、一音楽ファンという以上にあのコンサートホールの音を愛する者として喜ばずにはいられません。

そして、あの地震の後しばし岩手に戻っていた私は、まだあの地震とその対応がまったく終わっていないことをよく知っています。おそらく今も、毎日のように被災の記憶と今後への展望がニュースなどで明暗さまざまな角度から語られ続けているのだろうとお察しします(そこに昨年の水害ですから、さぞ県北の皆さまは大変だったろうと、正直言葉もありません)。
もしかすると復旧できて復興したところもあるのでしょうけれど、市街が更地になってしまったような地域ではモノの再建はただの始まりでしかないのです。社会そのものが受けた被害から、普通の生活に戻るためには必要なものが想像以上に多くあるのだ、地域のメディアは毎日それを伝えていましたし、今もそうなのでしょう。

しかしながら、首都圏に戻ってみればあの地震の話はもはや過去に属するものに思えてくる。一つの自治体がいいように利用された事件の話なんて、どこのメディアでも見もしない(気になる方は"山田町 NPO"あたりで検索してください)。トラブルからの回復はそう簡単ではないし美談に回収しきれるものではないのだなって、岩手ではよく考えさせられたものですから、首都圏発信で折々に示される”感動的な復興物語”にはどうにも違和感がある。「あの地震を忘れない」というのはそういうことなのだろうか、と考えてしまう。この疑問に答えを簡単に出してしまうことにも抵抗がある。正解もないし、やることの方向ですらいいか悪いか判断できかねる、それでもしなければならないことをしていかないと復旧も復興もない。それが現実に起きた災害からの立ち直り方なのだと、あの地震を「演奏会に行くはずだったが、電車が動かない」という、それほど被害のないかたちで体験した私は岩手県でしばし暮らして知ったように思っています。

おそらくは、この感覚をかつて明石海峡を震源としたあの地震を体験した皆さんが長く経験してこられ、そして現在は熊本周辺の皆さまが経験している最中なのだろうと推察します。被害も回復のためのプロセスもそれぞれで、それぞれに違う困難がありながら今よりマシな状況にするために日々為すべきことを為したり、何を為すべきかを決めたり考えたり迷ったりされていることでしょう。

今回、自らも被災したあの地震の名を外すことに、少々の寂しさというかなんというか、微妙な感慨もないわけではありません。ですが、この変更によってホールは、自らが支援される側から支援する側へ変わることを明確に打ち出したのだ、と私は理解しました。あの地震由来の余震が今も続く状況ではあるけれど、昨今の各地で起こる地震も無視できるものでは、無視していいものではないわけです。どこかの評判の悪い(穏やかな表現)とは違って、新しい判断をすることも必要なのです、きっと。

そんなわけで、「ここには、その時が来たのだ」という理解をして、これからもミューザ川崎シンフォニーホールに通おうと思う私であります。そしてそのたびに天井を見上げて、あの地震のことを思い出すでしょう、きっと。あんなことがあっても以前のように戻すこともできる、ここだけの響きだって失われていないのだから、なんて思いながら。

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うーん、柄にもなく感傷的になりすぎだな、と少し反省しながらもこれで記事の更新はおしまいにします。ミューザ川崎シンフォニーホールでは、本日もおなじみの名曲全集が開催されますので、興味のある方はぜひ。そのうちこの呼名がなくなるはず、と期待も込めて考えている女性指揮者の登場ですよ
(私、他用にて伺えないのが残念です。かわさきミュートンくんの10歳をお祝いしたかったなあ←そこですか

では本日はこれにて、ごきげんよう。