2017年3月3日金曜日

英国ロイヤル・オペラ・ハウスシネマシーズン「イル・トロヴァトーレ」

こんにちは。千葉です。
近日公開の、映画館でのオペラ上映のご紹介。

●英国ロイヤル・オペラ・ハウスシネマシーズン「イル・トロヴァトーレ」



これは先日試写会で拝見してきたレポートとセットで読んでいただければ幸いです。記事はこちら。

●ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン「イル・トロヴァトーレ」———四人の歌手たちの饗宴!息つく暇もないヴェルディの名旋律の数々

ロイヤル・オペラ・ハウスのサイトではいろいろと動画も見られます。なんというか、いい感じに暴力的なプロダクションでした。音楽じゃなくて、お芝居として。
このプロダクションを拝見してから気になって原作について調べたのですが、岡田暁生氏によれば「マントと剣もの」とされるジャンルなのだとか。”スペインを舞台にマントと仮面を点けた謎の山賊が大活躍するジャンル”の存在自体が謎に思えますが、日本で考えれば「鞍馬天狗」とか「必殺!」シリーズみたいな、時代や雰囲気までは史実も参照するけど出来事やストーリーは創作、というジャンルを想定すれば理解しやすいかな、と個人的には受け取りました。間違った理解ならごめんなさい(おい)。
そういった虚構度の高いオペラを、正面から演出すると辻褄合わせが大変になっちゃうからなのか、かえって楽しめなかったりします。また、考えオチにするにはこの作品は端的で簡潔に書かれている。えっと、要するに「物事の継起をきちんと作中で描いていない」ということです。ト書きで済まされていたり、見る側の想像に任されていたり。

メインキャスト四人については以下の動画をそれぞれご覧ください。

まずは一番感心したアズチェーナ役のアニタ・ラチヴェリシュヴィリ。


彼女自身のYouTubeチャンネルでコンサート全体が配信されていますので、お時間の許す範囲でどうぞ。

続いてレオノーラ役のリアンナ・ハルチュニアン。


サンフランシスコ・オペラでの「トスカ」ハイライトですが、「歌に生き愛に生き」の前半が聴けます。

そしてマンリーコ役のグレゴリー・クンデ。


これも本人のチャンネル、同作品のマンリーコの有名なあのアリアですね、その前からきっちり聴けます。2015年、ラ・コルーニャでの舞台。

最後にルーナ伯爵のヴィタリー・ビリー。


これも本人のチャンネルより、サンフランシスコ・オペラでの「ルイザ・ミラー」より。

(METにも登場しているキャストが多いような気がするんですよね、ロイヤル・オペラ・ハウス。英語圏の好みは似ている、とかそういうことはあるのでしょうかしらん)

最後にもう一つ、指揮のリチャード・ファーンズの映像を。彼はイングリッシュ・ナショナル・オペラの関連組織「オペラ・ノース」で長く活躍し、その集大成としてワーグナーの「ニーベルングの指環」を上演してます。で、これがその指揮者を映し続けた動画です(笑)。



おそらくプロンプター用だったり舞台裏のためのものだと思うのですが、演奏家以外にはなかなか見られない指揮姿全曲(笑)、せっかくですのでぜひ。ちなみに、この動画は14時間40分超えです(大笑)。
彼の指揮は、現代的な舞台とは逆方向で驚かせてくれます。ヴェルディの同時期の作品や、彼に先行した諸作品を思わせる響きや語り方が随所に聴き取れますので、それも注目のポイントです。いや、聴きどころか…

そんなわけで、3月3日より各地で順次上映のこのプロダクション、一見の価値ありと存じます。作品の捉え方がいろいろと気になりだして、録画しておいたドミンゴがルーナを演じた舞台とか見てしまいましたもの(でもあの演出は好みじゃないですごめんなさい)。

デイヴィッド・ベッシュの演出では、この作品が持っている”力”の側面が明瞭に示されます。お近くの劇場でぜひ。

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ちなみに。レヴューの方で言及しているマルクス兄弟の映画「オペラは踊る」での「イル・トロヴァトーレ」はこんな感じです。



ほんとうはこれ、ネタが大量にぶち込まれたクライマックスなので先に見ないほうが良いんですけど…できたらぜひ全編見てください。お願いします。

以上、大量の動画でお送りしたご案内はこのあたりで。ではまた、ごきげんよう。


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