2012年5月19日土曜日

101回目の命日には出遅れたけれど

こんにちは。千葉です。

昨日は大好きなグスタフ・マーラーの101回目の命日だったとか。昨年一昨年なら全力で食いついたところなんですが、さすがにその二年でいささかネタ切れ感があるとあると申しましょうか、同じパターンを繰り返すのも興が乗らないと申しましょうか。もしかつてのマーラー漬けといっても過言ではない日々についてご興味あるようでしたらリンク先をばご笑覧くださいませ、初年度の没後100年には平日毎日マーラーの録音について書いてましたので(笑)。

今年はフランス音楽に力を入れようと心に決めているのだけれど(あまりアウトプットできていませんが…)、もちろんマーラーを聴いていないわけがない。やると決めたジンマン&TOZの全集を、そのクオリティ相応の扱いでまとめておくための聴きこみとか、何より日常的にその日のフィーリングでいろいろと。あのう、マーラーについての20世紀的「物語」は音楽を聴くのに邪魔になる場合が多いですからね、あまり意識されないほうがいいですよ?もし幼少期から死を意識して~、とか病弱な体で活動を~、とか予言的な作品を~、とか思っていらっしゃるならそれはまさに20世紀の「物語」ですから、こちらの本で解毒しておくことをオススメします。




以前より幸いにも旧館のあるアメブロにておつきあいいただいて、多くの知見やご指摘をいただいて参りました前島良雄さんによる、「精力的に活動し続けた当代最高の名指揮者」にして「夏の間のパートタイム作曲家ではありながら、生前から最高の評価を受けて指揮と作曲の両輪で活躍していた」グスタフ・マーラーの生涯が如何に前のめりの前進し続けた生涯であったかを事実によって知らしめていただける、最後の評伝だと思います。思うにグスタフ・マーラー氏、ゲルギエフよりも指揮してたんじゃないかしらと思える活躍ぶりで、その間に思い悩んでる暇がなさそうなことがよくわかる一冊です。読了後に直接お話させていただく機会が持てたのは幸いなことでした。前島様、その節は…(ちょっとごまかしてみる)

既にマーラーに詳しい人には目からウロコの、それほど知っているわけではない人には最高の入門書になりえていると思います。この本で彼の生涯そのものという「本筋」を抑えてから、俗説の森に分け入る方が安全ですよ(笑)。


さてこういう節目に何を聴くか、と考えて。と思うより先に、最近お気に入りの盤の話をします。



こちらのクラウディオ・アバド指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団他による1994年の録音、何故か最近よく聴いているんです。毎日マーラーを取り上げていた頃に書いた感想と、感触はそう変わらないのだけれどなにか好ましく思えまして。

先日NHK-FMがまとめてラトル&BPhの録音を放送した中にこの曲もありまして。そのサウンドはある程度まで実演の印象から補正して考えるにかなりこなれた、「マーラーの音」になっていたように思えました。さっさとDVDでもCDでもいいから、ベルリン・フィルとの全集をリリースすべきですね、レーベルは。前にDCHの無料放送で視聴した第七番も圧倒的な仕上がりでしたし。

では、彼らの前の時期にはどんな演奏をしていたっけ?と気になってこの盤を出してきましたら、この演奏の柔らかい感触が実に新鮮で。以前「開放的」と書きましたのは、言い換えれば見立てによるドラマの枠組みをあまり硬く作らず、演奏の自然な呼吸に任せる部分が多くあるな、ということでした。第一部が極点の多声宗教音楽、第二部が象徴的戯曲のフィナーレと、音楽外への視線を取り込んでいるこの作品なのだから、個人的にはその性格を活かした演奏をこそ期待してしまうのだけれど、この演奏はそれとは明らかに違う、でもこれはこれで説得的な仕上がりを見せているな、とここ最近聴くたびに感心しています。特に第一部、このポリフォニーがこんなに人間的に響くのかと。いや素晴らしいです。流石です。

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今日言及した盤に限らないのだけれど、指揮者の仕事はその時期により環境により大きく変わっていくことを、できるだけ自覚的して言及するようにしよう、とこころがけています。だから録音の話をするときは、最低限いつ録音されたものかくらいは書いておく。それでまあ、わかる人には「就任から何年目ね、それなら…」とか情報が読めると思いますので。
ことアバドにしても、新鮮な演奏をする目配りのいい若手時代から楽壇の「帝王」ポジションに一時君臨し(これほど似合わない形容、なかなかありませんね)、そして現在の悠々自適(に見える)に至る過程で演奏のスタイル、作品へのアプローチが変わっていることを、ちゃんと踏まえて書かないといけないな、と。だって考えてみてください、私達が知っている録音のアルトゥーロ・トスカニーニはその数十年前にはグスタフ・マーラーのライヴァル指揮者だったんですよ?その頃から同じような演奏をしていたと考えることの不自然、気になりませんか?(私、気になります!と聞こえる変な病気にかかっています)
特に最近気になっている、1980年代に栄華を極めたマエストロたちについて、そういう芸風から見た年譜のようなもの、誰か作りませんかねえ、ここに一人は読者がいますよ~(笑)。

ともあれ今日はひとまずこのへんで。そうそう、マーラー関係ではあと二つほど、ニュースとコンサート関係で記事を明日明後日くらいには書きます。ではまた。

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