2017年5月22日月曜日

読みました:西澤保彦「さよならは明日の約束」

こんにちは。千葉です。
これまた読んだ本の話です。

●西澤保彦「さよならは明日の約束」


タック&タカチシリーズが一段落して、また水玉螢之丞さんが亡くなられてチョーモンインシリーズが再開される気配がなくなって(これは仕方がないと思う、さすがに…)、それでも多作な西澤保彦さんは次々新作を発表されていて、頭が下がるばかりです。
ひところ読書に時間を割けないために、その多作についていけていなかった私としてはゆるゆると追いつきたく思う所存であります。追いつけたそのころにはほら、タック&タカチシリーズの新作も出るかもしれないし(淡い期待)。

そう思って読んでみた本書は、西澤保彦らしくジジくさい男子と個性的な女子のコンビによるアームチェア・ディテクティブものです。ヒロインはアクティヴなキャラクターに設定されているから出不精だったりするわけではなく(笑)、この短編集で取り上げられる謎が過去に属するものだから、です。一冊の本を契機として見出される日常の謎に、西澤保彦ならではの対話を通じて迫っていくスタイルは、過去作を知らずとも充分に楽しめるものでしょう。二作目からお話の舞台となる喫茶店はどう考えても商いとして立ち行かない感じなのだけれど、マスターが語る過去はキィになっているし、彼が醸すひなびた感じがあればこその本作なので、そこはまあ、ということで(笑)。
詳しくは書きませんが、「男はつらいよ」シリーズや、サザンオールスターズの変遷について感じるのに近いものを感じて、「ああもうタック&タカチものは読めないかもなあ」と思ってしまったことは最後に書いておきます。

なお。もし初めて西澤保彦作品を読むという方にアドヴァイスするならば、珍名に早く慣れてしまえば何も難しいことはないよ、ということでしょうか。喫茶店のマスター梶本さんは割と普通の名字だけれど、他の登場人物は私にとっては馴染みのないものが多くてそこだけちょっと難儀しました(読み慣れていてもそうなんです、連作ではあるけれどシリーズとして構成されているわけではないので愛読者メリットみたいなものはありません)。気軽に是非読み始めて、名字に引っかかってもずんずん読み進めちゃえば楽しく読めることは保証しますよ。
そうそう、西澤保彦読者にはより面白い趣向が本作にはひとつ仕込まれています。最初期の作品をリサイクルして別の可能性を探られちゃうと、読み返したくなっちゃうじゃないですか「解体諸因」。

もっと西澤保彦作品が人気でないかなあ、映像化されないかなあって長年思っている私としては、近年のフジテレビによるドラマ化路線には期待せざるをえないし、もしくは「すべてがFになる」「六花の勇者」、「氷菓」や「ハルチカ」などミステリのアニメ化も増えている印象があるから夢を見ちゃうんですよねえ、「七回死んだ男」の映像化を。どこかやってくれませんか、あの偉大な一作を。ぜひ。

というリクエストを最後に瓶に入れてネットの海に流しておしまい。
ではまた、ごきげんよう。


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