2012年3月3日土曜日

発注、急いで!(妄想)


こんにちは。千葉です。

大河ドラマ、子供の頃には歴史に興味が薄かったからあまり見た記憶がありませぬ。岩手県南出身ゆえ半ば地元ということで「独眼竜政宗」はけっこう見たような、あとは地元なのにスルーしてしまった「炎立つ」「義経」、なんてのもありましたね、ちゃんと見ていないので感想は申しようもないのだけれど(笑)。
しかし近年、こっちに出てきてからは毎年それなりにたのしく見ていまして、「功名が辻」とか熱心に見た、ような(もちろん仲間さま目当てで)。あとは「龍馬伝」、あれは楽しめました。映像的にも新鮮だったし(いわゆる大河風の小綺麗な映像、ダメなんです。その点昨年の以下自重)佐藤直紀によるサントラもいい意味でクセのあるものでしたから。史実云々、描き方云々の不満を持つほどに幕末に詳しくもなければ思い入れもないので(笑、というか維新どうこうを恥ずかしげもなく自分の政治活動で口走る連中、まったく信用していません)それなり以上の作りであればまあ、楽しめると思います。NHKのドラマ部門、その実力はある程度信頼できますしね(若干の保留がつくのは、去年とか一昨々年のことがあるので…)。

でもねえ、スタッフの本気の全力だとは思いつつ、「坂の上の雲」はダメでした。特に、大変申し上げにくいのだけれど、自分には久石譲の音楽が合わなくて。こう言っては申し訳ないのだけれど、いささか自己模倣がすぎたのでは…
内容的には、大学生の頃にいわゆる左寄りの方面で警戒を促しつつよく言われていた「戦争肯定がどうこう」といった部分は、むしろ「こんな思考で戦争をしちゃいけないに決まってんだろ」「この延長線上に20世紀の絶対戦争を行えると思うなんて無謀にもほどがある」としか思えませんでしたねえ…坂の上の雲を目指していたこと、その成果を否定しようとは思わないけれど、いま現在を生きる私たちはその帰結であるところの帝國の破綻を知っているのだから、感情的にはともかく理性的には一定以上の批判を込めてあの時代を捉え返す必要があるのではなくて?

…と、話がそれました。いつものことですが(笑)。やおらこんな話をはじめたのはこのサントラを聴いたから、なのです。




はい、今年の大河ドラマのサウンドトラック、早々にリリースされたんですね。赤黒の強烈なコントラストのせいでちょっと気づいていなかったのですが、いわゆるDENON、コロンビアからのリリースだったんですね、これ。
演奏はテーマ曲が井上道義指揮NHK交響楽団に舘野泉ほか、サウンドトラックが藤岡幸男指揮東京フィルハーモニー交響楽団ほかの演奏。凄いですね、このメンツだと普段であれば積極的に聴くことなどありえない(笑)。ミッキーこと井上道義氏を除くと実演で聴こうとしない団体に演奏家が並んでます(舘野泉さんはご縁がなくて…)。いや、合わないと思っている人たちもそう回数を聴いたわけではないから個々のつっこんだ評価は控えますが。
とか言いつつではありますが、サウンドトラックの録音っていわゆる「盛った」音に、実際以上に以下自重になっている場合が多くて、この盤自体はなかなか気持ち良く聴ける音になっています。ときどき、あのオーケストラの悪癖が顔を見せそうになるけど…

音楽そのものは、ドラマをご覧の方ならすでにお聴きになられたとおり、ワイルドな曲から子供の歌(テーマ曲にも入れられているあれ、ですね)、雅楽風の曲などと幅のある曲調で、ドラマ抜きでもなかなか愉しめる一枚でした。最近では珍しくなったいわゆる「現代音楽」の作曲家、シリアスな音楽の領域で活動している吉松氏ではありますが、そもそもの作風が聴きやすいと言えるほどのものでしたから、ドラマが気に入った方はお聴きいただいても損はいたしますまい。そう、話題の兵庫県知事はここをお読みではありますまいし(笑)。

千葉の感想としては、吉松氏が尊敬していらっしゃるだろう先達、名をあげれば武満徹に黛敏郎、早坂文雄などを思わせる劇伴ならではのケレンのあるサウンドに感心した、という感じかな。そうそう、吉松氏といえば忘れてはいけない冨田勲氏へのトリビュートのように思える響きも随所に感じられました。オーケストラというパレットを存分に使って楽しんでいる作曲家が見えるようであります(笑)。

で、ですね。こっからは妄想です(笑)。主張の強い映像にけっして負けていないこの音楽ですが、オーケストラの各楽器をかなりソリスティックに扱った曲が多いんですね、嬉しいことに千葉の楽器であるテューバも!最近はあまり楽器を吹いていないのだけれど、ちょっと出してみようかと思うほどです。相変わらず影響されやすいですね、この人は(笑)。
こうもですね、各楽器の特性を活かした音楽を聴かされ、かつそれが大河ドラマの放送のたび日本中で聞かれているかと思うと、ただのサウンドトラックとして終わらせてしまうのがいかにももったいない。日本を代表する現代の作曲家の作品で、クラシックを普段聞いていない人にも届く=ある程度耳に馴染むだろう音楽を、ある意味で使い捨てだなんて。※

※もちろん、吉松隆の音楽を好んで聴く人たちはドラマが終わっても音楽単品を楽しむだろうし、多くはないかもしれないけれどサントラ好きの人もいらっしゃるでしょう。でもそれは映画音楽などでも同様だろう、視聴者の数には見合わない少数になるだろう、ということを申し上げたいのであります。

そこで提案です。吉松先生、早々にサウンドトラックからの抜粋によるオーケストラ向け交響組曲と、吹奏楽版のテーマ音楽を出版されませんか?というのもですね…

その昔、千葉が吹奏楽少年だったころ、吹奏楽雑誌の付録に「独眼竜政宗」のテーマ音楽吹奏楽版があって、大喜びで演奏したのを覚えています。あれは池辺晋一郎先生ですね、インパクトの強い名曲だったかと。近い時期に三枝成彰氏の「宮本武蔵」のテーマ音楽が「オーヴァーチュア・ファイヴ・リングス」としてコンクール課題曲となったりもして、吹奏楽者と大河ドラマってそれなり以上の親和性があったと思うんですよ。しかし近年はそういう話も聞かず。

音楽って、聴き込むだけでも十分に楽しめる、それこそジャンルを問わず時代を問わず、これだけの膨大な蓄積に加えて年々新作が生まれているのだから、その全てを享受することなど人の身には不可能です。だから聴けるものを、聴きたいものを聴けばそれでいい。ではなくて、むしろ、それだけの数から幸いにも出会えたものは大事にしてほしいなって思うのです。吹奏楽に限らず、自分の手で演奏する経験は否応なく作品を自身に取り込んで他者を近しいものに感じるいい経験だと思いますし(現代の聴く人と演奏する人の分離は、仕方がない面もあるにせよ、音楽受容の在り方としてはやはり偏ったものだ、と言わざるをえないでしょう、いま現在の自分が楽器を触れていないのでこの言葉はそのまま自分に跳ね返ってくるわけですが)。
そして交響組曲を希望するのはですね、やはりとっかかりという面からの考えが大きいです。ドラマを楽しんだ人は少なからずその音楽に好感を持つでしょう、というありがちな計算ですね(笑)。それだけならこれまでも、地方での演奏会などでよく取り上げられていましたし、サウンドトラックを集めた様な企画でも大河ドラマの音楽は演奏されてきたでしょう。ですが「平清盛」は吉松隆ですよ?普通の演奏会に入れても全く問題のない曲目になってくれることでしょう、それこそ20世紀前半の数多くのバレエ音楽がそうなっているように。なにより、サントラでのオーケストラの音色を最大限活かした作りを考えると、サントラから編まれる組曲はいわば現代の管弦楽入門として使えると思うんです。いいと思いませんか、パーセルの主題じゃなくて大河ドラマから生まれてきた管弦楽入門。アウトリーチ的なプログラムに入れる時は楽器紹介をすればいい、その必要がなければ吉松隆の劇付随音楽として結構の通った組曲として扱えばいい。かなり拡がりをもちうる作品になれると思うのです。シンプルな古典と組合せても面白いし、ロマン派と並べてみても面白い。いいと思うんですけど、
どうですか音楽専門出版社さんとか
機先を制して発注されてみては?

(長々書いておいてアレなのですが、吉松さんはけっこう著作権管理をきっちりされている印象があるので、交響組曲はともかく吹奏楽版は広く演奏されるかたちにはならないかな、などと現実的な落としどころも見えてしまうような)

以上、王家(笑)に蝦夷とされ、終いには鎌倉源氏に滅ぼされた地の出身者としては平家も王家もせいぜい頑張ってくださいな、と思っていることを最後に告白して(笑)おしまいです。ではまた。


追記。

幸福な例外として、今川監督版の「ジャイアントロボ」から天野正道氏の「GR」シリーズが登場し広く演奏されている、というものがあることを思い出しました。
しかしながら、千葉がアニメ好きであってもその受容の広がりにおいて限定的であることは否定できないし、吹奏楽コンクールの自由曲として多く演奏されていることを新聞紙面で見かけなければ天野作品のことは知らなかったでしょう、元吹奏楽青少年だったのに。
昨今のサントラ、上手い具合に折衷的なものが多くて、作品の出来と相まって興味深いものもあるのだけれど、流石に「平清盛」&吉松隆のようなものはない、はず。問題は突破力、なのです。
その昔の「赤毛のアン」&三善晃(主題歌のみ、サントラは彼の弟子筋)、「未来少年コナン」&池辺晋一郎のようなケース、あってもいいと思うんですけどね…なお、この追記部分に「劇伴専門の作曲家では」どうのこうの、という話をしているつもりはありません。菅野よう子とか、神前暁に菅野祐悟などなど、千葉も好きですし。クロスオーヴァー的なものの在り方、なかなか難しいものだと日々思うものであります。以上よけいな補足でした。

0 件のコメント:

コメントを投稿