2012年3月28日水曜日

経歴って見えにくいね~アンドレ・クリュイタンスの場合

こんにちは。千葉です。

この前知ったことなのですが、3月26日はアンドレ・クリュイタンス(1905-1967)とピエール・ブーレーズ(1928-)のお誕生日なのだとか。芸風の異なる、フランス音楽で印象的な演奏をしたマエストロが同じ誕生日、という奇遇、あるものなんですね。


と書いてから少し考える。お二人ともバイロイトに登場した「ラテン系」のマエストロ、ですね。



ブーレーズについてはまあ、「実験劇場」でもあるバイロイトの挑戦の一環と見るのがいいかもしれないのだけれど、ことクリュイタンスの場合は、そうではない、のかな?などとこの数日考えてしまっているのです。

1964年の伝説的な来日公演については、今では録音である程度までは知ることができます。当時の聴衆がどう聴いたか、という部分はそれこそ後に彼らが日本ではどのように受け容れられてきたか、から察せられるでしょね。今でも「(クリュイタンス&パリ音楽院管の)ラヴェルは長くスタンダードとして君臨してきた」とか(レーベルが書く内容か?)とか、「ラヴェルのスペシャリストとみなされがちなクリュイタンス」(某ショップ。あのう、それは凄い決めつけですね…ベートーヴェンの交響曲全集が意外なものであると強調したいがために、だとしてもそれはどうか)など。ええ、ええ。わかっています、この演奏の素晴らしさ、パリ音楽院管の魅力は。千葉だってクリュイタンスにミュンシュ、マルティノンとEMIレーベルの誇るフランス音楽録音には思い入れがありますし。





でもさあ、いい加減そういうシンプルな見方はやめませんか、少なくとも初心者ではないだろう関係各位だけでも。アンドレ・クリュイタンスの経歴を見れば、パリ音楽院管弦楽団との仕事はたしかに金字塔と言いうるものだろうけれど、そのキャリアの少なくない部分はオペラ・ハウスでの活動であるし。録音にしても、オペラの名盤だってかなりのものですよ?




ここにリンクを貼った「カルメン」に「ホフマン物語」、どちらも千葉の愛聴盤です。録音はいささか古いけれど、そんなハンデを感じさせないほど音楽がダイレクトに伝わるように感じます。特に「カルメン」、オペラコミークの上演スタイル通り、レチタティーヴォではなくセリフで劇がいいテンポで進んでいく快感はもう!個人的にはカルロス・クライバーのDVDよりも好いですね、千葉は。そうそう、カルロスといえば「ホフマン物語」についてはクリュイタンスの盤が良いな、という感想を残していたとか。気が合うねえ、カルロス!(おい)

クリュイタンスのキャリアを気にするようになったきっかけはもちろんそのフランス音楽なのだけれど(パリ音楽院管弦楽団との録音、ドビュッシーが殆どないところがまた、飢餓感を煽ったと申しましょうか)、彼のベートーヴェンを聴いて、先ほど挙げたようなオペラを聴いて、「スペシャリスト」なんて枠に収めて考えるのは無礼にあたるのではないか、と感じてからであるように思われます。



当時聴いたのは全集ではなく、彼の録音をまとめた「artist profile」なるコンピレーション盤二枚組に収められた交響曲第六番でしたね、そういえば。「ベルリン・フィル最初のベートーヴェン交響曲全集」だから、などと考えず、ただその演奏を聴いてこれはいいな、と思った。そこから「フランス音楽専門の人」なんて見方をやめていくことができた、のかなあなんて思っております。もちろん、フランス音楽も素晴らしいのだけれど(オネゲルの第三番、あれはほんとうに素晴らしい!!)、ピアニスト・ショスタコーヴィチとの共演などもある当時最新のレパートリーに対して開かれた、オペラにシンフォニーに舞台にと幅広い活躍をした有能なマエストロのひとり、なのではないかな、と。

良きにつけ悪しきにつけ、戦後から高度経済成長期あたりまでに来日公演を行った演奏家の評価、その来日公演に影響されているのではないかな、と感じています。そして、オペラ公演としての来日が困難であるが故に、活動の経歴を考えるときにコンサート指揮者としての仕事を中心に考えてしまいがちだ、ということも。あとはまあ、時代の風潮や思潮との関係も、無視できない。ううん、書きだすとものすごく普通なんですけどね、けっこう意識して言挙げしないといけないんじゃないかな、なんて思っているのです最近は。

これから折に触れて、思いつくたびこういうことも書くだろう、と思っております。アメブロの方では他のお題に絡めて書いていたようなことも多いんですけど(コンドラシンとオーマンディ、冷戦下の変な評価…とか)、まとめておかないと何を気にしているのかが見えにくいですし、ね。

ともあれ、本日はここまで。まずはどれでも聴いてみてくださいな、アンドレ・クリュイタンスの録音を。それこそラヴェルでも、問題ないどころか千葉もオススメいたしますから(笑)。ではまた。




SACDになってどんな音で聴けるのだろうか、と思いつつまだ買ってない、彼らの「ダフニスとクロエ」。他のラヴェル録音は通常CDから買い換えるのもどうかな、と思って様子見中ですが、これだけ何故か持ってないんです。なんだろう、モントゥーやミュンシュで満足しちゃってるから、でしょうか(笑)

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