こんにちは。千葉です。
4月下旬から、相当に濃い経験をさせていただいたのですが、いわゆる記事として出せる場所がないのでここに書くしかないな、と思いつつまだ手がついていません。もうちょっとだけお待ちください、ジョナサン・ノット&東京交響楽団からアンドレア・バッティストーニ&東京フィルハーモニー交響楽団、そして公開リハーサルだけどアレクサンドル・ラザレフ&日本フィルハーモニー交響楽団を見たことで、何も思わなかったほどはダメになっていないはずなので。
ただ、〆切があればそちらが優先されてしまう現実に千葉の筆が勝てないという、素朴で哀しい事情がございますことをご理解くださいませ…
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さて、こちらは本日最終日の舞台の、初日レポートです。
●優美で笑いに溢れたウィーン・フォルクスオーパー「こうもり」開幕
先日の「チャルダーシュの女王」で目が開いた千葉のオペレッタ理解ですが(本公演はきっと、千葉が拝見したリハーサルより楽しかったはず。あの過剰なサーヴィス精神が、本公演で盛りを増やさないわけがありませぬ)、「こうもり」で決定的なものになった感があります。
前回、今回と往年のハリウッド映画を参照するようなことを記事中に書いたのですが、個人的にはそれらの映画よりもオペレッタのほうがより好ましく感じられます。良くも悪くもフォーマットが安定していて、それ故にその中で変化球を投げ続けたハリウッドのミュージカル映画は、時として現在の目にはお話の作りが…だったりして。NHKのBSプレミアムではそういう映画がよく放送されているので、少なからず録画して見たものなのですが。
名作として評価が定まっている映画ならここで引き合いに出しても傷もつきませんでしょうから、あえて例をあげましょう。ジーン・ケリーの「パリのアメリカ人」、楽しいっちゃあ楽しいのですけれど、「負け役」の女性キャラクターの扱いとか、けっこう酷いものだったりします。「ドン・ジョヴァンニ」で「ドンナ・エルヴィーラをえんえんと小馬鹿にする演出を見せられるような不快感」がある、と言ったらおわかりいただけますでしょうか。スターがいて、成就すべき恋のヒロインがいて、それを助ける友人がいて、まではいいんだけど、引き立て役がとにかく残念な感じに作られちゃっているのがテンプレート的な作品の限界かなあ…なんて考察はですね、きっと現在の多くのエンタテインメントにも適用できる不満点ではないかな、とか思ったりします。
さすがに名作、「パリのアメリカ人」はそこまで酷くないのだけれど、悪役をらしく描くために意味不明なほどの憎悪を背負わされているキャラクタ、や、否定されるべきキャラクタをより悪く見せるために、立て看板みたいな台詞を喋らされたりしてるところ、見聞きした覚えはありませんか?ジャンル的「趣向」を突き詰めていくとどうしてもキワモノっぽい一点突破が出てきてしまう(そして、それが割と受けちゃう)ように思うのだけれど、これはまた別途考えるべきですねそうですね。
本題に戻りますと、オペレッタはさすがに「源流」。艶笑譚でも下卑たところまでは踏み込まず(かなり示唆はしてますけどね)、笑われ役もただの薄っぺらい看板になったりはしない。作品がそうできているのに加えて演者の皆さんが役に厚みを加えるからこそ、そのように楽しめるものになっているわけです。そんなわけで、「オペレッタは全幕に、実演に限る」と感じているわけです。CDで音楽だけで聴いていてはこの楽しさすべてはわからないし、たとえばかつて新宿コマ劇場で上演されていたような座長公演だとさすがに旧さを感じてしまうかもしれない。でも現在のつくり手によって洗練されて供されるこの舞台なら、そんなことは絶対にない。
クラシック音楽はどこか聴衆に挑みかかるようなところがある、そして聴き手は「挑戦を受けて立っては常に負ける」、立て看板のような負け役にしかなれない(笑)、これは音を出せない以上は仕方ない。でもオペレッタは別物です。文字どおりのエンタテインメントとして聴衆を楽しませることしか考えていないから、挑むどころか向こうから近づいてきて肩を引き寄せられる(でも壁ドンとか無作法になるところまでは踏み入らない配慮がある)。そんな心地よい感触は、最良の舞台に触れられたから一度で理解できたんだなあ、と感じているところなのであります。
ウィーン・フォルクスオーパー来日公演2016は、本日が「こうもり」の最終日、そして次の「メリー・ウィドウ」で終演です。ぜひ皆さんも楽しんで!としか、お薦めのしようがないなと感じておりますよ。「メリー・ウィドウ」と言ったらヒッチコックの「疑惑の影」になってしまう程度の千葉ですからね、この語彙のなさはご容赦ください(笑)。
そうそう、現在宝塚でも「こうもり」上演中なんですよね。この前の新国立劇場「アンドレア・シェニエ」と、帝国劇場ミュージカル「1789」の並行以上に直接的なバッティングは誰の悪戯なんでしょうね(笑)、とボケたところでひとまずはおしまい。ではまた。
来シーズンの告知を見ればおわかりいただけるように、オペレッタの他にもオペラ、バレエ、そしてミュージカルを上演するウィーン・フォルクスオーパーであります。ある意味、現在の「ザッツ・エンタテインメント」なのかも、とか思ったりした次第ですよ。
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