2017年5月20日土曜日

読みました:麻耶雄嵩「あぶない叔父さん」

こんにちは。千葉です。
たまには小説も読むのです。仕事にもなんにも関係なく、ただミステリが好きなもので。

●麻耶雄嵩「あぶない叔父さん」


貴族探偵」がまさかのドラマ化で盛り上がる麻耶雄嵩ファンの周回遅れとして(いちおうはメルカトル鮎シリーズなどを過去に愛読していましたが、ちょっと離れていました)、ようやく本書を読みました。
いやあ、麻耶雄嵩だったなあ…で感想を終わらせないとあれこれとネタバレしなくちゃいけなくなる、というかこれでも麻耶雄嵩を知っている人には先入観になる。いやドラマ「貴族探偵」をニ、三話見ていればわかることか…というつまらぬ逡巡を書いた上で。

タイトル通りの小説なんですよ、これ。少し真面目に連作短編の趣向を説明すれば「霧の深さが特徴の田舎町で暮らす高校生たちが遭遇する殺人事件、それを明かす主人公の叔父さん」という趣向が共通の、五つの短編が集められています。田舎の高校生の恋愛事情や、田舎ならではの人間関係などで味付けされているけれど、基本は小味な殺人事件を解決するミステリです。青春小説のテイストが強いかな…
ですが。叔父さんが危ない人なんですよ、本当に。以下本当にネタバレになります。

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真相の解明が、基本的に叔父さんの語りの形をとるのですが、その内容が問題で。
彼の語りを真とすれば、叔父さんは探偵じゃなくてあの。とツッコまざるをえない。
もしそれが甥を事件から遠ざけるための嘘だとすれば、事件は終わっていないことになってしまうわけで、それは小説としてどうなのか。”開かれた小説”どころか、そもそも閉じる気がないよ!(笑)っていう。

その辺、麻耶雄嵩だなあと笑って楽しめるか、なにこれ?って怒っちゃうか、何それ意味わかんないって引いてしまうか、反応が分かれるところだろうなあと感じた次第です。私は笑ってましたけど、人に薦めるかと言われるとこのような理由で迷います。そんな短編集でした。

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かつて話題に促されて「夏と冬の奏鳴曲」を読んで以来の、長いつきあいとなった麻耶雄嵩がまさかの月九でドラマ化、それも相当に原作を活かした/異化した作りのものが出てきている現実は、正直驚きです。ドラマ、アニメで森博嗣「すべてがFになる」を全力で押したことなども踏まえれば、「本格のフジテレビ」と言ってもいいかもしれない。
世紀の変わり目ころに講談社ノベルスを楽しんでいた私らみたいな人たちが制作側に回ったのだろうなあ、という世代論もできますけれど、かつてのミステリ好きの一人として、素朴に楽しませていただけて嬉しく思っています。願わくは、御手洗潔シリーズがまたTVで見られますように(映画に関してあったらしいトラブル以前の形で、ちゃんと石岡くんがいるやつを、ぜひ)。

では紹介のような個人的な感慨のようなものはこれにておしまい。ごきげんよう。


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