2017年1月30日月曜日

ルドルフ・ビーブル(指揮者)死去

こんにちは。千葉です。

またしても訃報です。「世界の何処かで誰かは何時でも亡くなっているだろう」とかいう一般化もできなくはないのですが、大事な存在にそのような言い方ができるほど冷笑ごっこをやれるほど若くないんです、私。

●指揮者ルドルフ・ビーブル、87歳で死去(オーストリア放送協会)

最後の公演は今年の元旦、「こうもり」の指揮だったとのこと。合掌。
なお、この媒体をソース元として選んだのは昨年の来日公演で記者会見、公演の双方で存在感を示していたロベルト・マイヤー総裁からのコメントがあったからです。半世紀に渡って同じカンパニーで活躍を続けるということの重さ、私には想像すらできません。最後の最後の来日公演で、本公演ではないけれど聴くことができた「チャルダーシュの女王」の、楽しむことでくつろげる舞台公演という、予想もできなかったものが体験できたのはありがたいことでした。エンタテインメントとして洗練された「チャルダーシュの女王」が柔らかく耳に届いたあの日のことを思い出しつつ、いま一度合掌。

以上お知らせでした。ではまた、ごきげんよう。

2017年1月29日日曜日

1/29(30)「五嶋みどり バッハを奏でる/ベルリン・フィル ジルヴェスター・コンサート2016」放送

こんにちは。千葉です。

放送予定のご案内、今月最後のプレミアムシアター(NHK BS)です。放送は1月29日深夜24:00~(30日未明0:00~)です。

●五嶋みどり バッハを奏でる

2015年の録音も話題となった五嶋みどりのヨハン・ゼバスティアン・バッハによる無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ、映像版の登場です。収録は2016年、ケーテン城が会場とのこと(Googleマップ様はその大雑把な情報だとどこだかわからないよ、とお怒りですが)。一人舞台、楽しみにしましょう。

●ベルリン・フィル ジルヴェスター・コンサート2016

えー2017年は春節にあわせるかのようにこのタイミングで始まります。誰がなんと言おうと、ここが新年の起点です。どうしても太陽暦に合わせたいというならかつてのように生中継をしていただきたいものですな!(時差は誤差として無視←ご都合)

先日の記事で紹介したとおり、今年からサー・サイモン・ラトルはベルリン・フィルハーモニー管弦楽団とロンドン交響楽団を率いる立場になり、翌年のシーズンからはロンドンの人になってこういうお決まりのイヴェントからは少し遠ざかるわけです。であれば我らが公共放送様もあまり彼の演奏会を放送してくれなくなるわけで、なんとも残念なことではあるのです。ロンドン響はこの好機を逃すまいとばかりに、これまでとは人が変わったように発信しまくりになっていますが(笑)。そう考えればこれからのこういう放送は貴重なものになっていきますので、努々お見逃しなきよう(どこかの政治家さんならドドって読んでくれそうなのであえて漢字にしてみた)。…誰ですか「どうせそのうちプロジットノイヤールとか言うから」なんて考えてるのは(笑)。

少し調べてみたのですが、残念ながらジルヴェスターコンサートはベルリン・フィルの管理外にあるようで(もしくはリージョン管理をされている)、予告などもないんですよYouTubeだと。そして五嶋みどりの映像については正直に申し上げて初耳でしたし。ということで今回は非常に地味な記事として公開しちゃいますね。

ではまた、ごきげんよう。


2017年1月28日土曜日

アンリ=ルイ・ド・ラ・グランジュ(音楽学)死去

こんにちは。千葉です。

訃報です。

●Henry-Louis de La Grange est mort, disparition du plus grand spécialiste de Gustav Mahler

アンリ=ルイ・ド・ラ・グランジュが亡くなったとのことです。
グスタフ・マーラーという指揮者にして作曲家に強く興味を惹かれた方ならばこの名をご存知でしょう。…と説明を省こうかと思ったら、wikipedia日本語版にはページすらなかった。なんという…(英語版はこちら



この著作ですら普通には買えないのか、と余計に悲しくなってきました。本については出版社のサイトをご参照ください、「日本でのみ出版された貴重なマーラー論集」とのことですが、膨大な彼の仕事からピックアップして再編集したものですので入門書と考えていただいてもいいのではないかと。未だに修正されない感が強いグスタフ・マーラーのイメージ、”病弱で自らの死に怯えて生きた”とか”予言的自伝的作曲が”どうとか、そういう言説に研究と論証で戦われた方です。そのお仕事の一端が、エリアフ・インバルとフランクフルト放送響(現hr交響楽団)の全集との関わりの中で紹介されているこちらの文章をぜひご参照くださいませ>[この一枚 No.43] ~インバル/マーラー交響曲全集とアンリ=ルイ・ド・ラ・グランジュ~(日本コロムビア)

あまりに大部にすぎるゆえか、未だ日本語版が現れないマーラーの評伝(フランス語版で全三冊)など彼の仕事の評価は高く、正しく第一人者でいらっしゃいました。合掌。

****************

ドナルド・ミッチェルによるマーラーの交響曲を読み解く著作も三冊目がいつまでも出版されず(20年くらい待っているような気がする)、マーラー研究は日本では人気がないのかね、いつまでもアルマさんの自分語りを信じてマーラーを受容するのかね…なんて失望してしまいそうになりますが、幸いにして日本にはマーラー理解に大きく寄与してくださる前島良雄さんがいらっしゃいます。



以前お会いできた際に「”君に捧げるアダージョ”よりケン・ラッセルの方がマーラー本人の姿に近いのでは」「マーラーが交響曲で描く”ドラマ”は自伝ではなく”虚構”では」などなど、いろいろな疑問をぶつけさせていただいたことは楽しい思い出であります。

…こんな話をすると、もしかすると私が話をそらして、ことさら明るい面を見ようとしたがっていると感じられるかもしれません。ですが学問や研究のたぐいは先達の積み上げたものを知り、その先へとさらに進んでいくものです。先達が次々と亡くなられていく感覚は心細くはありますけれど、生きているうちはその心細い歩みを続けるしかないのでしょう。

わかったようなことを偉そうに口走ったところでひとまずはおしまい。ではまた、ごきげんよう。

書きました:METライブビューイング「遥かなる愛」

こんにちは。千葉です。

先日拝見したオペラの劇場上映について記事を寄稿しました。

●ときに憧れを映す鏡。あるいは過酷な船旅を描き出す具象的な海。合唱とともにオペラの”世界”を創り出す大量のLED———METライブビューイング《遥かなる愛》

これは正直に申し上げて、舞台の絵を見ていただいて興味が湧いたらぜひ体験してみて!という感じでオススメしたいです。





オーケストラピットの上にまで張り巡らされたLEDの明滅で、立体的な”海”を創り出したルパージュの演出に興味が持てたらこの作品を楽しめます、間違いなく。ストーリー自体は至ってシンプル、登場人物は三人+合唱のみ、音響的にもいわゆる現代音楽のキツさは薄いしマルッキ指揮するMETオケは繊細さから激しい音響まで振幅の広い演奏を聴かせてくれる。2000年に作られたオペラが広く知られるには最良のプロダクションではないかな、と感じました。

…せっかくですから、METはサーリアホの次のオペラ「La Passion de Simone」も上演して世界でリリースしてください。シモーヌ・ヴェイユを題材にしたオペラ、らしいですよ?

****************

この作品は一見する価値は間違いなくあります、では再演が繰り返されて後世にまで残るものだろうか?そんな問いも浮かんでしまったのが正直なところではあります。(この項、後で追記します)

****************

上映の中でも告知があったとおり、次回は「ナブッコ」です。退任も近づくレヴァインとドミンゴによる舞台はおそらくこれが最後(に近い)ものになることでしょう。現地の評などを見る限りではいい上演となった模様ですので、皆さまぜひ劇場でご覧ください、アジア寄りの中東風ステージも楽しいですよ、きっと。


詳しくはMETライブビューイングのサイトでご確認くださいませ

ということで本日はおしまい。ではまた、ごきげんよう。

2017年1月27日金曜日

ヴェリヨ・トルミス(作曲家) 死去

こんにちは。千葉です。

作曲家の訃報です。

●エストニアの合唱作曲家、ヴェリヨ・トルミス 86歳で死去(ガーディアン)

ヴェリヨ・トルミス(1930年8月7日 - 2017年1月21日)が亡くなったとのことです。代表作として「鉄への呪い」ほか、数多くの合唱作品が愛唱されていました。

****************

…これは合唱に取り組まれた方ならば衝撃的な報せだったのだろう、と思います。残念ながら私は吹奏楽からオーケストラ、そしてオペラ方面へと手を広げていった者なので、合唱までは手が回っていません、だからその衝撃について語ることはできません。高校生の文化系部活動としてメジャーなふたつ、合唱と吹奏楽(五十音順)の扱う作曲家の違い、想像を遥かに超える距離があるのです(例外として、ある時期から三善晃が共通の作曲家となってくれました)。
私は残念ながら「パーヴォ・ヤルヴィが同郷の作曲家として録音もしている」という認識以上は持ち合わせず、その衝撃を共有できていません(多くの訃報でこうしたギャップはあるかと思いますが)。

そのような限界を感じつつも、WWIIから冷戦の時代、そしてその後を生きてきた芸術家の訃報をここに記録し、冥福を祈らせていただきます。合掌。

ではまた、ごきげんよう。

2017年1月26日木曜日

菅野祐悟の交響曲第一番CD化

こんにちは。千葉です。

今日は新譜のご案内を。変わり種として扱われますか、それとも…という興味が私にもあります。

●菅野祐悟 交響曲第一番 ~The Border~

2016年4月29日に初演された菅野祐悟の交響曲第一番、初演のライヴがCDとしてリリースされます。演奏は作曲を勧めた藤岡幸夫の指揮、関西フィルハーモニー管弦楽団、2016年4月29日の初演を収録したものです。

数多くのドラマや映画、そしてアニメなどのサウンドトラックで活躍してきた菅野祐悟は、近年藤原功次郎(日本フィルハーモニー交響楽団 首席トロンボーン奏者)への作品提供なども行っており、クラシック音楽寄りの仕事も目立ってきたところでした。そこに登場したこの交響曲は、テレビ番組「エンター・ザ・ミュージック」で少し聴いた感じだと大河ドラマ「軍師官兵衛」で聴かれた作品が近いのかな、なんて思ったり。放送当時は「時代劇が制約になってるかな…」と思わなくもなかったけれど、その経験はこうして生きているのだと感じた次第。もちろん、作品の評価は全曲ちゃんと聴いてみないとできませんので、あくまで第一印象ということで。



****************

個人的には彼の名を認識したのはアニメですね(ドラマはあまり見ないから)。「鉄腕バーディー DECODE」(2008)のテーマがすっごく気に入ったんですよ、それで名前を確認した(余談ですが、「マン・オブ・スティール」にも影響を与えた「鉄腕バーディー DECODE」、まだまだ続けられると思うんですけど三期はまだですか?←おい)。

スタッフの名前を覚えてマニアっぽくなる必要は別にないと思いますが、こうして違った形で出会えたりするので楽しいものですよ>スタッフ確認。先日記者会見の模様をお伝えした「おんな城主 直虎」の菅野よう子はもしかすると「ラーゼフォン」のオープニング(2001)かな、それとも「カウボーイビバップ」(1998)かな…

昨年12月には「くるり」の岸田繁も交響曲第一番を発表し、それもCD化される(CINRA.NET)とのことですから、もしかすると「畑違いと思われてきた作曲家たちがクラシック作品(広義)を発表する」というのがひとつの流れになるのかもしれません。そうした流れに対して「クラシックとはー、本来ー、」とか頭ごなしに言ったりしませんので(笑)、多くの皆さまがオーケストラに興味を持たれるきっかけとなりましたら喜ばしく思いますですよ。ちなみに岸田繁のTwitterはリンク先で、委嘱・初演は京都市交響楽団、指揮は広上淳一でした。

以上新譜のお知らせでした。ではまた、ごきげんよう。


2017年1月25日水曜日

ロンドン交響楽団、ラトルとのシーズンプログラム発表

こんにちは。千葉です。

国内の情報も追いきれていないくせに海外の話ですが、こればっかりは仕方ない、サー・サイモン・ラトルがからむ話なのだから。ファンなので。

●LONDON SYMPHONY ORCHESTRA UNVEILS FUTURE PLANS

1月17日に、ロンドン交響楽団が次期シーズンのプログラムを発表しました。というお話です。併せて新シーズンのヴィジュアル・アイデンティティも発表されました。力入り過ぎだろう、この時点で、と言いたくなる程のやる気です。



肝心のプログラムは、と見れば「開幕していきなりラトルとの10日間のお祝いイヴェント」「お祝いも含めて六つのシーズンを通じた縦糸となるテーマを用意」「アウトリーチ活動の充実」「英国人作曲家の特集」などなど、千葉の雑な意訳は間違っているかもしれないけれど(おい)ロンドン響のやる気は本物です。ちなみにBBCはこう伝えています。皆さん嬉しそうで何よりです。ステップダウンになどしてやるものか、という気迫を感じずにはいられませんよ。素晴らしい。

(個人的には、発表時期がメイ首相のブリグジットに関する演説にぶつかってしまったことで変な意味付けをされなければいいのだが、という感じ取りはしています。誰だって好きな音楽家がフルトヴェングラーみたいな面倒に巻き込まれてほしくないっすよ。いやほんとにね)

何がやる気だと言ってここ最近のラトルによる公演の力の入り具合ですよ。先週末はピーター・セラーズの演出によるリゲティの歌劇「グラン・マカブル」(セミステージ形式)だったんです。この作品を得意とする面々※による舞台、映像化されないのかしら…

※この異様な作品に対してこういうと冗談みたいに聞こえますが、こう言っていい人が集まっている貴重な公演であったように見受けられます。こちらの動画は公演を前にセラーズが作品と過去の、今回の演出について語ったものです



そして19日にはマーク・アンソニー・タネジの新作(世界初演)とマーラーの交響曲第六番によるコンサートを開催するのですが、そのコンサートはこの記事で動画を使用しているロンドン交響楽団のYouTube公式チャンネルMedici.tv、そしてFacebookからライヴ配信するのですよ。なんだろうこのやる気。

で、こちらはそのコンサートのトレイラー。





役者さん使ったのかなやる気だなおい、とも思ったのですが、これはこちらの首席パーカッショニストの方かな…とりあえず彼はハンマーを得ました。振り下ろされるのは二度か三度かわからないけれど、とりあえず日本時間今晩の深夜です。詳しくはこちら、みんなで見よう!(おいおい)

サー・サイモン・ラトルの今年の来日公演が聴けるとは思えないけれど(哀しい)、その活躍が続いていることが伝わり、オンラインではあっても演奏が聴けるのは悪いことじゃあない、そう思うことにしてこれからニュースを見かけたら拾いますよ、という意思表示の記事でございました、ファン丸出しでごめんなさい(笑)。ではまた、ごきげんよう。

※追記

コンサート前半のタネジ作品はまだみたいですが、メインのマーラーは配信が始まっております。ぜひ。
→1/25追記。前半も含めた完全版がアップされましたので、動画を差し替えました。さあ聴きますかね!(まだ時間が取れないけど…)



2017年1月23日月曜日

井上道義と新日本フィルによるオール武満徹・プログラム

こんにちは。千葉です。

興味深いコンサートのご案内と、その紹介動画をご紹介(わざとややこしく書かない)。つい先日紹介したハンブルクのエルプフィルハーモニーこけら落としプログラムを賞賛してこちらに気づけないようではいけませんな、という反省込みでご案内します。

●新日本フィルハーモニー交響楽団 #568 ジェイド<サントリーホール・シリーズ>

指揮:井上道義

歌:大竹しのぶ
ピアノ:木村かをり
ヴァイオリン:崔 文洙(新日本フィル ソロ・コンサートマスター)
クラリネット:重松希巳江(新日本フィル 首席クラリネット奏者)
チェロ:富岡廉太郎
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団

曲目: 演奏曲の作曲はすべて武満徹

シャンソン「聞かせてよ愛の言葉を」(蓄音機での再生)

死んだ男の残したものは
2つのレント(抜粋)
リタニ - マイケル・ヴァイナーの追憶に -
弦楽のためのレクイエム
グリーン
カトレーン(オ-ケストラ版)
鳥は星形の庭に降りる
訓練と休息の音楽 ~『ホゼー・トレス』より(3つの映画音楽)
『他人の顔』より ~(3つの映画音楽)

一つの演奏会を一人の作曲家の作品で、いわば”個展”として開催するのはよくあること、それがアニバーサリーイヤーならなおのこと。ということだったのでしょう、武満徹の作品、それもオーケストラ・コンサートだけれど歌あり室内楽ありの幅広い選曲による演奏会が、新日本フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会として1月26日に開催される、というわけです。
武満徹は1996年に亡くなられていますので、日本でのやり方ですとアニバーサリーイヤーを過ぎてしまった格好ではあるけれど、以前ネッロ・サンティがヴェルディ・イヤーに「彼の誕生日からアニバーサリーイヤーが始まる(から、ヴェルディ・イヤーは2013年の10月に始まるんだよ)」と語っていらっしゃいましたので、ここは昨年2月に始まった没後20年の〆と捉えていただき、ぜひ盛況に開催されますよう。

この公演を前に、このプログラムを編んだ当事者であるところの指揮者、井上道義と、武満徹ご息女でいらっしゃる武満真樹(両名とも敬称略)による対談動画が、新日本フィルハーモニー交響楽団YouTube公式チャンネルより配信されておりますので、ぜひご覧ください。五分弱の、井上道義らしい率直な語りが楽しめますよ。




このお二人の語りに何かを付け加える僭越は避けさせていただき、紹介は以上にておしまい。ではまた、ごきげんよう。

(私、他用故にこちらにはお伺いできないのです。この貴重な機会を多くの方が楽しまれますように、という思いでご案内させていただきました)

※追記。やっぱり楽しそうでしたね、このプログラム。冒頭のシャンソン(武満徹にとっての原点)から。


2017年1月21日土曜日

1/22(23)「ミラノ・スカラ座開幕公演」放送

こんにちは。千葉です。

放送予定のご案内ですよ。


1月22日深夜(23日未明)のNHK BSプレミアムシアターは声楽物を二本立てでお送りします。

まずは話題となったミラノ・スカラ座の新シーズン開幕公演です。プッチーニのご存知「蝶々夫人」をリッカルド・シャイー音楽総監督の指揮、ホセ・マリア・シーリの蝶々さん、ブライアン・ハイメルのピンカートン、カルロス・アルバレスのシャープレスほかによるキャストによる上演です。

もちろんスカラの新シーズンならそれだけでも注目を集めますが、この公演はいろいろな面から話題となっていました。まず何よりも、使用した楽譜のヴァージョンです。今回の新制作にあたって、シャイーはこの有名な作品の初演版、つまりこの劇場で110年以上も前、1904年2月17日に一度だけ上演された(そして酷く失敗し、続演されなかったヴァージョンを使用したのです(現在一般に上演されているのは、改訂されてブレシアで初演された同年5月28日改訂再演版)。
初演の失敗には諸説あって”初版では第二幕が長すぎた””「ボエーム」の焼き直しだ!とか罵声が飛んだ”などなど、そのエピソードだけでも記事が書けるものなんですけど、その初演版を実際に舞台にかけて検証、ではないけれどその価値を確かめる動きは以前からありました。以前日本でも上演されて教育テレビでの放送もあったように記憶していますが、当時は現行ヴァージョンに詳しくないから比べようもなかったのでそのありがたみがよくわからず残念でしたが、今回はばっちりですよ!(笑)

そしてこのトレーラーを見ていただければ即座に御理解いただけるでしょう、アルヴィス・ヘルマニスの演出も相当に攻撃的です。「21世紀にもなってまだオリエンタリズムに苦しめられるのか!」なーんて声も上がるかもしれませんけれど、とりあえず放送でその舞台を見るまでは多くを語るのは控えます(感想、別途記事にしようかと思っています)。





全国共同制作プロジェクトとして東京(池袋)ほか各地で開催される笈田ヨシ演出による舞台、そして2月に入ると新国立劇場の定評ある舞台が開幕が次々と開幕しますので、この機会に”原点”を知っておくのもよろしいのではないかと愚考いたしますよ。いや、そういうこと抜きにこの舞台、気になりますけれど。

※一部の表現を修正しました

後半は欧州で大活躍のカウンターテナー、フィリップ・ジャルスキーのバッハとテレマン。先日紹介したハンブルクのエルプフィルハーモニーこけら落とし公演にも登場していましたね。

昨年CDをリリースした面々でのライヴ収録と思われる映像は前半とは違った意味で現在の欧州声楽界隈を感じさせてくれることでしょう。



これはワーナークラシックスが配信しているガン患者支援のチャリティ動画ですが、放送されるのはフランクフルトのアルテ・オーパーでのもの。CD一枚分くらいは放送があることを期待しましょう(笑)。

では放送情報はここまで。ではまた、ごきげんよう。


1/22「バンベルク交響楽団来日公演2016」放送

こんにちは。千葉です。

放送予定のご案内です。


1月22日(日) 21時からのクラシック音楽館は、昨年大好評裏に行われたヘルベルト・ブロムシュテット指揮バンベルク交響楽団の来日公演から、名古屋の愛知県芸術劇場コンサートホールでのオール・ベートーヴェン・プログラムです。曲は交響曲の第六番、第五番という初演と同じプログラムですね。
なお、実際の初演の際には、この二曲の間にいろいろな編成の作品が挟まれていた上、五番の後にも曲が続く長大なプログラムだったので、再現すると大変なことになります。以上豆知識でした。

ブロムシュテットさんのミダス王の如き活躍はもはや皆さまご存知のとおりなので(少し前にも紹介しましたし)、ここでは多くを書きません。見てください、とのみ申し上げます。

それだけだと「Twitterでよくね?」という声が自分の中から聞こえてしまうので(電波)、おまけにこれもつけましょうそうしましょう。
先日新しいホールの開場をお知らせしたNDRエルプフィルハーモニー管弦楽団はYouTube公式チャンネルが充実しているのですが、そこにこの動画もありました。



ドイツ音楽も素晴らしいマエストロですが、スウェーデン人ということで北欧の音楽も定評のあるところ。私個人もかつてサンフランシスコ交響楽団と録音した全集はよく聴いたものです、ニールセンとともに。昨年の演奏は、かつて聴いたそれらの明晰さに加えてより自由が加わったものに思えます。そもそもが非常にキッチリした演奏をされる方なので、自由になっても放恣にはならず、いい塩梅で歳を重ねられるマエストロなのでした。素晴らしい。

ということで、22日の放送もお楽しみに、というご案内でした。ではまた、ごきげんよう。


2017年1月20日金曜日

1/12(13)、21 「読響シンフォニックライブ」放送

こんにちは。千葉です。

さっそく放送予定のご案内。月に一度のこちらの番組です。


  ・NTV 12日(火) 26:29~(13日未明 2:29~)
  ・BS日テレ 21日(土) 6:30~

出演:

番組司会:松井咲子

指揮:ヘスス・ロペス=コボス(ファリャ、トゥリーナ)/シルヴァン・カンブルラン(デュティユー)
ピアノ:ホアキン・アチュカロ(ファリャ)
管弦楽:読売日本交響楽団

ファリャ:交響的印象「スペインの庭の夜」
トゥリーナ:交響詩「幻想舞曲集」 作品22
(2016年9月16日 サントリーホール)

デュティユー:交響曲第二番 「ル・ドゥーブル」
(2016年10月19日 サントリーホール)

毎月確実に放送がある読売日本交響楽団は、NHK交響楽団の次にその音楽が人目に触れやすい…まで書いてから放送時間を見直して少し考えてしまいます。さすがに深夜に見るのは難しいし、早朝の放送もなんというか(自分の寝坊を棚に上げました)。視聴率で測られる何かがあるのだとすると大変だろうなあ、とか訳知りぶって思ったりしなくもありません。実際のところはわかりませんけれど…

だから、という訳でもありませんが今年からのテレビ放送されるクラシック番組としてこの番組も紹介していきます、さいわいBS放送もあって全国で視聴できますし。見逃しても番組サイトから視聴できるのもポイント高いですし。

今月放送分はヘスス・ロペス=コボスのスペイン作品プログラムから、そして先月放送したシルヴァン・カンブルラン指揮のコンサートから五嶋みどりが演奏していない作品で時間も延長しての放送です。
「スペインの庭の夜」はかつて多く録音されたけれど近年は演奏頻度が低いし、トゥリーナ作品はそもそも多くは演奏されていない(その昔、吹奏楽で編曲版が少し流行っていた記憶がありますね、そういえば)。そしてデュティユーの「ル・ドゥーブル」は、その名の通り二つのアンサンブルが応唱する作品なので視覚効果もある方がわかりやすいはず。見どころ十分の公演なので、放送してもらえるのはありがたいのですよ。

ということで、今晩深夜、もしくは21日に放送される「読響シンフォニックライブ」のご紹介でした。ではまた、ごきげんよう。

書きました:第39回 フルートフェスティバル in 東京

こんにちは。千葉です。

さて寄稿した記事のご紹介です。

●第39回 フルートフェスティバル in 東京

プロ・アマのフルーティストが一同に介してともに聴き、ともに演奏を楽しむイヴェントとして日本フルート協会が各地で開催しているイヴェントの、その中でも大規模に行われている東京でのフルートフェスティバルがこの週末に開催されます。その紹介記事を書かせていただきました。1月21日(土) 18時より、新宿文化センターにて開催されます。

詳しくはリンク先にてご確認くださいませ(プロアルテムジケ 公演情報ページ/公演終了後は削除されます)。

今回ゲストに招かれたアンドラーシュ・アドリアンはドイツ各地のオーケストラで活躍し、現在はソリストとして活躍する一方で後進の指導に注力しています。また、ヤマハのメイドフルート制作において長くアドヴァイザーとして参画するなど日本との縁も深い名手です。ヤマハのフルートについて語ったこちらの動画で近年の演奏も少しですが聴くことができますので、興味ある方はこちらもご参照ください。

以上、寄稿した記事のご案内でした。ではまた。



書きました:飯盛範親&東京交響楽団のロシア・ソヴィエトプログラム

こんにちは。千葉です。

寄稿した記事のご紹介です。


リムスキー=コルサコフの「シェエラザード」を前半に置いたプログラムは珍しい、こんな演奏効果が高くて大きい曲をはじめに演奏してしまって後半どうするの?というポイントからプログラムを読み解きましたよ。私の答えは「後半はより編成が大きくて、かつ劇的な作品にしちゃいましょう」という、ド直球勝負、というものであります。その前後半をつなぐ糸としての”物語”、という趣向ではないのか、と。

「シェエラザード」はいろいろなアプローチが考えられるでしょう、それこそ物語を想定した語り物から”管弦楽法見本市”まで。オーケストラの技量、そして指揮者の語りの技が示されることでしょう。一昔前は定番としてロストロポーヴィチとパリ管弦楽団の演奏が挙げられていましたけど、私が好きなのはキリル・コンドラシンとコンセルトヘボウ管の録音ですね。一択(言ってることが違うぞ)。

対して「アレクサンドル・ネフスキー」、これはまた独特な作品なのでどうなる、とは申し上げにくい。「シェエラザード」とは違った意味で。もともとエイゼンシュテインの映画のために書かれた音楽を独立した作品として編み直したこの曲はその素性からもまだ演奏頻度は高くない。大編成管弦楽に加えてロシア語の独唱、合唱と声楽つきですから、録音も少なく実演ともなればさらに希少。ちなみにカレル・アンチェルの録音は素晴らしいですよ。




ちなみにこういう映画です。1938年のパブリックドメインであります。ちなみにカンタータは映画の半分ほどの演奏時間ですので、ご安心ください。

映画の話はさておいて、記事にも書きましたとおりの面々で演奏される今回の貴重な公演は果たしてどうなりますか、乞うご期待。といったところでしょう。
この公演の前に、東京交響楽団は桂冠指揮者・秋山和慶との定期演奏会を開催し、その後この総力戦に挑みます。その間にも新国立劇場「カルメン」のリハーサルが進むかと思えば、頭が下がるばかりです。それらのコンサート、オペラについての詳しい公演情報、チケットの入手はこちらでご確認くださいませ>東京交響楽団 公式サイト

なお、この記事そのものは雑誌「ぶらあぼ」に掲載されておりますので、よろしければそちらもお手にとってご覧くださいませ。

ということで、これはB面というより紙面に合わせて削った雑念の供養みたいですね、これ。プログラムを見ると何かを考えてしまう人の妄念におつきあいいただきありがとうございました(笑)、ということでこの記事はおしまい。ではまた。

※現在、東京交響楽団の公演情報ページで関谷浩至氏によるエッセイ「プロコフィエフとエイゼンシテイン」 が公開されています。映画と併せてぜひご覧くださいませ、そしてぜひオペラシティで聴いてくださいね。
※所属事務所の新年会Tweetより公演前日の飯森範親氏。好演を期待します。


直木賞に恩田陸「蜜蜂と遠雷」選ばれる

こんにちは。千葉です。ニュースのご案内。

●恩田陸 「蜜蜂と遠雷」(幻冬舎特設サイト)

昨日発表された第156回直木賞を受賞した、恩田陸最新作です。ピアノの国際コンクールを舞台にした小説ということで、ここにも紹介しておきます。……が、残念ながら未読なのでこれ以上のコメントは差し控えます(笑)。

せっかくだからお得な情報くらいは用意しましょう、そうしましょう。

版元の幻冬舎プラスとナクソス・ミュージック・ライブラリーの協力で、作中のコンクールを再現できるプレイリストが24日まで無料公開中とのこと>詳しくはリンク先でご確認ください
リストを見るに、20世紀の作品までで終わっているのはちょっと意外にも思えますね。作曲者の名を冠したコンクールならともかく、総合的な国際コンクールで現代作品なしというのは参考とされたコンクールにならったのかな?とか思ったりしなくもないのですが、マニアさんの戯言なのでお気になさらず。

****************

北村薫さんが受賞したときにも思ったのですが、いちおうは新人賞扱いの直木賞に選ばれるべき対象というのはどのへんまでが許されるものなんでしょうね。ツツイストだった私はこの賞のニュースを見るとどうしても「大いなる助走」を思い出してしまうのですよ、そしてもちろん後年筒井さんがこの話を蒸し返したら「もうあなたが賞を授ける方でしょうに」と言われたことも。恩田陸を新人賞の対象に選び得たのは前世紀のうちだったんじゃないの?というまぜっかえしもいちおうしておきますね。

ではひとまずこれにて。ごきげんよう。


2017年1月19日木曜日

山形交響楽団の首席客演指揮者にラデク・バボラーク就任

こんにちは。千葉です。ニュースのご案内です。

●世界的ホルン奏者・指揮者のラデク・バボラーク氏、山響首席客演指揮者に就任!

1月18日のニュースです。東北のプロフェッショナル・オーケストラとしては仙台フィルハーモニー管弦楽団と並び立つ山形交響楽団の指揮者陣に意外なメンバーが加わります。その名はラデク・バボラーク。ええ、もちろんこの方ですよ。



若くしてソリストとして活躍し、チェリビダッケのミュンヘン・フィル、そしてバンベルク響を経てベルリン・フィルの首席ホルニストとして活躍した彼です。ええ。

その彼が、2018年度から3年契約で山形交響楽団の首席客演指揮者に就任します。
近年このオーケストラと多面的な活躍をしている飯森範親音楽監督(先日は東京交響楽団の公演についてご紹介しました)、そしてバロックチェロ奏者としてオーケストラ・リベラ・クラシカの音楽監督として活躍する鈴木秀美首席客演指揮者にさらにバボラークが加わる新体制、いろいろな展開可能性がありそうでなかなか興味深いものです。というか、まったく先読みが効きません(笑)。

かつて裏方バイトをしていた仙台フィルはモダンオーケストラとしての道を突き進み、山形交響楽団はピリオドアプローチのできるオーケストラとして多様な可能性を探っている。はるか南の方からはそんな風に二つのオーケストラが覇を争っているように見えなくもないのですが実際のところ如何なのでしょう。私のかってな憶測とは無関係に、両オーケストラが東北にオーケストラの実演を広めてくださいますように、と仙台に出るまでオーケストラのライヴに触れられなかった私は思う次第であります。バボラークと山形交響楽団のご活躍をお祈り申し上げてこの記事はおしまい。ではまた、ごきげんよう。

※鈴木秀美首席客演指揮者との公演では、ブラームスの交響曲第四番でこんな試みも行われて成功した模様です。東京でも公演してくれませんでしょうか、このスタイルで是非。



2017年1月17日火曜日

第15回 齋藤秀雄メモリアル基金賞に酒井淳(チェロ、ガンバ、指揮)選出

こんにちは。千葉です。さっそくニュースのご案内。

●「第15回 齋藤秀雄メモリアル基金賞」酒井 淳氏(チェロ)に決定(@Press掲載のリリースより)

ソニー音楽財団が2002年に設立した「齋藤秀雄メモリアル基金賞」は、齋藤が生前活躍した二つの分野、つまりチェロ演奏と指揮の分野で活躍する若手を顕彰する賞です。昨年はチェロの上森祥平、指揮の川瀬賢太郎が受賞しています。

今年はピリオド、モダン両方のチェロ、そしてヴィオラ・ダ・ガンバの演奏、そして指揮者としても活躍する酒井淳が選ばれました(受賞者のWebサイトはリンク先でご覧いただけます)。演奏に加え、現在桐朋学園大学の特任教授として後進の指導にもあたられているとのことです。

なお、指揮者部門は該当者なしとのこと。
>詳報はこちらでご覧いただけます:ソニー音楽財団

****************

受賞を知ればその音楽が聴いてみたくなるところ。少し調べましたら2015年にリリースしたフォルクレ作品の演奏をしているもの、そしてカンビニ弦楽四重奏団のモーツァルトが見つかりましたので張っておきますね。
動画より実際のコンサートが!と思われる方には、4月に行われる受賞記念コンサートをご案内しとておきますね(東京・春・音楽祭公式サイトへリンク)

今後のさらなるご活躍をお祈り申し上げてお知らせはおしまいです。ではまた、ごきげんよう。





さようなら「バーナム&ベイリーのサーカス団」

こんにちは。千葉です。

またニュースのご紹介。



リングリングサーカスは、反対活動を受けて一座の最大の売り物だった象のショウを「2018年にやめます」と発表していたのだけれど(実はその前に象の虐待動画が流れて批判されていた)、それどころかその日を待たずに今年の5月にサーカスそのものが146年の歴史に幕を下ろすことになった、というニュースです。

公式サイト>Ringling Bros. and Barnum & Bailey Circus

…あれ、怪訝な顔をされていらっしゃる?どうしてこのサイトがそんなニュースを、というご質問でしょうか?よろしい、ではまずこちらをご覧ください。



こちらの動画で紹介されている作品、イーゴリ・ストラヴィンスキーの「サーカス・ポルカ」はこのサーカスのために書かれた作品なんです。1942年の作品、”バレエ”の振付はジョージ・バランシンという豪華版ですよ!…この動画で見られる若い象がそれを”踊って”いるかどうかはわからないんですけどね(笑)。

ともあれ、こうして数多くのサーカス団を合併して出来上がった巨大な「地上最大のショウ」、リングリングサーカスは歴史を終えます。時代であります、あらゆる意味で。

で、サーカスを湿っぽく見送るのも変なので、陽気なやつでこの記事は〆ましょうそうしましょう。ではまた~。



(〆を書く前に、一瞬筋肉少女帯の一連のサーカスネタが先に脳裏をよぎったことは告白しておきましょう。サーカスが来ると~君はドキドキして~♪江戸川乱歩にしようよ自分)

※追記。最終公演の模様が配信されています。興味のある方はどうぞ。


2017年1月15日日曜日

1/15に「N響 第1848回 定期公演」放送

こんにちは。千葉です。

さて放送のご案内。NHK交響楽団の定期演奏会です。


指揮:デーヴィッド・ジンマン
ピアノ:レイフ・オヴェ・アンスネス ※
管弦楽:NHK交響楽団

シューマン:
  「マンフレッド」序曲 作品115
  ピアノ協奏曲 イ短調 作品54 ※
  交響曲第三番 変ホ長調 作品97 「ライン」

なお、演奏家名の表記はデータ部分では放送局の表記に準じますが、それ以外は自分の認識している一般的な表記で書きます。だから指揮者の名前を自分の文として各部分ではデイヴィッド・ジンマンになります。いまさらなお断りですがご了承くださいませ。放送されるのは2016年11月19日の演奏。

さてこの回はデイヴィッド・ジンマンがチューリヒ・トーンハレ管弦楽団と交響曲全集を残しているシューマンづくしです。彼は基本的に手堅いサウンド作り、極端には走らない表現なのに(特にリヒャルト・シュトラウスの録音を聴けばおわかりいただけるかと)、いわゆる古楽※の手法を用いたベートーヴェンでは文字どおりに「聴いたことがない音がする」レコーディングを残し、と作品の時代に応じた表現で楽しませてくれます。
ではシューマンは、といえば録音で聴く限りではよく整理されて生きのいい演奏でしたから、きっとN響とも整ったシューマンが聴かれるのだろうと予想しています。

※鈴木秀美氏の著作「古楽器よ、さらば」でも言及されていますが、別に骨董のように古いものを愛でている音楽ではないのに古楽と称してしまうことにはどうにも妥当できませんで。作曲された時代には最新のものだったり、実験的な楽器のために作曲された作品が今まで生き延びているようなケースも多々あるのですから言葉として内実に合わないよね、というのは常にでも主張したい。オーセンシティをかつて名乗った欧米では、モダン楽器をまがい物扱いすることの怪しさからかoriginal instrumentsとかperiod instrumentsなんて呼称になってきましたが、それだと「モダン楽器で作曲当時の奏法を用いる」ケースには合わないし、なんと呼んだものかとずーっと考えています、ぼんやりと。いい呼称があったらご教示ください。本気でお願いします。

レイフ・オヴェ・アンスネスは年末の「クラシック・ハイライト2016」で同時期のリサイタルでの演奏が放送されていましたが、信頼のおけるピアニストなのできっといい演奏をしてくれているのだろう、と。そういえばシューマンの協奏曲、N響は少し前にカティア・ブニアティシヴィリが演奏してましたよね(思い出しただけで、まったく違う演奏だろうなってことは想像に難くないです。ええ)。

なお、先週に続いて「コンサートプラス」枠で仲道郁代さんが現在のピアノと「作曲された当時のピアノ」でショパンを弾き分けています。昨年聴いたモーツァルトでも感じられた、フォルテピアノのときの仲道郁代さんの雄弁ぶりがなかなか楽しめるものになっているかと。いえ、私があまりピアノという楽器を得意としていないせいもあるんですけど(笑)。

以上簡単ではありますが放送情報でした。ではまた。

※なお、この週はプレミアムシアターの放送はありません(1/9未明にウィーン・フィルのニューイヤーコンサート再放送をした分、プレミアムステージの放送が一週遅れとなった関係です)

※追記
とっても簡単な感想ですが、「アンスネスとジンマンの組合せはいい」という前提で「アンスネスと、モダンとピリオドの仲道の聴き比べも興味深い」という楽しみができると思いました。
N響はアルト・トロンボーンのみ「ジンマン編成」でしたけど、最近いらっしゃらないノリントンさんの代わりにピリオド寄りの演奏をしてくれると嬉しいなと。彼のほうがレパートリーは広いから招聘しやすいのでしょうし。・とはいえデイヴィッド・ジンマンも81歳とか、能う限りでいらしていただければ幸いに思う次第であります。

アントン・ナヌート死去

こんにちは。千葉です。

ニュースです。


1月13日付で記事が出ていますので、日本にはなかなか届かなかった、と申し上げるべきかもしれません。スロヴェニアのマエストロは数多くの(本当に!)録音を残しながら、その活動の実態がほとんどわからなかった故、レコーディング用の仮名ではないかと疑われたりしていた時期が長くありました。最晩年に、ということにはなってしまいましたが2009年の紀尾井シンフォニエッタ東京(現在は紀尾井ホール室内管弦楽団)への客演でその実像が明らかになりました。

…ですが、謎の指揮者扱いされていた時代の録音の再評価にはまだ至らず、それはこれからの課題となるのでしょう。合掌。

せっかくなので何か、彼の指揮姿でもないかと探してみたのですが、今のところこれしか見つけられていません。若きピアニスト、アレクサンダー・ガジェヴとのベートーヴェンで、その勇姿を偲んでいただければと。


では本日はこれにて、ごきげんよう。

読みました:「孤独な祝祭 佐々木忠次」

こんにちは。千葉です。

年末年始に読み終えた本の感想です。


東京バレエ団を、そして日本舞台芸術振興会(以下、NBSと表記)を長年率いた佐々木忠次氏の評伝です。今年の四月末に亡くなられて、その訃報は世界が衝撃として受け止めたことでしょう。もしかすると、日本国内でのそれ以上に。

彼だからなし得た東京バレエ団の成長、そして数々の世界的な音楽家、ダンサー、振付師の招聘は本書の副題である”バレエとオペラで世界と闘った日本人”のままです。その戦いの生涯を、生い立ちから若き日の裏方仕事時代、そして今年に至る長い戦いの日々をこうして知ることで、どうしてもあれやこれやと考えてしまいます、それこそ自分の卑小さから現在のクラシック音楽受容のあり方まで。

どうしてそうなってしまうかと言えば、ひとつには佐々木氏が生涯になされたことの大きさがあるでしょう。佐々木氏が成し遂げた引っ越し公演の存在感の大きさはちょっと表現しにくいです。長年の取組かなって実現したミラノ・スカラ座の来日公演はカルロス・クライバーも愛好したたぐいの音盤(ストレートには書けません)でおなじみですし、リアルタイムの記憶ではウィーン国立歌劇場の「薔薇の騎士」は仙台から羨望の眼差しで見ていたものです(その直前のウィーン公演に、友人が卒業旅行で行ったと自慢されたときはさすがに温厚な私も以下八文字自粛)。
この「現地でも高い評価を受けた公演を最高レヴェルのキャスト、指揮者による上演で日本に持ってくる」スタイルを確立した偉業だけでも一人の生涯には大きすぎるほどの功績でしょう。そこに加えて東京バレエ団の現在に至る道程があるのだから、クラシック音楽界隈にいる私の生涯では何十回分に当たりますやら。と、つい我が身に引き当ててしまうのです。「日本のインプレサリオ」と呼ばれたほどの偉人であるのだから、自分と比べる必要など本当はないのだけれど、本書を読むとついそういう事を考えてしまう。思うに、本書が佐々木氏の生い立ちや若き日についていきいきと描写してくれているから、一個人としての佐々木氏を知ることができて、それゆえに自分個人と引き比べてしまうのでしょう。

そして現在を考えてしまうのは、佐々木氏の活躍した時代を見てしまえば否応なく、と言わざるを得ない。若き日の舞台監督、美術担当時代の同僚が栗山昌良氏や妹尾河童氏らであること、そしてその時期を踏まえれば、その時代は近年再評価が進む「三人の会」と同時期であることに気付かされます。音楽ファンとして、つい著名な作曲家や演奏家を軸に受容史を見てしまいがちなのだけれど、当然そこには彼らとともに舞台を作ったスタッフがいたわけで。そこで共有されていた理想、熱があったから、実際には知らない「あの頃」に輝きを感じてしまう※。かつて夢見られた最高の舞台へのヴィジョンを、今の私たちは共有できているのか?そう問わざるをえないのです。

※いまはその熱がない!なんて言いたいわけではないのです。おそらくは前提となる条件が違う時代をかんたんに比べてしまうのはいくらなんでもアンフェアですし。私たちは過去の時代に行われた試行錯誤の中の最良の部分だけを見て憧れてしまったりするし、現在の良くない部分に落胆するあまり美点に気づけなかったりする、そういうものなんだと思うっすよ。

おそらくは、そうならなかった現在への怒りが、佐々木氏晩年のエッセイなどに現れていたのだと思えば、かつてNBS NEWSに掲載されていたエッセイを毒舌的なそれとして消費してしまった自分の浅さが如何にも恥ずかしい。強すぎる正論の強さは時に笑いに転化するものではあるけれど、当時も本旨を取り違えていたとは思わないけれど、どうにも自分の力不足への反省になっちゃうんですよ。それだけ、佐々木氏の見ていた世界が高く美しかった、ということだとわかってはいるのですが。生きてるうちは精進するしかないですね、ええ。その程度しか学べないのかと言われると「はいごめんなさい」としか言えない小物の感想はそんなところでございます。

****************

この本を読んでいた年末年始、彼が育てた東京バレエ団は第31次海外公演として、ベルギーで「第九交響曲」の上演を行っていました。もう佐々木氏も、モーリス・ベジャールもいないけれど、記念碑的作品の里帰りを大成功させています。

この喝采を聴いて感じたものを言葉にするならば、「何かを彼らから受け取ったと思うならば、何かの形で次に伝えるしかない」ということになりますでしょうか。それを彼ら彼女らのように理想的な形ではできないまでも、できることをするしかない。最近はそう思わされることが増えてきてそこに年齢を感じますが、それに見合わない非力がなんとも情けない…と、また反省に戻ってしまいました。それだけ大きい存在の方だったのだ、と千葉は感じているのだとご理解いただければ幸いです。

佐々木忠次氏の生涯から千葉はこんなふうに、何か課題を受け取ったように感じていますが、きっと読まれた方それぞれに別の何かを受け取られることと思います。昨今ありがちな「日本すごい」的なものとはまったく違う、「佐々木忠次凄い」(敬称略)としか言いようのない彼の生涯を知って、そして東京バレエ団NBSという彼が遺した事業と今後も長くつきあっていけるならば我々受け手も幸せであろう、そんなことをしみじみと感じる読後からしばらく経っての感想でありました。

※なお、本書を読み進める中で千葉がメモした内容も残しておきました。目次代わりにでもご参照ください>リンクはこちら

本日は前説も後説もなしでおしまいです。ではまた、ごきげんよう。

2017年1月13日金曜日

ハンブルクに新ホール「エルプフィルハーモニー」誕生

こんにちは。千葉です。

ニュースの話をします。でもその前に少し前置きを。

今年も来日する(2015年以来)、かつてハンブルク北ドイツ放送交響楽団と呼ばれていたNDRエルプフィルハーモニー管弦楽団の活躍は少なからぬファンの皆さまがご存知でしょう。ハンス・シュミット=イッセルシュテットが育て、かつてはギュンター・ヴァントのオーケストラとして、その後トーマス・ヘンゲルブロックのオーケストラとして活躍を続けるこのオーケストラは、今年首席客演指揮者を務めるクシシュトフ・ウルバンスキと来日して各地で演奏会を行います。詳しくはリンク先でどうぞ。

****************

で、ここからが本題。
そのオーケストラが本拠地とする新ホールが、1月11日に開場しています。なんでも、かなりの工期遅れと予算オーヴァーがあったらしいのだけれど(ガーディアンの記事参照)、できあがったホールは美しく音響も非常に良さそう。いわゆるワインヤード型のホールは曲線で構成された客席のラインこそ違えど、どこか我等の誇りミューザ川崎シンフォニーホールに似ているような、気もしたりしなかったり(Kitaraのほうが似てる!などのご意見はご自身でご自由にお楽しみください)。日本の誇る(しつこい)永田音響設計の仕事である以上、どこか似て感じられるのは自然なことかもしれませんけれど。ケント・ナガノ氏はすでにその音響を評して「世界最高」とまで言っているようなので、今度来日された際にはオーケストラの皆さまに誰か聴いてください、エルプフィルハーモニーVSミューザ川崎シンフォニーホールの結果を(笑)。(ちなみに、今度の来日の際にウルバンスキと縁のあるオーケストラ同士で交流するとかしないとか…)


でね。それだけなら別に記事にしなくてもいいかなって思っていたんですが。オープニング・コンサートのプログラムがかっこよすぎて、ぜひ紹介したいなって思った次第なのです。

開館初日となった11日のプログラムは、途中に挨拶などをはさみながら以下の曲目が演奏されています。

ベートーヴェン:「プロメテウスの創造物」序曲 op. 43
メンデルスゾーン:「ルイ・ブラス」序曲 op. 95
ブラームス:交響曲第二番 ニ長調 op. 73より 終楽章

その模様はこんな感じで紹介されています。



偉い人がご挨拶したりするのはドイツでも同じなんですね、とか思ったり、曲目にハンブルクですねえ、とか「プロメテウス」かあなるほどなあ、とか感じたり。

で、もっと注目すべきは二日目、昨晩の公演です。

ブリテン:オウィディウスによる六つの変容 Op.49より パン(オーボエ独奏)
デュティユー:「瞬間の神秘(Mystere de l'Instant)」より Appels, Echos und Prismes(24の弦楽器、ツィンバロンと打楽器のための)
カヴァリエリ:「ラ・ペレグリーナ」より Dalle piu alte sfere(カウンターテナー)
B.A.ツィンマーマン:大管弦楽のための前奏曲「フォトプトシス」
J.プレトリウス:五声と通奏低音のためのモテット(声楽アンサンブル)
ロルフ・リーバーマン:Furioso(管弦楽)
カッチーニ:「新音楽」より わが麗しのアマリッリ(カウンターテナー)
メシアン:トゥーランガリーラ交響曲より フィナーレ(ピアノ、オンド・マルトノと管弦楽)
- Pause -
ワーグナー:「パルジファル」より 第一幕への前奏曲
リーム:Reminiszenz
ベートーヴェン:交響曲第九番 ニ短調 op. 125より 第四楽章

ということでですね、オーボエ一本からコンサートは始まり、20世紀以降のオーケストラ作品の合間に様々な編成の声楽(それもいわゆる古楽作品)を配した前半、後半はワーグナーからリーム、そしていわゆる第九で〆るという趣向を凝らしまくった開幕公演だったようなんですよ。その上カウンターテナーはフィリップ・ジャルスキー、第九のソリストにはブリン・ターフェルほか(本当はハルテロスとカウフマンも予定されてたみたい)と、開幕を祝うのにこれ以上何かができるのか?ってくらいの充実ぶりですよ。リームの新作もこの公演のための委嘱作品・初演のようですし。

で、何が素晴らしいってこのコンサート、全篇がYouTubeで公開されてるんですよ、もう。






前半の演奏を見ればおわかりいただけるとおり、この人達はこの会場をどう使ってどんなことをしてやろうかと、初手から攻めている。この姿勢、見習いたいものですよ(その姿勢を披露する機会が自分にはないような気もするが)。

おそらくこのホールとは兄弟姉妹関係にあると言えるだろう各地のホールの中でも、もっとも創造的なスタートを切ったハンブルクのエルプフィルハーモニー、そしてそこを拠点に活躍するNDRエルプフィルハーモニー管弦楽団、注目ですよ。

というニュース紹介の記事にございました。来日公演、東京はBunkamuraなのかあ…と思いつつおしまい。ではまた、ごきげんよう。


NHK交響楽団 新シーズンプログラム発表

こんにちは。千葉です。

今日は新シーズンの発表が続きました。こちらはサイトでのリリースというかたちになりましたが、きっと全プログラムが放送で視聴できるだろうNHK交響楽団の定期演奏会ですから、気になる方もさぞ多いことでしょう。先日ご案内した「おんな城主 直虎」でもおなじみ(まだ一回しかやってないから!)、パーヴォ・ヤルヴィも2017年9月、2018年2月&5月に登場しますしね!


パーヴォ時代が始まって、指揮者もソリストも豪華になったような気がするのは私だけではございますまい。いやそれ以前から有名どころの指揮者やソリストは登場していましたが、ここまえスキのないラインアップは彼の就任以来ではないかなと。
もしかすると「放送オケに求められるプログラムや、公共団体との関係あればこそ可能な取組に欠けるのではないか?」とか言えなくもないかなと思わなくもないかもしれませんが、オーケストラの活動は定期演奏会だけではないわけなので、そこはそれということで。

個人的な感触ベースで申しますなら、「20世紀音楽増えてるなあ、これ実演か放送で体験できるのはありがたいなあ」と思います。パーヴォさんならみんな大好き(偏見)マーラーとショスタコーヴィチの第七番とか(それぞれ2017年9月の開幕はショスタコーヴィチ、2018年最初のパーヴォさん定期がマーラー)、バルトークづくしとか(2017年9月、でもB定期だからまずチケット手に入らないので放送待ち)、いま一度エストニアとフィンランドの近さを確認したくなるシベリウスの「四つの伝説」(2018年5月、しかも前半にテツラフでベートーヴェン)あたりはありがたいことですよ、ほんと。

でも私イチオシは2018年5月のB定期(チケット…)、ストラヴィンスキープログラムですね。素晴らしい。何がいいって、三大バレエじゃないところが!!(笑)いえね、冗談ではないのですよMonsieur(ポワロ風)。
思うに、パーヴォさんのドライヴ上手があればこそ聴ける「新古典時代のストラヴィンスキー」があるのではないか、と思うのですよ。デュトワさんとは違う時期のストラヴィンスキーで面白さを伝えてくれるんじゃないかなって。
詳しく見てみましょうか。「ミューズの神を率いるアポロ」(まずラヴライヴのアレに変換するのをやめてくれないかGoogle日本語入力ちゃんよ)は「悲しきワルツ」をあれだけ動的に聴かせる彼ならただの”白いバレエへのオマージュ”では終わらないことだろうし、表情豊かな「カルタ遊び」も楽しく聴けるはず。何より「三楽章の交響曲」はねえ、オケの能力が高くないと楽しめない曲だから可能なら会場で聴いてみたい、実演の情報量で確認したいことがたくさんある(でも無理だろうけど)。ああB定期よ。でも放送されるだろう、という安心感が素晴らしい。ありがたいことでござんす。

他の指揮者の公演ならトゥガン・ソヒエフのプロコフィエフ(2017年10月)、ダーヴィト・アフカムのプログラム(2018年1月、ロレンツォ・ヴィオッティが東響で演奏したプログラムに半分くらい似てる)、安心と信頼のブロムシュテットさん(2018年4月)あたりが注目でしょうか。ここでも個人的な推しを申し上げますならば、2018年6月のウラディーミル・アシュケナージ指揮の公演で、ヤナーチェクの狂詩曲「タラス・ブーリバ」が演奏されること、ですかね!(つかむところが変な人)


ということで紹介と言うか「新シーズンプログラム斯く読めり」はここまで。ではまた、ごきげんよう。

2017年1月12日木曜日

新国立劇場新シーズンラインアップ発表

こんにちは。千葉です。

ニュースのお知らせですよ。

●新国立劇場 2017/2018シーズン オペラ ラインアップ

19日の『カルメン』で2017年の公演も始まる新国立劇場の、10月以降の公演予定が発表されました、というお話です。

シリーズ完結となる「神々の黄昏」で開幕し、細川俊夫の「松風」(2010)日本初演、そして「フィデリオ」新制作でシーズンの締めは「トスカ」。開場20周年公演としてゼッフィレッリの「アイーダ」再演(前出「フィデリオ」も同じ扱い)、とのことです。キャスト他について、注目と思われるポイントのみ、以下に日程と併せて書き出します(コメントはしません)。くれぐれも、詳しくは新国立劇場のサイトでご覧くださいませ

・ワーグナー:楽劇「ニーベルングの指環」第3日「神々の黄昏」[新制作] 2017年10月 ※読売日本交響楽団
指揮:飯守泰次郎 ジークフリート:ステファン・グールド ブリュンヒルデ:ペトラ・ラング ハーゲン:アルベルト・ペーゼンドルファー ヴァルトラウテ:ヴァルトラウト・マイヤー  ほか

・ヴェルディ:「椿姫」 2017年11月◆
指揮:リッカルド・フリッツァ ヴィオレッタ:イリーナ・ルング アルフレード:アントニオ・ポーリ ジェルモン:レヴェンテ・モルナール  ほか

・R.シュトラウス:「ばらの騎士」 2017年11~12月◆
指揮:ウルフ・シルマー 元帥夫人:リカルダ・メルベート オックス男爵:ユルゲン・リン オクタヴィアン:ダニエラ・シンドラム ゾフィー:ゴルダ・シュルツ  ほか

・J.シュトラウスII:「こうもり」 2018年1月●
指揮:アルフレート・エシュヴェ ガブリエル・フォン・アイゼンシュタイン:アドリアン・エレート ロザリンデ:エリーザベト・フレヒル フランク:フランク・ブレース オルロフスキー公爵:ステファニー・アタナソフ ファルケ博士:クレメンス・ザンダー アデーレ:ジェニファー・オローリン  ほか

・細川俊夫:「松風」 [新制作/日本初演(2011世界初演)] 2018年2月●
指揮:デヴィッド・ロバート・コールマン 演出・振付:サシャ・ヴァルツ 松風:イルゼ・エーレンス 村雨:シャルロッテ・ヘッレカント 旅の僧:ダグラス・ウィリアムズ須磨の浦人:萩原潤(※キャストは全四名)

・オッフェンバック:「ホフマン物語」 2018年2~3月◆
指揮:セバスティアン・ルラン ホフマン:ディミトリー・コルチャック ニクラウス/ミューズ:レナ・ベルキナ リンドルフ/コッペリウス/ミラクル/ダペルトゥット:トマス・コニエチュニー オランピア:安井陽子 アントニア:砂川涼子  ほか

・ドニゼッティ:「愛の妙薬」 2018年3月◆
指揮:ギレルモ・ガルシア・カルヴォ アディーナ:ルーシー・クロウ ネモリーノ:サイミール・ピルグ  ほか

・ヴェルディ:「アイーダ」 2018年4月◆ ※新国立劇場開場20周年記念特別公演
指揮:パオロ・カリャニーニ アイーダ:イム・セギョン ラダメス:ナジミディン・マヴリャーノフ アムネリス:エカテリーナ・セメンチュク アモナズロ:堀内康雄 ランフィス:妻屋秀和 エジプト国王:久保田真澄  ほか

・ベートーヴェン:「フィデリオ」[新制作] 2018年5~6月● ※新国立劇場開場20周年記念特別公演
指揮;飯守泰次郎 演出:カタリーナ・ワーグナー ドラマツルグ:ダニエル・ウェーバー ドン・ピツァロ:ゲルト・グロホフスキー フロレスタン:ステファン・グールド レオノーレ:リカルダ・メルベート ロッコ:妻屋秀和 マルツェリーネ:石橋栄実  ほか

・プッチーニ:「トスカ」 2018年7月◆ ※びわ湖ホールとの提携上演
指揮:ロレンツォ・ヴィオッティ トスカ:キャサリン・ネーグルスタッド カヴァラドッシ:ホルヘ・デ・レオン スカルピア:クラウディオ・スグーラ  ほか

・平成29年度 新国立劇場 地域招聘オペラ公演 ~びわ湖ホール
・サリヴァン:「ミカド」 2017年8月※日本センチュリー交響楽団/中ホール公演
指揮:園田隆一郎 演出・訳詞:中村敬一 ミカド:松森治 ナンキプー:二塚直紀 ココ:迎肇聡 プーバー:竹内直紀  ほか

なお、出演オーケストラについて、団体名を表記したもの以外は「◆:東京フィルハーモニー交響楽団 ●:東京交響楽団」として表記した。




なお、飯守泰次郎 オペラ芸術監督による2017/2018シーズン演目説明会が、1月22日(日)のオペラ「カルメン」上演後にオペラパレスの客席で行われます。14:00開演で約3時間40分の上演時間とのことですから、17時過ぎ目安で会場入りされるのがよろしいのかなと。

ではまた、ごきげんよう。

書きました:第18回 都響マエストロビジット

こんにちは。千葉です。

また寄稿させていただいています。ちょっといつもとは毛色の違う、アウトリーチ活動のレポートです。


クラシック音楽に限らず文化的行為は、現代においては演奏など本筋の活動をしていればいいというものではない、なんて言い方をよくされます。オーケストラはその最たるもののひとつでしょう。社会的な存在であることからも演奏以外のなにかを多く要求される、なかなか難しい立ち位置になっています。自治体が有する財産として長年活躍してきた団体を切り捨てることがコストの面だけから判断して優秀な自治体運営とみなされる時代ですから、「何々をしていれば安泰」なんてことはもうない。演奏の質も、アウトリーチの内容も、その時点の”成果”でのみ期待され測られ、場合によっては捨てられる。

ここをお読みいただいている方でもそうした判断を肯定される人もいらっしゃるのだろうと予想します。しかしながら、物事にはそれぞれに”射程”というものがある。トレーディングのように瞬間の判断で利益損益が明確になるものもあれば、世代を超える長い時間をかけてようやく成果が示されるものもある。
たとえば、教育はどうですか。「その場で子どもたちが教わった内容を理解した」イコール成果ではありませんよね?(この論理で考えるなら「教育において予備校こそが正しいあり方である」という結論になる。いや、学校運営において教師と事務職を分離しているのは正しいと思いますけど)教育を受ける期間を終わって何年も経って、社会に彼ら彼女らの影響が出始めてからようやく当時子どもたちだった人々の教育について、事実に基づいた評価ができるようになる。
例がひとつだと足りませんかそうですか。ではインフラの評価はどうですか、数万年単位の後始末が必要となる発電方法とかいりませんかそうですか。

冗談はさておいて、物事にはそれぞれに射程があるのです、という話。音楽において演奏はその場で生まれでて消えていくものだけれど、そのための”時間”は演奏時間どころではない。作曲家がその音楽を作り出す時間、演奏家がその力量を身につけるまでの時間などがあって成し遂げられた事々があって、はじめて演奏会が開かれるための準備ができる。出演者が決まってプログラムが編まれで、リハーサルをしてコンサートを開くことができる。時間だけではなく、多くの投資がすでに行われて文化的活動は行われているわけで。いまはまず前提としての職能や資産の話をしましたが、根本のところには価値判断が含まれているのだから、話を簡単にしては議論そのものが成り立たないのです。シンプル・イズ・ベスト、ではない物事はあるのです。あたりまえですけど。

こういう「前提について問う」内容のことを申し上げれば、記事やこの文を公開する前から「そもそも論かよ」「考えがまとまってから書け」というご意見反論が私ごときでも想像できます。そりゃあ当然です、答えがあるなら知りたいです。ですが、こうして問うことそのものに意味があると思うから千葉は書くのです、それが無意味だとは思いません。試行錯誤の前段で施行/思考を止めてしまったらそれこそ無意味ではありませんか?問いからしか始まらないもの、あるんですよ。

話がそれました。記事の中でも書きましたが、都響は演奏と教育を共に重視することで、過去からの蓄積に向き合いつつ現在の聴衆に応え、そしてさらに存在してくれるかもしれない未来の聴衆、音楽家の育成に取り組んでいます。その働きは多面的な評価ができるものと考えますので、願わくはお読みいただいた皆さまがそれぞれに考えていただければと思います。千葉個人としては、クラシック音楽を無用物扱いするたぐいの価値観に同意することはありません、とのみ。あとは自分が書く文章から、あり得べき姿や希望を読み取っていただければ幸いです。

****************

話が長くなりすぎた気がしてきましたのでひとまずこの文章はおしまい。最後に、こういうことを考える時私の脳内を駆け巡る曲をご紹介して〆ましょう。
長く一線で活躍するミュージシャンで、自作をかなり大事にして代表盤は何度となくリイシューし、ベストアルバムに収録しているピーター・ガブリエルですが(バラカンさん風にゲイブリエルとは呼んでなかった世代)、いくつかのサウンドトラックでの仕事はバラけたままになっている印象があります。「Wall-E」のエンディング曲とか、どこかのベスト盤に入れてくれないかなって。そんな曲の中に、新世紀を迎えるにあたってロンドンで上演された「OVO: The Millenium Show」の最後の曲、「Make Tomorrow」があります。シングルカットもされていないし、英国外では知られていないパフォーマンスなんだとは思うんですけど、すっごく好きな曲なんですよねこれ。そんなに英語に堪能でもないし、ポップスはほとんど歌詞を聞いていない私でも、この曲は耳に残ったし、今も繰返し聴く曲のひとつなんですよね。「Making Tomorrow,Today」と繰り返すフレーズが耳に残る、いい曲なのでひとつ動画でも…と探したけどYouTubeには公式のもない。前述のとおりシングルカットされていないからミュージックヴィデオもない(昔はプロモーションヴィデオ、ヴィデオクリップとか言ったもんじゃよ)。惜しいなー口惜しいなー…ということでリンク先で聴いてみてね。自己責任で。

ということでこの記事はここまで。ではまた、ごきげんよう。


2017年1月5日木曜日

ジョルジュ・プレートル死去

こんにちは。千葉です。

自分の備忘ともなるのだけれど、個人としてのニュースの受け取りを書いておくことにも何か意味があるかもしれない。新年に心を入れ替えたシリーズ、悲しいお知らせから。

●追悼ジョルジュ・プレートル(1924.8.14~2017.1.4)(タワーレコード・オンラインのリリースへリンク)

自分でも書こうかと考えたけれど、すぐに見つかったこれがとてもよくまとめられた年譜で、彼のキャリアを振り返ることができます。92歳は大往生かと存じます、お疲れ様でした。合掌。

****************

2010年のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団との来日公演を聴かれた方はやはりその思い出が大きいのだろうし、千葉より上の世代の皆さまであればマリア・カラスとの「カルメン」が印象深いのだろうなあ、と思います。来日公演の影響というのは受容を考える上では見逃せない大きな要素だと考えていますし、日本のレコード会社は代表盤とされるものがあればそれを執拗に売り続けてきましたから、この反応は当然といえば当然のことです。
そのどちらでもない千葉は、彼の若き日の数多くのプーランク作品の録音が強く印象に残っています。あまりにも普通なので前段の偉そうな物言いが急に恥ずかしくなってきました。なんかすみません。

冗談はそのへんまでにして。プーランク作品、彼の録音を聴くまで上手く受け取れていなかった記憶があります。良く言えば変幻自在、悪く言えば正体不明で。最初に聴いたのが「Gloria」(バーンスタインの録音)だったものだから、その後バレエ・リュスのための作品を聴いて軽妙というのかなんというのか、冗談と真摯な告白が同居しているような音楽に戸惑うばかり。いやはや、私は根が真面目なんだなあ(おい)。

だから冗談はそのへんにして(命令)。それでも仕事の関係もあってプーランク作品に当たりをつけられたほうがいい感じになったものだから(10年以上前の話です)、いろいろ調べたものですよ。フランス6人組についていろいろ調べて、結局のところ「オネゲル、いいよね」に落ちついてしまったのは誤算でしたが(おいおい)。少しでも調べればすぐ「プーランク作品はプレートルがいいよ」という評判に行き当たります。自分の中では「マリア・カラスとレコーディングした人」だから大昔の人、って認識でしたが※、確認してみれば録音はステレオだしフランスのオーケストラ他による録音だしいいかな、と思いましてモノオペラ「人間の声」と管弦楽曲集(二枚組)を買い求めて、理解したものです。「ああ、ここには冗談も真剣な話も同時にあるのだな」と。それを知的に、ある意味で冷たく腑分けするのではない、楽しさも重さも綯い交ぜに表現されたプレートルの演奏だから受け取れたものがあったのだろう、いま振り返ればそう思えます。

※これは私の悪癖なのだけれど、”歴史化”された物事に関係する人との距離感がダメだったんです。今は周辺事実の確認をしたりしてある程度の時代のイメージを作れますが、かつては全然ダメで。「ビートルズのメンバーはもう亡くなっている(くらい昔の人たちだ)」と思っていた話は前にしたことがあるような気がします…

ただ自分にはその次の機会がなかった。そこは本当に惜しまれるけれど、これはもはや取り返しの付かない話なのでこれ以上は考えまい。ブーレーズとアーノンクールの死を経て、最近ではそう考えるようになりました。録音や映像は残されたのだから、そこで彼の成し遂げたことを思う機会を作ることでその死を悼もう、と考えるわけです。
そうて振り返れば、プーランク録音に向き合ってみると当時の彼は30~40代の、若手と言える世代の指揮者だったはず(もっとも、大戦の影響で彼の上の世代があまりいなかったから、彼らの世代は比較的出世も早かったことも忘れないように)。晩年の容姿でその音楽を測るのが愚かしいことだ、というのは禿頭になってからのシベリウスを作曲家のイメージにしてしまうことで勉強済みだろうよ君。で、そんなことを考えている時に流れてきたこのTweetを見てください。


こういう感じの若い指揮者時代にカラスと共演して、プーランクに自作を任されて、と活動していたわけですよ(ちなみに、このTweetにあるとおり、昨年のピエール・ブーレーズと同日の死となったわけですが、ブーレーズも若き日には言論的喧嘩番長みたいなところがあったのを思い出しておいてもいいでしょう。人は変わるものよ←何様だ)。
ウィーン・フィルのニューイヤーコンサートで再び脚光を浴びるまでにも様々なポストで活躍し、2017年1月5日に亡くなった、その92年の生涯を想像するのは半分も生きていない自分にはまだ難しい。なにより、実演に触れられなかっらから、晩年に向けてより独特なスタイルになっていった彼の音楽を十分に受け取れている気がしない(プーランク作品の頃は非常に端正で若い演奏をされてます、ジョルジュ・プレートル。写真と演奏からは、現在のアンドレア・バッティストーニのような演奏だったのでは?なんて想像も可能ではないかなと思ったり)。

無念ではあるけれど、受け止めるしかない事実です。現実的に考えればすべての素晴らしい音楽家を聴くことができないから、と嘆くのも傲慢でしょう、だから千葉は訃報に接してまず申し上げられるのはただ一言、合掌のみ。なのです。



この動画は2009年に開催された、フェニーチェ歌劇場での演奏会から「タンホイザー」序曲とバッカナール、そしてロッシーニの「ウィリアム・テル」序曲です(フェニーチェ歌劇場YouTubeチャンネルより)。いま一度、合掌。

****************

ニュースを受けての雑感なものだから、長くなってしまっていけません。このあたりもおいおい改善するよう努めますね、ということで本日はこれにて。ではまた、ごきげんよう。


2017年1月4日水曜日

1月8日に「N響 第1847回 定期公演」放送

こんにちは。千葉です。

放送予定のご案内ですよ。1月8日(日) 21:00からEテレです。


指揮:デーヴィッド・ジンマン
クラリネット:マルティン・フレスト ※
管弦楽:NHK交響楽団

モーツァルト:クラリネット協奏曲 イ長調 K.622 ※
グレツキ:交響曲第三番 作品36 「悲歌のシンフォニー」

「悲歌のシンフォニー」、もはや懐かしくすら感じますね。1933年生まれで2011年に没したポーランドの作曲家、ヘンリク・グレツキの、…なんと評したらいいのかな。大ヒット曲、とかそんな具合に捉えられていた時期がかつてあったのですじゃよ(よぼよぼ)。

生年から考えればWWIIが終わってもまだ十代だった彼、成長の過程で普通にいわゆる前衛音楽を学んだ、どこにでもいる普通の作曲家だったんだ!(どこのラノベだマンガだてめえいい加減にしろ)ってなヘンリク・グレツキが1976年に発表した、静かな作品が時を経て一躍注目されることになったのは1992年のこと。その経緯をものすごくザックリ言うと「新譜が英語圏のラジオで放送されたところ反響が大きく、ヘヴィー・ローテーションとなって」どうのこうの、的な展開だったとか。



Nonesuchレーベルからの世界的大ヒットは、きっと今に至るあのレーベルの独自路線を支えたことだろうと思えば別段悪い話ではないのです(昔はよく「小説ヒット!これで売れない本が出せる!」なんて編集の方が言っていたとか聞きますしね)。でも個人的な感想を申しますなら、正直当時は「長い曲なんでしょ?どこ聴いていいと思ったのかな」と感じてしまってピンときませんでしたが、実は今でもよくわかりません(笑)。後のグレゴリオ聖歌(1993)、「アダージョ・カラヤン」(1995)の先駆だったと捉えて考えてみると何かわかりますかしら(と書いて結論は先送り。っていうか、出さないかもしれない、結論なんて)。

そのブームで、美しい歌声が賞賛されたドーン・アップショウの影に隠れた感も無きにしもあらずだったデイヴィッド・ジンマンが、近年共演を重ねるNHK交響楽団に客演して同曲を披露したのがこの演奏会です。シュトラウス、ベートーヴェンにシューマンなどで「廉価版ながら充実したシリーズ」で評判を上げた先駆者の一人としてクラシック音楽好きにはおなじみとなった彼の、ある意味忘れられた出世作は果たして現在どう響いたことでしょうか、というのがこの演奏会の見どころのひとつでしょう。

****************

そして前半に置かれたモーツァルトは、レコーディングであまり踏み込まなかった感があるジンマンよりもむしろ独奏者を聴くべきでしょう、知っている人は知っている名手マルティン・フレストの登場です。私はクラシック倶楽部で放送されたリサイタルで彼を知って(あの枠はよく再放送がありますので、気になる方はこまめにチェックしてくださいまし)、また別のプログラムで聴きたいものだ、と思っていましたからこの機会はありがたいです。
能書きはいいからどんな人よ?はっきり書きなさいな!と思われた方にはこの動画をご覧いただければとお答えします。コープランドの協奏曲、楽しく聴けるいい曲ですし、彼のフットワークの軽いスタイルにもよく合っていると思いますので。




こうも自在な演奏ができる彼を、一度でも見聴きしてから忘れることができますでしょうか?(反語←受験生ジョーク)彼のモーツァルト、楽しみにしてます。


※我らが公共放送様、YouTubeに置かれた動画は埋め込み禁止だし、拡散のしようがないよねってのが正直な感想ではあるのです。消え物にしたいのでしょうか、とかつい勘ぐっちゃう(現実的には権利関係である可能性が高そうですから、邪推しても仕方ないんですけど)。

***************

なお、同日深夜のニューイヤー・コンサートの再放送については各位ご確認くださいませ(元旦放送の記事はこちら)。演奏については「若いのう」「アレグロの上手さもさりながら、会場で聴けば弱音部分への導き方が巧そう」といった様子見の枠を超えないものになります、あしからず。

以上、簡単に書くつもりで長くなっちゃったご案内でした。この辺の長短のバランス、書きながら見つけていくのでそのあたりはご容赦くださいませ。ではまた、ごきげんよう。

※感想というか気づいたポイントを。
マルティン・フレスト、どんな楽器を使うかなと思っていましたが今回はバセット・クラリネットを選択して楽譜どおりの音高で演奏したんですね。通常のクラリネットでは出せない下の音域を折り返してオクターヴ上げた演奏ではどうしても音楽の流れが少し不自然になりますから、当然の選択かもしれません。それにしてもいい音してますわ、フレスト。

2017年1月3日火曜日

書きました:ノット&東響「コジ・ファン・トゥッテ」レヴュー(12/9)

こんにちは。千葉です。

昨年中の公演の記事も紹介できていなかったりします。なんとも申し訳ないことです。まとめ記事も現在鋭意作成中だったりしますが、これは「終わっていない年を振り返ろうなどと、僭越なことだとは思わんかね君?」という主張ゆえです(半分本当)。

それはさておいて、寄稿した記事はこちら。

●ノット×東響。快進撃のコンビネーションによる《コジ·ファン·トゥッテ》ミューザ川崎の美しい響きを楽しむように歌う、サー·トーマス·アレンをはじめとした歌手たち

公演直前レポートでもすでに好感触だった本公演、大成功裏に終了しました。たった二回だけの、幸福な記憶を残して。「楽しかったなあ」という感触を、具体的だったり音楽的だったりの面に目配りして書くとこんなふうになりました。

あとで聞いた話では、11日の公演では二組のカップルはドン・アルフォンソが種明かしをしたところですぐ仲睦まじく関係を修復されたそうで(グリエルモが真っ先にフィオルディリージを抱きしめてたとかなんとか)。この点でも示されたとおり、この少し不道徳なオペラを演出家が固めたのではない即興的な解釈で楽しめたこの公演は本当に貴重な機会となりました。一流の歌手たちの演技の、振り幅の大きさというか、懐に隠し持った技の豊富さというか、そういったものに感心させられたことであります(歌が良かったのはリハーサルの段階で明白、あとは実際の”舞台”でどう魅せてくれるか、が焦点でした)。記事には写真も多く入っていますので、ぜひ御覧いただいて昨年の数多くのコンサートの中でも最高の公演の記憶と戯れてくださいませ。

なお、「コジ・ファン・トゥッテ」については以前紹介した岡田暁生氏の著作での紹介がなかなかよかったです。啓蒙主義時代のオペラは、その時代においてあったとおりに受け取ることでより楽しめる、常日頃そう考える私からいま一度この本もオススメします。



****************

昨年の秋冬には、なぜかダ・ポンテ三部作が首都圏で大流行していました。ウィーン国立歌劇場の「フィガロの結婚」はムーティの指揮のもと見事な演奏だったと伝え聞いておりますし、まだ書けていないものもいくつかありました。それらの中でも、これは充実したものだったよ、とお伝えできるのは本当に喜ばしいことです。

記事中にも書いておきましたが、ノット&東響@ミューザ川崎シンフォニーホールの「ダ・ポンテ・オペラ三部作」は、今年第二回として「ドン・ジョヴァンニ」の上演が決まっています。ありがたいありがたい。また機会があれば、その公演も紹介させていただきたい、とここに立候補のご挨拶をさせていただく次第です(ぺこり)。

加えて偉そうに申し上げます。ザルツブルク市と友好都市である川崎市の看板イヴェントに成長させてほしいなあ、などと行政にも期待したく思います。こういういい公演がこの先も期待できる、という現状をうまく告知しないと「音楽のまち・かわさき」はいつまでもお題目のままではないか、と。モーツァルト・マチネともども、市をあげて広く周知に努めていただきたいと切望する次第であります!(熱狂的な拍手が聞こえる←おい)

…でもダ・ポンテ三部作、ウィーン時代だからザルツブルク市とは関係ないんですけどね、という酷いオチが付いたところでこの記事はおしまい。ではまた、ごきげんよう。



2017年1月1日日曜日

書きました:NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」のテーマ音楽発表記者会見

こんにちは。千葉です。

新年も通常営業です。回顧記事のためのネタを拾いながらニューイヤーを聴いていました(あまり画面は見ていない)。もの凄くドライヴが上手い若手、ってモータスポーツの世界ではそれが全盛期なんですけれど、クラシックだとそこから先がまた大変よねえ、という自分には極めることのない高みを望遠しつつ考えたりしていました。

さて、話変わって本題。「真田丸」ロスの皆さまもそうでない方も、まずはこっちも見てくださいよ如何ですか。というお話。


タイトル通り、1月8日から始まる新大河ドラマのテーマ音楽発表記者会見のレポートです。ふたりとも菅野よう子その人も作品もほめていて、今回の曲については口を揃えて「フランス印象派っぽい」との指摘でした。8日からオープニングを聴いては彼らのこの笑顔を思い出してくださいねみなさん(笑)。


大河ドラマのテーマ曲は一曲が短くて(放送されているあれがフルサイズなんです)、単独で聴くには少々食い足りない思いもありますけれど、今回の「大河ドラマ紀行」には五嶋みどりも登場するという豪華版です。あわせ技一本ということで如何ですかクラシック音楽を聴かれるみなさん。ドラマの見どころは、NHKがYouTubeに載せていますのでそれぞれご確認あれ(埋め込みできないのが惜しい)。

なお、かく言う私めははじめの何話かはどの大河でも見てますよ(最後まで見たのは、最近だと「平清盛」と「真田丸」かなあ…という程度の視聴者です)。そんな私ですから、若干の「真田丸」ロスの気配がございます。それ故、明日朝の総集編は見ないといかんか、いや録画して保存すべきかと只今ハードディスク様の空きと相談中です。間に合う方はスケジュールをチェックして明日に備えられたし>詳しくはリンク先で

以上お知らせでした。テーマ曲は明るい響きが新鮮なものでしたので、続くドラマが面白いものになるといいですね、と心よりお祈りしつつこのあたりにて、ごきげんよう。

※追記。
うちのハードディスクレコーダ様の仕様の関係で、最後の一分位が切れてしまっていることに先ほど気がついて少し絶望しましたよ>「真田丸」総集編。どうせなら数分間の「おんな城主 直虎」告知を入れてくれればよかったのに、これで見て消すコースになってハードディスクは余裕ができたよ(そのくらいのがっかり感)。
もしかしなくても、の感想なのですが。内野聖陽演じた徳川家康の表情を丹念に追っていくと、このドラマのもう一本の軸が浮き上がるような気がしました。録画を残されている方、ブルーレイ購入済みの方、その線で一周できると思いますYO!(笑)




1月3日「第60回NHKニューイヤーオペラコンサート」放送

こんにちは。千葉です。

新年も明けて(これが年賀の挨拶←おい)、これまた恒例の番組が放送です。たぶんこのシリーズはこれで一段落のはず。月末までは。


1月3日にNHKホールで開催される恒例のコンサート、その恒例の放送です。ここでも登場される東京フィル様にはほんとうに頭が下がります。お疲れ様です!(何様だ自分)

それにしても。ヘンデルにはバッハ・コレギウム・ジャパン、というのもそろそろ定番になりつつあるのでしょうか。その勢いでどうですか、公共放送様がスポンサードしてBCJのヘンデル:オラトリオシリーズとか始めちゃうのは(無責任な提案)。

なお、チケットは完売とのことですから、皆さまご自宅でお楽しみくださいませ、FMで音声のみ、ってのもありではないかと。なお詳しい出演者や曲目はリンク先でご確認ください。

※1月14日(土) 15:00より再放送があります

2016年も終わりましたので、振り返り記事もちょっと用意しますし、寄稿した文章の紹介も引き続き掲載していきます。本年もよろしく、ではごきげんよう。