2019年4月10日水曜日

フェスタサマーミューザKAWASAKI2019の聴きどころ その一 ~セット券で読む

先日のは公式モード、今日は私モードだよ!(そこまで砕けてないよ普段のあんたは)。ということで、切り口を変えてフェスタサマーミューザKAWASAKI 2019の楽しみ方をご案内。今回は、セット券でこのお祭りを読み解きましょう。
最初にお詫びしておきますが、この記事は文字ばっかりです。すみません。

*************

まずはじめに。
ミューザで開催される全11公演を一度にまとめて、同じ席で買えちゃうセット券は、
1.ミューザ川崎シンフォニーホールの特性をよくご存知で、
2.お気に入りの席もとっくの昔に決まっていて、
3.今から全日程の参加を決意している
あなたのための、お得で便利なセット券です。そんなあなたに私から申し上げることは何もありません、友の会先行は4月15日の午前10時からですよ。
(知人友人ご家族サークルなどでシェアして利用する可能性をまったく考慮できない、友だちの少ない私である)

*************

一度にそこまで決めちゃうのはちょっと無理、でも今のうちに何か行くことまでは決めておきたい…そんなあなたのために、「土日祝セット(6公演)」「平日夜セット(3公演)」「平日昼セット(2公演)」があるのです。まずはセット券で外せない、外したくない公演を抑えて、あとは気になる公演を買い足していけばあなただけのフェスタのプログラムができあがっちまうって寸法だ!(まずは私が落ち着け)

では順番に見ていこう。公演数も多く、公演はすべて週末なので決断しやすい「土日祝セット」から。
まず開幕とフィナーレを飾る東京交響楽団の演奏会。ノット監督による開幕公演(7/27)はもちろん外せないし(解説なし)、お祭りの〆は尾高忠明※によるシューマンの協奏曲とショスタコーヴィチの第五番(8/12)でこれも外せない。
なお、ラインナップ会見にも出席されていた秋山和慶さんは海外へ演奏旅行中という理由で今年は残念ながら出演されないとのこと。

※4/9に、所属事務所より尾高忠明の5/20〜7/20の期間指揮活動休止が発表されている。予定通りに回復されてこの公演が復帰公演となるならばよいのですが。ご快癒をお祈り申し上げます。

続いて上岡敏之&新日本フィルハーモニー交響楽団のロシア音楽によるプログラム(7/28)。このコンビネーションも3年目、ますます相互理解が深まり独自の音楽を聴かせていると聞く。長年オペラで活躍してきた上岡がドラマを描くときの表現力に、それに応える新日本フィルに期待できる好プログラムが用意された。直前の定期演奏会で披露されるフランス音楽プログラムと併せて聴き比べる、そんな愉しみかたもアリだろう。

原田慶太楼&N響のコンサート(8/3)は、曲目だけを見ると小品を中心に編まれているし、このオーケストラなので(失礼)「名曲アルバム」ライヴヴァージョンの趣がある。ですが、なんとこのコンサートではどの曲も5分では終わらずフルサイズで聴けてしまうんです!(本当にすみません)
一回のコンサートで世界各地で生まれた名曲を楽しめるこのプログラムを、近年目覚ましい活躍を見せている原田はどう聴かせてくれるだろうか。N響との共演なのだから、お手並み拝見には最適の機会となろう。

首都圏外からの初招聘となった高関健&仙台フィルハーモニー管弦楽団(8/4)は、ミューザからのオファーに直球で応えてくれた。この機会に選ばれたのはチャイコフスキーの協奏曲と交響曲、いずれ劣らぬ名曲によるプログラム。…東北の雄の実力の程、見せてもらおうか!(ガンダム脳でごめんなさい)

そして最後に紹介するのは、先だって東響に客演して大好評で迎えられたダン・エッティンガーの東京フィルハーモニー交響楽団への”里帰り”公演(8/11)。メインで演奏されるのはチャイコフスキーの交響曲第六番だ。つい最近にバッティストーニと凄絶な録音もあるこの作品、エッティンガーは東京フィルとどんなサウンドで、どんなドラマを描き出すのか?

ということで、このセットはロシア音楽多めでお届けします(私じゃなくて、ミューザ川崎シンフォニーホールが)。これでフェスタの外枠がきっちり抑えられるのだから、週末に時間が融通できる方ならまずはこれを検討すべき。です。

*************

もっとも、平日の公演が無視できるものではないのもプログラムを見ればわかるだろう。「むしろ週末の予定は直前に決まるので!」、そんなあなたは平日の二つのセットをまず検討しましょう。公演数は少ないけれど、どちらも見どころ聴きどころのある公演が並んでいますよ。
まず「平日夜セット(3公演)」はアラン・ギルバート&東京都交響楽団(7/29)、井上道義&読売日本交響楽団(7/31)、藤岡幸夫&東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団(8/6)の三公演だ。

アランと都響、この顔合わせへの信頼感は共演を重ねるたびに増しているが、この公演では意外な選曲が目を引く。都響でレスピーギをメインに据えたイタリアンプログラム、実に新鮮である。直前の定期ではモーツァルトとブルックナーで【日本オーストリア友好150周年記念】プログラムを披露してから望むフェスタサマー、きっとこのコンビネーションの持つ別の可能性が感じられることだろう。そうそう、帰ってきたミューザのオルガンのサウンドをまずここで楽しむのもアリ、ですよ。

井上道義がお祭りで、読響と何をしてくれるのか?その答えが「ブルックナーの第八番、一曲のみ」というまさかの豪速球である。しかし冷静に振り返れば、井上は近年鎌倉で、京都で大阪でブルックナー演奏を披露してきている(第八番は京都市響との録音もある)。この曲を鎌倉で、N響と披露する前の会見でのコメントがリンク先で読めるので、興味がある方はぜひ参照してほしい。ショスタコーヴィチのイメージが最近とみに強い彼だが、ブルックナーも師匠譲りの大事な作曲家なのだ、とよくわかる言葉の数々に触れられる。

そして今年没後30年を迎える芥川也寸志の交響曲第一番を取り上げる藤岡と東京シティ・フィル。彼の作品の中でも、近年再評価高まる映画音楽や「トリプティク」などに比べて演奏されない作品だが、それをあえて取り上げるところに首席客演指揮者に就任する藤岡からの「やりますよ!」というメッセージを強く感じる。生前、まともなコンサートホールを渇望した芥川の音がミューザに響くことを、きっと作曲家も喜んでくれることだろう。

残るミューザでのセット券は「平日昼セット(2公演)」だ。ここでは川瀬賢太郎&神奈川フィルハーモニー管弦楽団(7/30)、小林研一郎&日本フィルハーモニー交響楽団(8/7)という、気心の知れたコンビネーションによるふたつの演奏会が楽しめる。曲目も川瀬がスペインをテーマに編んだ色彩感豊かなもの、そしてコバケンはいわゆる「チャイコンにベト7」と得意中の得意の作品を持ってくるのだから、この二公演は安心感が高い。しかし、川瀬賢太郎と渡辺香津美は…いや、この話はまた別に。

最後に、同じく週末土曜日にテアトロジーリオ・ショウワで開催される「出張サマーミューザ@しんゆり!」にも「しんゆりセット」があることを書いておく。ドイツの名曲で攻める東響(8/3)、例年通り協奏曲メインで送る神奈川フィル(8/10)の二公演が、昭和音楽大学自慢のホールで開催されます。フェスタサマーには行きたい、しかし幸区は遠い…そんな川崎市西部、東京都多摩地域や町田市など在住のあなたはぜひこちらに参戦されたし。ここの個性である「近代的なホールなのに馬蹄形の客席」というミスマッチもまた楽しいものですよ。

では次回に続く。また切り口を変えてフェスタサマーを切り刻みます(穏やかじゃない)。

0 件のコメント:

コメントを投稿