2012年9月20日木曜日
李雲迪氏の来日中止は残念だ
こんにちは。千葉です。
先日のブリテン「戦争レクイエム」とジョン・ケージの番組の話、近いうちに書きますね。まだご覧になっていない方、ハードディスクから消しちゃう前に一回は見てくださいね、どちらもなかなか興味深いものでしたので。
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昨今の政治やら国際情勢について、もちろん千葉なりに物は思うし考えもする。でもその辺の話は基本、向こうのサイトに書くことにしているし実際そうして来ました。ですがまあ、事象としてみればクラシック音楽の領分に他ならないこの件はこちらに書くしかない、残念なことだ。
本日、クラシック音楽、舞台芸術のジャンルでの最大手マネジメント&招聘元であるジャパン・アーツより以下の発表がありました。
◆ユンディ・リ 来日中止のお知らせ
文面から察するに、かなり明確に政府レヴェルでストップがかかったように思えます。ごまかす気のなさがこんなに明示されたキャンせるのご案内は初めて見たかもしれない。いやいや、千葉の忖度はともかく、来日直前の公演中止は如何にも非常事態、現下の日中関係の悪化を否応なく示してしまっています。千葉はあまりピアノ音楽が得意ではないので今回の来日を特段楽しみにしていたわけではないけれど、それでもこの公演に彼が特別の思いを持って臨むだろうことは察していました。だって、ベートーヴェンをメインに据えたごまかしようのないプログラムをもって、ファンも多ければ耳の肥えた音楽愛好家も多い(いまでも好んでCDを買って聴くような!)東京で公演を行うこと、ただの出稼ぎ公演とは位置付けられませんよ。それはどんな名門オーケストラでも楽器の演奏家でも同じです。
ちょっと話が本筋から逸れますけど書いておきましょう。地方出身者だから残念な思いを持ちつつ実感を持って断言しますが、東京での、それもサントリーホールやオペラシティなどの音響的にも優れた都心部の会場で行われるコンサートには、特別な雰囲気があります。地方公演にはまた別のよさがあるのですが、それはまた別途。ツアーの頂点をなすような特別な演奏会を求める音楽に通じた聴衆、その雰囲気を感じて奮い立つ演奏家、その出会いだけが生み出せる特別な空気、それはある意味では19世紀の芸術宗教を正統に継いでいるのではないかと思うものです。最近は行ってませんけど(笑泣)。
そんな意味付けはプロモータのみならずアーティスト本人もわかっていたことでしょうから、今回その機会が失われたことの意味は察するにあまりあるものです。もちろんその落胆も。それが本人のアニヴァーサリーでもあるような公演であればもう、かける言葉が見つかりません。無念。
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というのが、このブログ的視点での、つまり音楽方面から見た今回の突然の来日キャンセルの残念さ。でも今日はそっちはあまりメインじゃあ、ないんです。趣味じゃないけど忖度まじりの憶測をします。外交って定型の言い回しを駆使して言質は与えずしかし両国の関係をマシな方向にし、その中でも自分たちの得られる利益を最大化するよう努めるもの、でしょうし。
きっと、日本でも人気のピアニストを「危険が想定される」ところに送りたくない、という比較的穏当に敵意が示せる言い方で、彼らはこのキャンセル以上の意味合いを含ませているように思います。率直に感じたままを書けば、「これは手始めで、あくまでも小手調べです」とでもいうような。そう、芸術が文化がどうこういうことに重きをおいた判断ではない、あくまで交易としての側面での判断かな、と見るのです。日本で本当に彼の身辺に危険が!と思っているわけではない、のではない、けれどこういった出し入れはどうとでもできてしまうことをお忘れなきよう、と。それに使われてしまい大事なコンサートになり得た機会を失った李雲迪氏の残念さ、そして彼の来演を期待していた少なからぬ音楽ファンへの配慮の上の層、もっと身も蓋もない直接的な力関係の提示。
まあ、わかります。今回の二国間関係の危機は(残念ながらもう「悪化」ではないと思う)、まずは石原慎太郎くんがなぜかアメリカのシンクタンクであるヘリテージ財団で「都が尖閣諸島を買い上げる」と発表したことに端を発した一連の流れであり、その中で日本は驚くほど自閉的な対応を続けてきた。やれやれ。
いつも思うんだけど、大使を召喚してしまったら、日本の意志は伝えられないってこと、わからないのかしら。なお、かの国の事情は忖度するには複雑すぎるので、ここでは踏み込みませんよ。共産党大会を前に現在の上層部と次世代の有力者たちの政治闘争がある、世代や階層に応じて振舞いには相当の格差がある、反日という看板の元に違う主張をしている層が少なくなく見受けられる(薄煕来氏をめぐるかの国の思惑は生かじりでどうのこうのという気にはならない複雑さだ)、職業的活動家の動きが尖閣諸島上陸時から見受けられる、などなど変数が多すぎるし、自国のことでない以上それなりの実感をもって語るには情報が少なすぎる。この程度の認識でも書ける、誰かの口真似なら千葉が書くこともないでしょう?(笑)
そこまでは想像がつくし一定の理解ができる。問題の大小によらず見解の相違があっても、そこまでは感情的な拒絶の前に認識しないと。ある程度の理解をお互いにして、それでも残る見解の相違をどう折り合いつけていくのか。それが外交で、その影響の一端として今回の件がある。うむ、ここまでは理解したよ。
でもなあ、って思うわけですよ。民間の交流ルートを閉じるのはどうなんだろう、と。正式な国交では難しい部分を補完してくれるかもしれない可能性としての民間交流を閉じてしまうことで、硬直した外交的やり取りが二国間のすべてのやり取りになること、少なくとも昨今の雰囲気を考えるとあまり得策とはいえないような。ことクラシック音楽の分野って、行動的な国士様との相性があまり良くないような気がするからこのルートを活かしておいても危険は少ないように思うんですけどね(笑)。ああ、でもこれが平和ボケである可能性もあるか、むむむむ。難しいですね、やっぱり。
いろいろと言ってきましたけど、考えてみればピンポン外交のお国でいらっしゃったわけじゃありませんか、中華人民共和国は。民間ルートの活用、考えていただけるといいなあ、全人代が終わればその可能性が出てくるのかしら。現在はネットなどの形で完全に交流を塞ぐことは難しいから、そんなに難しく考えなくてもいい、のかもしれないけど、最悪の最悪まで考えておくことはムダにはならないのではないかな、とか思う次第なのでした。
ううん、なぜかこっちでは公演中止のお知らせを書くことが多いな私(笑)。まあいいや、あまり考えないでいこうそうしよう。
微妙に世界へ情報拡散に貢献する当ブログ(笑)としては、最後に2013年1月来日予定のある同じ中華人民共和国の誇る若きピアニスト郎朗くんのチケット先行発売が今日から始まっていますね、と世間話をして〆ましょう(笑)。来年の一月には収まってるんですねこの険悪な状況、よかったなあ(望遠)。では。
追記:李雲迪さんことユンディ・リ本人からのメッセージがジャパン・アーツのサイトにて公開されました。まあ、基本的に同意であります、ここに書いたことを変える必要はまったく感じませんでした。またの機会を、と思うのみです。
あ、演奏の話をヒトコトもしてませんね(笑)。ユンディは残念ながら聴いたことがないのだけれど、ラン・ランは何度かコンサートで聴いています。あれだけ弾けるって、それだけで圧倒的なんですよね、きっと19世紀的ヴィルトゥオーゾ路線を極めることができる人なんじゃないかなって期待してます。DVDのリンクを貼ったのは何も顔芸以下略。
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