2017年6月21日水曜日

6/25(26)「ピエール・ブーレーズ・ホール こけら落とし演奏会/イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団 創立80周年記念演奏会」放送

こんにちは。千葉です。
6月最後のNHK BSプレミアムシアターは25日24時からの放送です。

ドイツは昨今の風潮に抗う気概を、期せずして示すかのように新ホールを立て続けに開館していますね。
(期せずして、というのはホール建設にかかるタイムラグを考えて、今現在の文化軽視の風潮を予測していたわけではないでしょう、ということですよ)

●ピエール・ブーレーズ・ホール  こけら落とし演奏会/ズービン・メータ指揮 イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団  創立80周年記念演奏会

先日放送もされたハンブルクのエルプフィルハーモニーはオーケストラが存分に活躍できるサイズの大ホールでしたが、ベルリンに新設されたピエール・ブーレーズ・ザールは室内楽用の小~中サイズのホールです。
その杮落としコンサートは、独奏から十数人のアンサンブルまで、声楽に管楽器にピアノに弦楽アンサンブルにと編成的に、そしてモーツァルトからヴィトマンまで200年以上の時代的に幅のあるプログラムは如何にも挑戦的なもの、ここにもドイツの理想主義的スタンスが見えるような気がします。気のせいかもしれませんが。

さて、このホール独特の形状は、ブーレーズが嫌った”無自覚な伝統の踏襲”(マーラーが言うところの”伝統”ってやつですね)を演奏家の配置でも行えるように、という遺志を継いでいるように思えます。中に入ってみるとこんな感じ、というおそらくは現地の方の動画がありましたのでご覧ください。



なお、このホールについてのニュースや演奏の動画はYouTubeを「Boulez Saal」で検索すればいくらでも出てきますから、ここでは一つ方向の違う動画をばご紹介。


ベルリン・フィルのホルンセクションで活躍するサラ・ウィリスのYouTubeチャンネルで見つけました。今をときめいていらっしゃる永田音響設計の豊田泰久さんが、このホールについての短いインタヴューを受けていらっしゃいます。チケットの話、なかなか真似できませんよこれ…(笑)

なお、せっかくですのでこのホールについて先日少しまとめた記事もご参照くださいませ(実はこのスケジュールを確認して、書きかけの記事を慌てて仕上げた←おいおい)。

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前半が生まれたばかりのホールの紹介で、後半は昨年創設から80年を迎えたイスラエル・フィルハーモニー管弦楽団の記念演奏会です。記念年一連の演奏会の、マンフレート・ホーネックの指揮による別公演の模様はイスラエル・フィルのYouTube公式チャンネルにあげられています。



実はまだ実演では聴けていない私の場合、イスラエル・フィルといえばバーンスタインが若き日にパレスチナ・フィル時代のこのオーケストラとのエピソードがまず思い出されるものだったりします。そうですね、それがWWII直後の話なのだから、それだけの時間をこのオーケストラが生きてきたわけですね。しみじみ。
いつかその音を聴く機会を得られますように、と思いながらまずはこの演奏会を拝見するとしましょうそうしましょう。

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生まれたての会場のデビュタントと老舗となったオーケストラの記念碑、そしてプログラムも前半の多様な作品によるものに対してこちらはオール・ベートーヴェンと、この日は前後半で見事な好対照となっております。どちらも存分にお楽しみあれ。

ではご案内はこれにて。ごきげんよう。

2017年6月18日日曜日

6/18(19)「パリ・オペラ座バレエ『夏の夜の夢』/ニューヨーク・シティ・バレエ in パリ『バランシン・ガラ 』」放送

こんにちは。千葉です。
6月18日深夜24時からのNHK BSプレミアムシアターはバレエの週です。それも超がつく、バランシン祭り!20世紀のクラシック音楽に触れていれば否応なく出会うこの名前、ちゃんとその舞台で認識するにはいい機会ですよ!

●パリ・オペラ座バレエ『夏の夜の夢』/ニューヨーク・シティ・バレエ in パリ『バランシン・ガラ 』


前半はパリ・オペラ座の「真夏の夜の夢」です。これも映画館上映されてるんですね、知らなかった(完全にバレエが守備範囲外に出てしまっている自覚)。ニューヨーク・シティ・バレエのために1962年に振り付けられた、メンデルスゾーンの劇音楽全曲による、堂々二時間弱の大作です。


そして後半は彼の後半生におけるホーム、自ら設立したニューヨーク・シティ・バレエがパリで代表的な小品をまとめて上演したガラです。大作と小品、好コントラストの番組となるのでは。

ということで簡単ですがご案内でした。ではまた、ごきげんよう。

6/18「新日本フィルハーモニー交響楽団演奏会」放送

こんにちは。千葉です。
次回6月18日のEテレ「クラシック音楽館」は、新日本フィルアワーです(語呂悪い)。

●新日本フィルハーモニー交響楽団演奏会

以前来シーズンの会見記事を紹介した際にも言及しておりました、上岡敏之指揮する新日本フィルハーモニー交響楽団の演奏会が放送されます。以前の記事で興味を持ってくださった皆さん!チャンスですよ!

以前、その演奏時間の長さから怪異な演奏に類いするものとしてアピールされた感のある上岡敏之のブルックナーですが、その演奏を聴かれた方ならちゃんと理由あってあの演奏時間になったこと、表現のために選択されたテンポであることを理解されたことでしょう。この放送でより多くの方がそれを知ってくださるなら私としても喜ばしいことです。


こちらは3月の演奏会を前にしたコメントですが、彼のスタンスを知る上でいい動画だと感じておりますので、ぜひ。

以上ご案内でした。ではまた、ごきげんよう。

2017年6月12日月曜日

ノット指揮 東響によるコンサートオペラ「ドン・ジョヴァンニ」キャスト発表!

こんにちは。千葉です。注目の公演情報ですよ。


昨年末に「コジ・ファン・トゥッテ」が大好評裏に開催されたノット&東響@ミューザ川崎シンフォニーホールのコンサートオペラ第二弾は「ドン・ジョヴァンニ」です。やったね!(この作品も大好きなので)

注目のキャストが15日に発表されました。以下のメンバーがこの12月、ミューザ川崎シンフォニーホールに登場します。

ドン・ジョヴァンニ:ミヒャエル・ナジ
Don Giovanni: Michael Nagy

レポレッロ:シェンヤン(沈羊)
Leporello: Shenyang

ドンナ・アンナ:ローラ・エイキン
Donna Anna: Laura Aikin

ドン・オッターヴィオ:アンドリュー・ステープルズ
Don Ottavio: Andrew Staples

騎士長:リアン・リ
Commendatore: Liang Li

ドンナ・エルヴィーラ:エンジェル・ブルー
Donna Elvira: Angel Blue

マゼット:クレシミル・ストラジャナッツ
Masetto: Kresimir Strazanac

ツェルリーナ:カロリーナ・ウルリヒ
Zerlina: Carolina Ullrich

現時点ではドン・ジョヴァンニの彼はラトルの「魔笛」にも出ていたなあ、とかマゼット役のストラジャナッツが「ワルシャワの生き残り」&ドイツ・レクイエムのときに来た彼ですね、くらいしか書けませんし。
※ドン・オッターヴィオ決定につき更新しています。

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なおチケットの発売は6月ですが、この公演を含む三公演を「スペシャル・オーケストラ・シリーズ」として3月に先行販売します。大好きなコンセルトヘボウ管がついに新首席指揮者ダニエレ・ガッティとの来日を果たす公演、そしてサー・サイモン・ラトル最後のベルリン・フィルとのツアー、そしてこの「ドン・ジョヴァンニ」を確実に入手する好機ですよ!(垂涎のあまり涙目で書いています)
※追記。ベルリン・フィル完売しました(あたりまえですが、いちおうね)

ということで12月10日(日)は今から予定を開けておいてくださいね!というご案内でした。ではまた、ごきげんよう。

※今年はなんと一回しかステージがない!という悲しい現実がございます。昨年は二回だったから、初日ミューザの感想を受けて池袋に行かれた方もいらしたことでしょうに…
であれば仕方がないのです、ぜひ12月10日に!チケットはこちらで!

2017年6月11日日曜日

6/11(12)「ドキュメンタリー『カラヤンのフェスティバル』/ザルツブルク復活祭音楽祭2017  楽劇『ワルキューレ』」放送

こんにちは。千葉です。
6月のNHK BS「プレミアムシアター」は11日深夜24時から、この番組でスタートです。

●ドキュメンタリー『カラヤンのフェスティバル』/ザルツブルク復活祭音楽祭2017  楽劇『ワルキューレ』

4月に開催された、50年目のザルツブルク復活祭音楽祭から、目玉公演として話題となった「ヴァルキューレ」が早速登場です。昨年日本でも「ラインの黄金」を披露したティーレマンとシュターツカペレ・ドレスデンの演奏は大好評でしたから、この放送を心待ちにされていた方も多いのでは。
ザルツブルク復活祭音楽祭の50周年を記念して、そのオリジンに遡るプロジェクトとしてカラヤン肝いりで取り上げられた最初の演目「ヴァルキューレ」を、当時のデザイン、演出で上演するプロジェクトは、もちろん指揮者も違うし、再演とはいえ往時のスタッフもいない、リ=プロダクションとでも言うべきものなのでしょう。

そして近年再評価というより「歴史化」が進むヘルベルト・フォン・カラヤンとこの音楽祭についてのドキュメンタリーも併せて放送されます。そのキャリアを考えればまずは何よりもオペラのマエストロだったはずのヘルベルト・フォン・カラヤンについて知る、いい機会となるのではないでしょうか。




近年なにかと「リング」づいてる日本向け、ということもないでしょうけれど(笑)、タイミング的にはバッチリです。ぜひ。

ということでご案内はおしまい。ではまた、ごきげんよう。


6/11「N響定期公演 第1859回/<音楽の力で復興を ~熊本地震・1年~>」放送

こんにちは。千葉です。
大好評話題騒然(少し盛りました)のファビオ・ルイージ登場公演、11日放送の「クラシック音楽館」に続きます。

●N響 第1859回 定期公演

指揮:ファビオ・ルイージ
ピアノ:ベアトリーチェ・ラナ
管弦楽:NHK交響楽団

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第一番 ハ長調 Op.15
ブラームス:交響曲第四番 ホ短調 Op.98

2017年4月21日、NHKホールでの公演です。

4日に放送されたマーラー他のプログラムも演奏会の時点で好評でしたが、こちらのコンサートもソリストともども好評だったことを思い出します。期待しましょう。

クライバーン国際ピアノコンクールの配信でベアトリーチェ・ラナの演奏をお楽しみください(2013年の二位入賞を受けて翌年に行われたリサイタル)。

そしてこの日は番組の終わりに、<音楽の力で復興を ~熊本地震・1年~>として、以前放送情報を紹介した熊本でのチャリティコンサートの短いドキュメンタリーが放送されます。各地の音楽家が集う模様、リハーサル、そして聴衆たる熊本の皆さまの反応を見せていただければ、と。

なおこちらは演奏の3ヶ月前の山下一史さんのコメントです。事前のお心具合も併せてどうぞ。


ではご案内はこれにて。ではまた、ごきげんよう。

2017年6月8日木曜日

NHK「あなたの記憶に残る名演」リクエスト募集中

こんにちは。千葉です。

いつもご紹介しておりますNHK Eテレの看板番組(盛りすぎ)「クラシック音楽館」のサイトを拝見しましたら、こんな募集がございましたので私からもご紹介を。

●「あなたの記憶に残る名演」リクエスト募集

「NHKのアーカイブスに残る貴重な名演奏を映像と共にお送りする「あなたの記憶に残る名演」を、今年秋に放送する予定」、伴って「1950年代から、今年の演奏会に至るまで、テレビでもう一度見たい思い出の名演奏を募集」。サイトから引いたこの二文で十分ですね(笑)。受付期間は特に記載されていませんので、リクエストするなら早めのほうがいいんじゃないかなと思いますよ。

昔、よく冗談本気で「俺、NHKに就職してアーカイヴ漁ってやるんだ」と言っていた先輩がいましたけれど、彼は元気でいらっしゃいますかしら。1950年代だとウィーン・フィルの初来日(指揮はパウル・ヒンデミット!)やアンチェルとチェコ・フィル、イタリア歌劇団あたりからですね。そうそう、ストラヴィンスキーの来日公演も忘れちゃいけない。
60年代となれば大阪国際フェスティバルもありますし、バーンスタインの来日もありうるのかな。そして80年代からはオペラの引っ越し公演や各地の名門オーケストラの来日公演が続き、90年代にはあれか、ブーレーズフェスティヴァルか。いやあ懐かしいなあ往年の名演(半分以上嘘、さすがにそんなに早く生まれてません)。新しいところは現在まで、ということですからそちらについては最近の放送を思い出せ、ということですね。

少なくない動画(もちろんグレイな、ってかアウトなやつ)がYouTubeにあるのに、私たちが正しいルートでアクセスできない公共放送の貴重すぎるアーカイヴ、こういう機会に何かしらの整理と公開が進んでくれたらいいなと思います。

そして皆さん!1995年のブーレーズフェスティヴァルをリクエストしてくださいよろしくお願いします!!きっと今ならあの時よりずーっと上手く受け取れて楽しめるはずなんでうよろしくお願いします(完全に自分のためのお願い)。

以上ご案内と切実なお願い(笑)でした。ではまた、ごきげんよう。

2017年6月4日日曜日

6/4「N響 第1858回 定期公演」放送

こんにちは。千葉です。
6月最初の「クラシック音楽館」は4日の21時より、N響定期公演の放送です。

●N響 第1858回 定期公演

指揮:ファビオ・ルイージ
ヴァイオリン:ニコライ・ズナイダー
管弦楽:NHK交響楽団

アイネム:カプリッチョ Op.2
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 Op.64
マーラー:交響曲第一番 ニ長調

2017年4月15日、NHKホールでの公演です。

まあ、私の場合はメインのマーラーにどうしても注目してしまうわけですが、今回の演奏会の場合は特にもマーラーに、それも第三楽章の冒頭に注目です。もっと正確に言うと、冒頭の三小節目のコントラバス!(細かすぎ)
ファビオ・ルイージは全集録音こそないものの、マーラーをよく取り上げる指揮者です。メガネの感じがちょっと似てるからでしょうか?という冗談はさておいて、ドレスデン・シュターツカペレとの来日公演で第二番を披露したこともありますから、彼のマーラーには馴染みのある方も多いことでしょう。

ちなみに、こちらは約10年前のドレスデンでの演奏。


今回のN響との公演は果たしてどうなりましたことか、楽しみにしています。

ではご案内はこれにて、ごきげんよう。

※追記。なお、今回ファビオ・ルイージはこの演奏会のための来日で多忙な日程の中、昭和音楽大学でオペラアリアのマスタークラスで若者たちを指導してくれています。その記事を書いていますので、よろしければそちらもぜひご覧くださいませ
※さらに追記。録画をようやく見ました。素晴らしいですね、マーラー。このドラマの示し方、さすがだとしか申しようがありません。近年サイトウ・キネン・オーケストラの常連になっている理由も理解できようという素晴らしい演奏に、俄然今年の第九番が聴きたくなってまいりました(先立つものがないけれど)。
また、ニコライ・ズナイダーのアプローチも実に妥当なもので、引き締まったいいメンデルスゾーンでした。一曲目については、もう少しシャープな造形を意識していたんじゃないかなあ、という感じが残りましたがこれはいい演奏会でした(もちろん、放送からの判断ですよ)、

この盤では「大地の歌」を担当していますね、ファビオ・ルイージ。

2017年6月3日土曜日

サー・ジェフリー・テイト(指揮者)死去

こんにちは。千葉です。
またしても訃報が届いてしまいました。

●Sir Jeffrey Tate: Conductor with spina bifida dies at 74

サー・ジェフリー・テイトが6月2日に亡くなられました。訪れていたアカデミア・カッラーラで心臓麻痺のため、とのこと。ベルガモの新聞が第一報だったようですが、騎士への敬意を表して英国放送協会のニュースへリンクさせていただきました。1943年生まれの彼ですが、騎士への叙勲は今年のことだったのですね、少々意外でした。

生まれついての二分脊椎症故に椅子に座って指揮するスタイルでおなじみの彼は、日本ではやはり「デイム・ミツコの共演者」としてよく知られた、と紹介すべきでしょうか。自らの難病故か、はじめ医師を目指した(実際その資格を持っています)彼の音楽家としてのキャリアは、サー・ゲオルグ・ショルティ時代のロイヤル・オペラ・ハウスで、コレペティトールとして始まっているんですね。そして1985年にはイギリス室内管弦楽団最初の首席指揮者に就任、内田光子とのモーツァルトはこの時期の記録です。その後もロッテルダム・フィル、サン・カルロ劇場、そしてハンブルク交響楽団と活躍を続けていました。合掌。

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ハンブルク交響楽団のYouTube公式チャンネルより。

こうして指揮者の仕事の半分以上を占めているだろうリハーサルが見られるようになったことは、取材して記事にしたりもする私には商売的に問題ではございますが喜ばしいことです。当日ステージに立つまでのコミュニケーションにこそ、指揮者の成し遂げたことがある、とまでは言いませんけれど、彼を悼む意味でもう一つ、英国音楽のリハーサルを貼っておきます。



先日お伝えしたばかりのイルジー・ビエロフラーヴェクもそうでしたが1940年代生まれのマエストロの死には、大往生と申し上げられない気持ちが残ります。ですが彼らはこのように音楽を遺してくれていますから、それらをいま一度見つけていくのが何よりの供養というものでしょう。改めて合掌。

ではまた、ごきげんよう。


2017年6月2日金曜日

ピエール・ブーレーズ・ザール開館

こんにちは。千葉です。
いささか旧聞ですが、ドイツの新ホールのご紹介を。その名も…

●Pierre Boulez Saal



ピエール・ブーレーズの音楽的探求がいわゆる音符の領域に留まらなかったことはご存じの方も多いでしょう。こと楽器にしても伝統的なアコースティック楽器にこだわらず空間的音楽を電子的手法も用いて探求したことは、1995年のブーレーズ・フェスティヴァルやその後の来日公演で経験された方も多いでしょう。「二重の影の対話」はもはや定番的作品ですからお聴きになった方も多いのでは。


そんな彼は、演奏会場についても可能性の探求を旨としていました。”作品に適した会場がない”という言い方は普通に考えればなにか顛倒したものであるように思えますけれど、探求こそが彼の求めたものである以上、その対象から会場を外すことこそ不徹底なのです。私のドリルは(自重)、とは彼は言いませんでしたけどね。
彼の探求のホームと言えばパリのIRCAM、そしてアンサンブル・アンテルコンタンポランがでしたけれど、その没後に彼の遺志を継ごうかと名乗りを上げるかのように、独創的なデザインのコンサートホールがドイツ、ベルリンに生まれた、というわけです。そのホールの誕生に大きく関わったのがダニエル・バレンボイム、と聞けば生前のブーレーズとの交友に加えて、彼のコンセプトに基づいて作られたピアノのことも思い出されますね。以前からそういった、新しいものを怖れない心性をお持ちである、ということなのでしょう。
(でもこれは書いておかないと。ダニエル・バレンボイムはその著作などでいわゆる古楽奏法に対して非常に攻撃的で、そこがちょっと理解できないところが私にはありました。ですが、古楽的アプローチが「Authentic」であるとアピールをしすぎたばかりに、いわゆるモダン楽器演奏が紛い物であるかのように言いすぎてしまったことが、彼の古楽への忌避感を作ってしまった面があっただろうか、と今は考えています。どなたかインタヴューされる方、ぜひ聞いてみてください←怒られるかもしれませんけど←無責任)



バレンボイムが主導して作り出したベルリンの新しい室内楽用ホールのインテリアは、これまた一風変わったものです。

楕円形を基調にしたこのホールをデザインしたのはフランク・ゲーリー。コンサートホールでは、ロサンゼルス・フィルハーモニックの本拠地ウォルト・ディズニー・コンサートホールのデザインでも知られていますね。ちなみにこんな感じのホールです。



曲線の使い方が代表作であるビルバオのグッゲンハイム美術館にも通じるところがある、と言えましょうか。

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しかしながら、私は建築の人ではないのでこの二つのホールに共通する別の要素を指摘すべきなのです。そう、音の面から見てみましょう。
ピエール・ブーレーズ・ザールとウォルト・ディズニー・コンサートホール、そして先日紹介したエルプフィルハーモニー(エルフィって呼ばれてるそうです)や日本各地の、名ホールとして日々愛されている会場の音響設計が毎度おなじみ永田音響設計の豊田泰久さんなんですね。その仕事ぶりは先日放送されたエルフィ(さっそく使ってみた)のドキュメンタリーでも垣間見られましたが、壁面パネルの隙間やシートのクッションにまで言及する徹底が、ミューザ川崎シンフォニーホールやサントリーホールなどの音響を生むものなのだなあ、と大いに感心したものであります。
パリのフィルハーモニーも含め、それら新ホールの実力の程は、それこそ当地にしばし滞在して複数の公演を聴いてみないとわからないとは思うのですが、そんな機会はないでしょうなあ(火星の運河が見えるほどに望遠)。せめて、放送や録音でそのサウンドに触れられる機会が訪れますように…

最後はちょっと切ない感じのオチを付けてしまいましたが、紹介はとりあえずここまでです。ではまた、ごきげんよう。

2017年6月1日木曜日

イルジー・ビエロフラーヴェク(指揮者)死去

こんにちは。千葉です。
またしても訃報が届いてしまいました。

●Zemřel šéfdirigent České filharmonie Jiří Bělohlávek, bylo mu 71 let

敬意を表してチェコの通信社へのリンクをまずは用意しました。1946年生まれのチェコのマエストロ、イルジー・ビエロフラーヴェクが亡くなられた、とのことです。彼が音楽監督を務めていたチェコ・フィルハーモニー管弦楽団も、このように伝えております。


最近続いた訃報の多くは、WWII前の生まれの方々の、大往生と感じられるものが多かった分だけ、この訃報は衝撃的なものに思われます。合掌。


近影はこのような感じだったのですね。この秋にも来日の予定でしたのに。

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私が彼を知った頃は、まだ若手扱いだったような気がします。チェコ・フィルハーモニー管弦楽団の来日公演ではヴァーツラフ・ノイマンのアシストのような感じで帯同してくる二番手というか、後継者候補なのかな?という感じでした。それは80年代の終わりのことで、いま年齢を考えれば当時の彼は40代、対してノイマンは60代だったのだから、この受け取りは自然なことではありましょう。ブルノ、プラハ(交響楽団)で活躍していた、というのも二番手っぽい印象を与えたところがあったかも、しれません。たぶん初めて聴いた彼の演奏は、その頃のレコーディングでマルティヌーのバレエ「この世で一番強い者」だったのではないかな、と思います。

その後冷戦が終わって彼はチェコ・フィルのポストに就くのだけれど、オーケストラはそれまでの自国出身者を首席指揮者に据える体制を変えた時期があって(読響のポストも務めたゲルト・アルブレヒトが就任していた時期をご記憶の方も多いでしょう)、彼のキャリアは私以外の多くのクラシック音楽ファンも予想したような”チェコを代表する音楽家として、チェコ・フィルとともに成熟していく”道のりではなくなりました。
とはいえ、その頃には彼も50代に差し掛かろうという時期ですから、チェコ・フィルからの退任は同時に彼の国際的キャリアの本格的な始まりでもあった、とも言えましょう。BBC交響楽団との仕事は、2007年のプロムスで”英国人以外で最初のラスト・ナイト指揮者”となったことで歴史に残りますし、METやグラインドボーンでの仕事も記憶に残り続けることでしょう。
日本でも、1974年の初来日以来共演を重ねて首席客演指揮者をも務めた日本フィルハーモニー交響楽団での活躍などもありました。


2013年3月の、ドバイへのツアーの際に収録されたゲネプロでしょうか、スメタナの「わが祖国」より「ヴルタヴァ(モルダウ)」です。これを見る限りでは、引き締まったテンポでよく歌わせる彼らしい演奏をされていますから、この訃報にはやはり早すぎる、との思いを抱かざるを得ません。あらためて、合掌。



ではご案内は以上といたします。ではまた、ごきげんよう。

※追記。文中でも触れました、この秋に予定されているチェコ・フィルハーモニー管弦楽団の来日公演は、ペトル・アルトリフテル(アルトリヒテル)が指揮をする、と招聘元ジャパンアーツより発表されました。

書きました:ファビオ・ルイージ オペラ・アリア公開マスタークラス(昭和音楽大学)

こんにちは。千葉です。
寄稿した記事のご紹介、遅くなってしまいましたがぜひ!

●「ギリギリまで自分の演奏を追い込んで。その先にあなたの表現が見えてくるでしょう。」―――ファビオ・ルイージ オペラアリア・マスタークラス

昭和音楽大学のテアトロ・ジーリオ・ショウワで開催された、ファビオ・ルイージによるオペラアリアの公開マスタークラス、レポートを寄稿しました。
お一人だけ具体的にどうレクチャーが進められたかを書いていますが、それはどの受講者にも基本的にやり方が同じだったというのが一つめの理由。そこから杉山さんを選んだのはレクチャーの中での反応の良さ(記事参照ください)、そして写真を見ていただけるとおり、彼が自らピアノに座った場面などを紹介できるのもポイントが高かったです(笑)。

うーんこれだけだとわかんないよ、と思われる方にはマスタークラスの雰囲気だけでも伝わればと思います、こんな感じなんです。



こちらはジュリアード音楽院での似た趣向のマスタークラスですね。もっとも、新百合ヶ丘でのファビオ・ルイージは質問を投げかけて受講生自身に考えさせて、そこからアリアをよりドラマティックにしていったものですからこれはまだまだ序盤、ほんの入口という感じがします。「コジ・ファン・トゥッテ」の頭の方をレクチャーしているけれど、きっとこの先でどんどんとキャラクターたちの関係性をどう示すのか、そこにどのような工夫がこめられているのか、モーツァルトを歌うとはどういうことか、どんどんと深められていったのだろうな、と昭和音楽大学でのレクチャーを拝見した私は思う次第であります。興味のある方はMedici.tvで探してみるといいかもしれません。

こうした公開講座は、もちろん音楽家の皆さまへの刺激となるためのものでしょうけれど、私たち聴き手は「音楽家はどう作品にアプローチし、表現を生み出すのか」を知る機会ともなります。記事中にも書きましたが、またこうした機会があればぜひ拝見したいものです。そうそう、記事に書いたと言えばオーケストラの公開リハーサルなんかもいいですよね…

と、夢が広がりますが最近はちゃんと取材できない状態でなんとも申し訳ない感じです。また機会があればいくらでも行きたい気持ちはありますので、またの機会を、とのみ申し上げておきますね。

ではまた、ごきげんよう。