2017年5月25日木曜日

読みました:辻昌宏『オペラは脚本(リブレット)から』

こんにちは。千葉です。
これも読み終わった本のご紹介です。

●辻昌宏『オペラは脚本(リブレット)から』


以下に目次を引用します。

第1章 脚本(リブレット)が先か、音楽が先か
第2章 脚本に介入するプッチーニ —《ラ・ボエーム》とイッリカ、ジャコーザ
第3章 検閲と闘うヴェルディ —《リゴレット》とピアーヴェ
第4章 ロマン派を予言するドニゼッティ —《愛の妙薬》とロマーニ
第5章 性別を超えるロッシーニ —《チェネレントラ》とフェッレッティ
第6章 挑発を愉しむモーツァルト —《フィガロの結婚》とダ・ポンテ
終章 こうしてオペラは始まった

時代を遡る形で、古くて新しいテーマ「音楽が先か、言葉が先か」を実作にしたがって考える一冊です。プッチーニは「マノン・レスコー」で出会ったルイージ・イッリカとジュゼッペ・ジャコーザとの協力関係を、ヴェルディでは検閲との戦いを「リゴレット」を中心に、…とそれぞれに軸となる作品の例に基づいて台本と作曲の関係を探っていく一冊はなかなかにスリリングです。創作のプロセスが持つ緊張感が持つ独特の面白さは、作曲家と作家の間の往復書簡の形などで知られているところですが(高名なところではリヒャルト・シュトラウスとフーゴ・フォン・ホーフマンスタールのそれは書籍としても知られていますね)、本書は事実関係を整理してコンパクトに教えてくれます。



原作、題材の選択や、作曲との順番などの進め方、それだけでも興味深いのですが、作品を構成するテクストがどのような困難に向き合って生み出されるのか、という創作のドラマとしても面白いですし、それが時代によってどう違うものかと比較するのも興味深いものと思いますので、気になった方にはぜひご一読をお薦めしたく。

なお、モーツァルト以前となると今度はリブレッティスト優位の時代となるのですが、そのあたりの話はまた勉強したときにでも。
ではまた、ごきげんよう。

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