2019年10月11日金曜日

東京交響楽団 2020年シーズンラインナップ記者会見開催!

本拠地ミューザ川崎シンフォニーホールの開館15周年を祝って演奏された「グレの歌」の記念碑的な演奏の記憶も冷めぬ10月8日(火)、ホールの市民交流室を会場に来る2020年シーズン、ノット&東響のシーズン7、2020年主催公演ラインナップを発表する会見が行われた。

いくらでも語ってくれそうな勢いのノット監督。

すでに多くの音楽ファンが注目しているところではあるけれど、この日も冒頭に大野順二 楽団長が「現役時代、ワーグナーの全幕演奏はぜひ取り組みたい、しかしなかなか実現できないものだった」と語り始めたところから、やはり定期公演で取り上げるワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」が中心的な話題となった。もちろん、現在は新国立劇場での上演を担当することもあるわけだが、演奏会形式などで多くのオペラ作品を上演する中で「いつかワーグナーを、万全の形で」という思いが楽団にあったことは強く伝わった。
続いて話し始めたノット監督は「まだ「グレの歌」が抜けていない」と笑いながらも、来る「トリスタンとイゾルデ」上演について多面的に語ってくれた。ダ・ポンテ三部作以来となるコンサート形式での上演については「ドラマを言葉で紡いでくれる歌手が近くにいるコンチェルタンテ上演は好きです。以前取り上げた作品、たとえば「ジークフリート」では題名役の歌手がオーケストラに向かって歌い出し、その場が歌手とオーケストラの対話のようになったこともありました」として、演奏会形式で音楽家同士が近い距離で上演することのメリットを語る。
シェーンベルク作品にも色濃く残るワーグナーの影響を示せること、東響と「グレの歌」を経験する中で、mf、mpのような音量で歌手を支えながら音楽的に表現することを学べたこと、監督が語ったそれらは音として私たち聴衆にも届けられることだろう。
ノット監督とのプログラミングに大きな役割を果たす辻 事務室長からも「ノット監督はご子息にトリスタンと名付けるほどこの作品を愛している」というエピソードが紹介され、「トリスタン」はノット&東響がいつかは取り上げなければいけない作品だと考えていたことが明かされる。ノット監督との長期契約のち折返しに差し掛かる来年取り上げるこの作品への、楽団全体の期待、高揚感が強く感じられた。「浄夜」「グレの歌」を経験したノット&東響が取り組む「ペレアスとメリザンド」と、ノット監督最愛の作品の一つ「トリスタンとイゾルデ」のコラボは、これまでの7シーズンの蓄積が響き合う一つの頂点を形作ることだろう。

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それ以外の演奏会については、チャイコフスキーの交響曲第六番、そして日本人作曲家の作品について興味深いエピソードが語られたので紹介しよう。

東響ファン、ミューザ川崎シンフォニーホールのファンの間で話題の「Take a Risk!」Tシャツに何度も何度もサインしながらノット監督はこう思ったのだという。「こんなにも多くの人たちが自分たちの演奏を聴いて、こんなに喜んでくれているのに自分は来場してくれる皆さんのことを何も知らないな…」と。そこでファンとのちょっとした懇親会を開いて、生の聴き手からリクエストを求めたのだという。そこで聞かれた「マエストロのロシア音楽が聴きたい」という声に答えて、けっして短くはないキャリアの中で一度も演奏したことがなかった(!)チャイコフスキーの「悲愴」を取り上げることにしたというのだ。もちろんノット監督だから、プログラムはオール・チャイコフスキーのようなものにはならず、ムソルグスキーからベリオを経てチャイコフスキーに至る、という民族性を軸にした独特で興味深いものになったわけだが。
また同じ懇親会では辻氏からもう一つ興味深い話があった。ノット監督と日本人作曲家の作品を取り上げること自体は以前にも行っているし(細川俊夫、藤倉大)、酒井健治は「コンポージアム」の際に審査員としてノット監督が見出した面もあるからすぐに提案は受け入れられた。しかし矢代秋雄のピアノ協奏曲についてはノット監督も知らない曲であり、はじめは乗り気ではなかったのだそうだ。しかしその会で直接話す機会を持てたファン各位が矢代作品を熱くプッシュしてくれたこともあって、来シーズンの演奏が決まったのだという。どなたかは存じ上げないけれど、そのノット&東響ファンの方々に感謝と、連帯の挨拶をさせていただきたい。「新しい作品もいいけれど、日本クラシック音楽の歴史を作ってきた、礎となる方の作品をノット監督の指揮で取り上げられることはとてもありがたく思っている」と語る辻氏に、まったくもって心の底から同意である。矢代秋雄とブルックナーがノット監督の元で出会うとき、果たしてそれはどのように響くのか。期待しかない、と申し上げよう。

この日の会見場には、記念碑的演奏が終わってどこか抜けたような雰囲気もあったけれど(いや私だけかもしれない)、もちろん第6シーズンはまだまだ進行中だ。会見の翌日からは週末の定期演奏会&名曲全集のリハーサルも始まる、という。ノット監督の三ヶ月連続登場はまだ始まったばかり、これからもアイヴス&シューベルト、ベルク+マーラー、そして第九と注目の公演が連続する。「東響2019」もまだまだ目が離せないし、 #東響2020 はノット&東響の黄金時代の到来を更に多くの聴衆に知らしめるものになる。本日の会見を受けて私はそう感じている。

(後日、写真の追加、若干の追記を予定しています)

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いくつか余録。
#東響2020」はもっと皆さんで使って国内のオーケストラ、クラシック音楽仲間でもっと盛り上がっていければ、とのことでした。私もこれからは積極的に使っていこうと思います。

また、この会見で「明日からリハーサル開始」と語っていた週末の演奏会については、10/12(土)定期公演の中止が東京交響楽団からアナウンスされています日曜日の公演については現時点では開催の予定とのことですが、来場を予定されている皆様におかれましては、ホームページやSNSで情報収集されることをお勧めします。もちろん、何よりもまずご自身とご家族の安全に配慮なさってくださいませ。

今度こそ最後に、追加の主催公演として、「サエグサシゲアキ80s」が発表された。「逆襲のシャア」!!!!!!!!!!!!!と、私からはエクスクラメーションマーク連打で反応させていただく。

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