2012年1月21日土曜日

敷居なんて越えたきゃ越えますよ?


こんにちは。千葉です。

あのう、今朝起きて、ぼんやりとツイッターのタイムラインを眺めていたらこんなニュースに気づきまして。目が覚めるのなんの。


◆3月で終了の長寿番組「N響アワー」の次は、石田衣良が登場!

いやなんか紹介文はポジティヴに書いてるけど、誰が石田衣良さんに(敬称つき)登場してくれって頼んだのよ、クラシック番組に。確かに、彼の人気シリーズ作品でクラシックをちょっとした味付けで使っていたり、某音楽祭で何かの役を担っていたことは千葉でも知ってますよ、ええ。この話がそうね、硬派のN響アワーと並び立つ、軟派のクラシック新番組ノお知らせ、とかだったら自分は見ないけどあってもいいんじゃない、くらいに思えたでしょうね。でもねえ、放送局の名前を冠したオーケストラの地上波での定期番組を廃してしまって、その上で始めるのが、これですか?NHKさま、本当にちゃんと考えた編成ですか、これ?

そもそものところ、N響アワーについてはこれまでブログで言及したこともないような気がするし、Twitterでもツッコミ専門で見ていました、「そこでカットかよ!」的な。そう、この番組は演奏をそのまま流すのではおわかりにならないでしょう?という配慮からかスタジオトークと必要に応じてカットされた演奏によって構成されていました。正直に申し上げて、カットされた演奏を聞いて何を受け取ればいいのか千葉にはわかりませんが(吹奏楽とかの問題はまた別です、機会があればそのへんも)、それでも定期的にオーケストラの演奏がテレビさえあれば誰にでも見られる媒体で放送されている、そのことには大きい意味があったと思います。作曲家が、時代が、演奏家がどうこうと周辺的なことを言ってみても実際の演奏とは別物でしかないのだから。どんなに苦労して作曲された作品でも歴史の闇に消えてしまうこともある、演奏家がどんな人だから演奏がこうなる、なんて連関は特段存在しない(はず)、演奏家の人となりなどなど、そんなことを知らなくても音楽は聴ける。聴いてどう感じるのか、何を考えるのか、何を読み取るのか。そんなシンプルな対峙の仕方で十分なんですよ、他のもろもろの事ごとと同様に。もちろん、作品や演奏のあり方にはそれ相応の文脈が伴っているから、そういうものを知っていたほうがより多くを受け取れるかもはしれないけれど。

翻って、なんですか後番組。
「軽妙なトークを交えながらクラシックの魅力を伝える」って、あのう、演奏を聴いてからの話じゃないの、そういうの。
「毎回、演奏家や作曲家、音楽の生まれた“町”などにスポットをあて、クラシックの意外なおもしろさを紹介」えっと、そういうのはむしろ少し知ってからの話ですよね。いきなりライプツィヒではバッハがどうこう、ザルツブルクにはモーツァルトはあまりいい思い出がなくてどうのこうの、20世紀初頭までは中央ヨーロッパが文化的中心地と言えるものだったので、とかなんとか、別段好きな音楽もなくて聴かされてもピンと来ないでしょう?誰に向けた企画ですかこれ。
「鑑賞するのはオペラ、バレエ、オーケストラ、ピアノ、吹奏楽、合唱などのクラシックのさまざまなジャンル。「クラシックを聞いてみたいけど、何から始めたらいいの?」という人も、気軽に楽しめる内容となっている。」えっと、こういう全部入りで上手く行った話、聴いた覚えがないのだけれど…毎週一時間しかない中で総花的な話題をする時間がどれくらい取れますか?けっきょくはつまみ食いみたいなかたちになってしまって、誰も「気軽に楽しめ」ない、ってオチはもう見たくないのだけれど…(それで失敗したら「まだ敷居が高かったようで」なんてさらに薄められるんでしょう?恐ろしい…)
「また、いま旬の注目アーティストがゲストとしてスタジオに登場し、トークとともにとっておきの一曲を披露する。」すみません、そういう番組、もうありますよね、「スタジオパークからこんにちは」って奴が。ドラマの番宣にならないからクラシックの人は出してはいただけない?そうですかそうですか…

あえて紹介文に粘着的に絡んでみましたけれど、どうなんでしょう、これらが全て「愚かな千葉の難癖だったね、すみませんでした」って手の平を返すことになるような素敵な番組が始まるのかしら?
そう期待できるならいいのだけれど、千葉はかつてプロレスが好きだった少年期に新日本プロレス中継の無残な展開を見せられ、近年はカットされすぎて最期まで見てもレース展開が理解出来ないF1中継につきあわせられ(今年からBSとCSのみで放送なんですって。生放送になるのなら大歓迎ですよ、ほんと…)、バレーボールは退屈な応援合戦になりフィギュアスケートはアナウンサのポエム大会になり…とテレビとのつきあいで好きなモノが変質していく、悲しすぎる展開を何度も見てきましたから、今回もまったくポジティヴな期待が湧きません。というか、正直に申し上げて見なくてもいいかな、としか思えないでいます。

BSではコンサート全曲を放送していますよ!とは言うけれど、深夜帯に早朝にと初めから録画するつもりの人しか見ませんよそんなもの。っていうか、録画機器前提の放送って、ただのアリバイではないのですか?日中にあまり興味のないメジャーリーグベースボールとかNBAとか、あんなに放送されても困るのだけれど…おっと話がそれました(誤解なきよう、千葉は野球は好きですよ。大味なMLBにあまり興味がないだけです)。話を戻して。

どうも、日本のテレビは(と大風呂敷を広げましょう)、眼の前で行われているものの面白さ、素晴らしさをそのままにお茶の間に伝えよう、とは思っていないんだな、と今回のニュースで痛感しました。何かトークバラエティがお好きなんですね、きっと。はぁ。
演奏のカットもあれば、スタジオにいる人の感想でしかないものも流されていたN響アワーだけれど、池辺晋一郎先生や西村朗先生など見識ある人々がやっていればこそ許されたところ、多かったと思うのです。が、今度はクラシックを聞く人(愛好家、ですよね)とクロスオーバー寄りの作曲家によって、紹介したいものはなんなんですか?そもそもららら、ってなんだよ…

と、自分でも意外なほど落胆させられるニュースのお話でした。芸術劇場が残っていれば、こうは思わなかったところなのですが…(千葉はそんなにNHK交響楽団をいいオーケストラだと思っていませんので、「N響アワー」と今はなき「芸術劇場」とから二択でひとつを選べと言われたら迷わず後者を取ります)

以上、ガッカリしたまま今日のところはおしまいです。ではまた。

追記。
書くかどうか迷ったけれど、今日のような演奏を見せられては書いておかなければなりますまい。個人的には、NHK交響楽団にはあまり好感を持っていません。上手な方々が集まっているのでしょうけれど、どうにもその演奏からお仕事感を感じてしまいまして。あと、ときに平気で見せる「悪いのは指揮者だな」みたいな演奏も、ちょっと…
今日放送された演奏では、かつての名盤の記憶があっても補正できるようなものではない混乱と緩み、余裕のなさが明らかでした。めったに演奏しない作品だから、などと聴きてが配慮するのはおかしいと思うので率直に言いますが、かなり不出来な演奏だったのではないかと。仮にマエストロの衰えがあろうとも、貴方たちが貴方たちのポディウムに招いた指揮者でしょう、心中するくらいの覚悟を見せてほしいものだわ。それは前任者の時も同様でした。変わっていませんね、このオーケストラは…

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