2020年6月21日日曜日

かってに予告編 ~東京フィルハーモニー交響楽団 6月定期演奏会

●東京フィルハーモニー交響楽団 6月定期演奏会

2020年6月
  21日(日)15:00開演 会場:Bunkamura オーチャードホール
  22日(月)19:00開演 会場:東京オペラシティコンサートホール
  24日(水)19:00開演 会場:サントリーホール 大ホール

指揮:渡邊一正(東京フィル・レジデントコンダクター)
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

ロッシーニ:歌劇「セビリアの理髪師」序曲
ドヴォルザーク:交響曲第九番 ホ短調 Op.95 『新世界より』

※当初予定のミハイル・プレトニョフ指揮による公演から内容が変更されました

私が東京フィルの公演について、恒例の「かってに予告編」を書くのもほぼ四ヶ月ぶりだ。基本的に聴きに行く予定のコンサートについて、自主的に(きれいな言い方)ご紹介させていただくものだから、要はあのチョン・ミョンフンとの「カルメン」から東京フィルの公演に行けていない、というわけだ。
そのコンサートからの遠ざかりが自分由来であれば仕方のないことだ、実際に地方に住んでいた時期にはコンサートなんてまったく行けなかった。それでも、数多くの演奏会が開かれているのであればいつか放送なり録音なりで触れる機会も出てくるだろう、そう思って耐えることもできた。しかし2020年前半のこの空白はそうではない。日本一多忙な、とも言われる東京フィルハーモニー交響楽団の演奏会が、まったくなかったのだ。3月に予定されていたプレトニョフとの「わが祖国」は8月に延期開催される予定だが、4月に予定されていた佐渡裕によるバーンスタイン・プログラムは公演中止となった。演奏機会が本当に希少な作品を取り上げるはずだったのに。

そしてこの6月定期も、プレトニョフとの演奏会のはずのところ、マエストロ来日不可能のため、またCovid-19対応のガイドラインに沿った形への変更を行った上でなんとか開催される運びとなったわけである。その経緯や対応については、オーケストラからのお知らせを見てほしい。

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ここで私は「自分が伺う予定の定期演奏会」の話しかしていないから、「公演の空白と言っても3月と4月の二つだけ」のように見えてしまったなら、それは大変に申し訳ないが誤解だ。「日本一多忙な」と言われる東京フィルは伊達にそう呼ばれているわけではなく、自身の主催公演に加えてバレエやオペラでの演奏、そして数多くの委託公演に参加しているのだから。皆様も最近よく目にする、アーティストやコンテンツの名を冠した「オーケストラ・コンサート」「シネマコンサート」の存在はご存知だろう、それらの数多くに登場する東京フィルハーモニー交響楽団がこの4ヶ月の間に失った公演の数は相当のものだろうと、聞くまでもなく容易に想像がつく。その影響を直視するのが憚られて、調べることさえも気後れする。
その間に私にできたのはせいぜいが首席指揮者アンドレア・バッティストーニとの新譜「幻想交響曲/舞楽」をダウンロードすることくらいだったので、その無力感たるや。いやそんなことより、音楽の可能性を開花させる機会を奪われた音楽家の皆様の胸中如何ばかりか、そして演奏団体の存続は大丈夫なのか。心配しかできないのがもう、なんとも…


新譜レヴュー、近日お出しします。筆が遅くて申し訳ない。
現時点では「良い録音でこれらの作品が聴けることは幸いである、そしてこれが日本のオーケストラによるものなのだからますます喜ばしい」とのみ。

湿っぽい話が長くて申し訳ありません。この機会を逃すとこの話をしておくタイミングがないのです。演奏活動が部分的にではあっても再開されるから、やっとこの話ができる。私はそう考えています。
幸いなことに、これまでに世界各地の演奏団体の試みが報告されており、合奏については比較的安全に実施できそうな見通しがあるように私見している※。国からの緊急事態宣言が解除された今、演奏会を開くのは自然なことだ。なにせ音楽家には演奏したい思いがありそのための高度に専門的な能力がある。そして私たち聴き手もいつまでも再生環境に左右される配信で満足してはいられない。目の前で生まれる音に出会うために演奏会に足を運ぶことの楽しさを知ってしまえば、演奏会が開かれていない日々がこれ以上続くことを受け入れられましょうか。

※声楽、とくに合唱については東京二期会が7月に演奏会を行うという朗報もあったけれど、ポジティヴな見通しを否定する情報もあり、私については判断を留保させていただきたい。

上述のとおり、演奏会は予定を変更して開催される。プレトニョフが来られない以上、シチェドリンによる「カルメン」とチャイコフスキーの組曲という、彼独自のプログラムは変えるしかないことを残念に思う気持ちがないわけではないけれど、活動再開にあたってこの変更はありなのではないか、とも感じる。かつてないほどの空白を埋めるのに、気心の知れたマエストロを招くのは自然なことだ。そして曲目を見れば、冒頭はオペラを得意とする東京フィルからの久しぶりのご挨拶であり、劇場への愛を示す「セビリアの理髪師」序曲。そして変わってしまった新しい世界への第一歩としてのドヴォルザークの交響曲。うん、いいと思います。

それは私だって「新世界」がアメリカ合衆国を指すことやら民謡や音階を部分的に採用していること等など、もちろん存じておりますが(あやしい)、創作を終えて作者からも時代からも独立した作品にはこういうめぐり合わせの妙、よくあるものです。今このときに体験することでこういう感じ方をする(してしまう)のが受容する側に与えられた自由のひとつなのだから、そこは積極的に楽しめる方を選ぼう、私のスタンスはそういう傾向がありますね…(今気づいたのか)。私のことはさておいて。
いよいよ、6/21から東京フィルハーモニー交響楽団は演奏会を再開します。この日付を埋められる日が来たことを喜び、今度は再びの空白とならぬことをお祈りして本稿を終えましょう。

そうそう、Covid-19の流行のあと、演奏会は音楽家と主催者と、そして聴衆が協力しないと実施すら難しい時代になりました。来場予定の皆様は、必ず団からの対策案内を熟読して、体調に気をつけて会場に向かいましょうね。私からもお願いします。


こうした活動もぜひご覧ください。

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