2016年1月31日日曜日

聴きました:佐藤俊介&鈴木優人 共同企画 「テンペスト~inspired by THE TEMPEST」

こんにちは。千葉です。

今日も前置きなし。っていうか、前置きを書く時間が惜しい(千葉にしては珍しい忙しさ故)。

●佐藤俊介&鈴木優人 共同企画 「テンペスト~inspired by THE TEMPEST」

先日紹介記事の紹介を書きましたところの(ややこしい)、ちょっと一口には紹介しにくい(しつこい)コンサートですが、初日に伺った感想をまず一言で書くならば「かなりきっちりと”テンペスト”でした」、ということになりましょう。「四人の音楽家と一人のダンサーで、どうして登場人物が少ないわけではない、台詞でのやりとりが多く展開される戯曲ができるのか」、というのは当初”新音楽劇”と題されていたこの公演の、間違いなく最も重要なポイントだったでしょう。この離れ業を実現するため、公演を創りあげる過程で相当の検討がなされたことと推察されます。まずはその、公演の前段階の周到な準備に、そしてそれを実現した出演者各位の想像力に拍手を。

入場の際に渡されたプログラムには、1月27日に最終的に定まった曲目、曲順※が「テンペスト」の場面に対応させて示された紙が添付されておりまして。これを見た瞬間に「あっこれ芝居をやる気だ」、と即座に理解しました。席について舞台を見れば上手側にチェンバロ、下手側にピアノが置かれ、さらにいくつかの照明器具、見立てに使うと思われる大道具など、ステージはいわゆる演奏会のそれではなくて、まさに「舞台」のそれでした。

※当日のパンフレットはきちんとこの曲目がすべて掲載され、解説も載せられたものでした。ここからもギリギリまで演者のみならずスタッフ一同が努力されたことがよくわかろうというものです。
なお、シェイクスピアの「テンペスト(あらし)」のお話を知らないとこの公演を味わいきれない可能性がありますので、今日行かれる方は今からでも読んで!……とはさすがに言えないので(笑)、せめて早めに会場入りして、プログラムにある「あらすじ」と曲目の対応表をつきあわせておかれることをオススメします。既読の方も、さらっとおさらいだけでもしておくとより愉しいですよ、とは最近読み返したばかりの千葉の意見であります(言えない、昔読んだ時の記憶がほとんどなくて、ほとんど初読並みの新鮮さだったなんて(自分にとって)悲しい事実……)。

誘導灯まで完全に消した闇に嵐の轟音、そこで一気にドラマが戯曲のとおりに始まり、そこから一時間と十数分、一気に踊られ演奏され演じられたドラマの詳細が気になる方は、ぜひ今日の公演に行ってみてくださいませ、濃密な時間が楽しめますから。場面に応じた選曲、そして照明とちょっとした大道具小道具、そしてダンスによってドラマを「示唆」するのではなく、きっちり場面を想定して選ばれた音楽が、演奏者(というより演者)と、ミランダ、そしてエアリアルとして振る舞うダンサー加賀谷香とのコミュニケーションが雄弁に語るこの舞台は、これ以上はどこも削れないほどに洗練された見事な「劇」だった、と千葉からは申し上げます。

(もし後日、主催者のサイトで来場者に配布された「場面と演奏曲目」がアップされなければその辺りについて追記します、アップされたらリンクします。
この日の曲目でプレイリストを作って聴くだけでも、”架空の「テンペスト」のサウンドトラック”として楽しめそうなものですから、ここでご紹介したい気持ちはやまやまですが、これはまず会場で知らされて、そこから舞台が終わるまで頭をフル回転させて楽しむのが筋かと存じます故。)

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音楽の人らしいことも書き足しておきましょう。

・チェンバロ以外は基本的にモダン楽器による演奏だったかと思われます。ピアノ、クラリネットとの音量的バランスや、”ガット弦だと劇中に調律をする必要が出てしまい、舞台の空気が壊れる”という判断かと推察される取り回し面からの判断でしょう。佐藤、懸田両名の「モダン楽器によるバッハ」はある意味新鮮でした。
・必要に応じて、適宜編曲して演奏されてます。たとえば冒頭に演奏されるヴィヴァルディの「四季」から「夏」の第3楽章はピアノ&ヴァイオリン、チェロ、クラリネットですからね、この「ドラマ」は考証的なアプローチではないのです、と最初に宣言されたような気がいたしました。ちなみに編曲が一番楽しめたのはソレールの「ファンダンゴ」でした、劇中の効果も高くて。
・目の前で聴いたメシアンの「鳥たちの深淵」はもう、「クラリネットってすげえな!」と子どものような感想になりました(笑)。吉田誠、覚えておいてくださいね皆さんも(偉そうに言うな)。
・鈴木優人のピアノ、作曲家というか指揮者というか、作品を俯瞰しつつ演奏するタイプに感じられてなかなか興味深いものでした。

えっとですね、きっと体験された方の数だけ感想が出てくるような、そんな刺激的な舞台でした。今日の公演は15時からなので、間に合う方はぜひに、とオススメさせていただきます。

以上、実は「ごちそうさまでした」という一言にまとまってしまうレポートはこれにておしまい、ごきげんよう。

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