2012年9月27日木曜日
穏やかで親密なヴィヴァルディ、いいですよ
こんにちは。千葉です。
前置きなしで行きましょう。まるで昔のような連日のコンサート、いい刺激になります。二日目はこちらでした。
◆新イタリア合奏団 演奏会 ~ヴィヴァルディを讃えて~
2012年9月26日(水)15:00開演
会場:すみだトリフォニーホール 大ホール
出演:
ヴァイオリン独奏:フェデリーコ・グリエルモ
フルート独奏:アンドレア・グリミネッリ
アンサンブル:新イタリア合奏団
曲目:
弦楽のための協奏曲 ハ長調 RV.114
二つのヴァイオリンと二つのチェロのための協奏曲 ニ長調 RV.564
ヴァイオリンとエコー・ヴァイオリンのための協奏曲 イ長調 RV.552
調和の霊感》より 4つのヴァイオリンとチェロのための協奏曲 ロ短調 Op.3-10
ヴァイオリン協奏曲集 「四季」 Op.8-1~4(フルート独奏による演奏)
新イタリア合奏団のヴィヴァルディづくし、東京公演の初日です。口の悪いイーゴリ氏は「同じ曲を数百回書いた」とか言ってしまってますが、どうなんでしょう。その作品のフォーマットに近いものはあると思うけど、個々の曲ごとに如何に趣向を凝らすかという点ではかなりのものかと。って、今さら千葉がヴィヴァルディを持ち上げる必要はないですね、えへへ。でもねえ、特に前半の「二つのヴァイオリンと~」、「ヴァイオリンとエコー~」の趣向はなかなか楽しめるものでした。前者は独奏者同志の丁々発止、後者は遠くに置かれたヴァイオリンがこだまとしてステージ上のソリストと対話するものでした、こういうのは実演じゃないと伝わりにくいですからね、うん。
新イタリア合奏団こと「I Solisti Filarmonici Italiani」の、モダン楽器を使ってはいるけれど古楽的な演奏は、今の千葉にはとても気持ちよく響きました。攻撃的にすぎないアプローチの、モダン楽器による演奏というのはいささか折衷的ではあるけれど、これはこれでよし。それが最近の千葉のいわゆる「古楽」、同時代アプローチを採用した演奏に対するスタンスかも。緩くなってきたんです、私(笑)。イル・ジャルディーノ・アルモニコとかアーノンクールのアンサンブルとか、それももちろん楽しいんですけどね、彼らのような穏やかな対話そのもののようなアンサンブルを聴くことの楽しさ、なかなか得難いものだと思います。
そう、アンサンブルは家族的といってもいいくらいに親密で緊密。リーダーのフェデリーコ・グリエルモからバッソ組まで、互いに勝手知ったるアンサンブルの楽しさは前半から好調そのもの。個々の曲の趣向を存分に楽しませていただきました。あ、でも尻上がりにさらに演奏が良くなった感もありますね。特に、アンコールの自由さはなんなんだろう。後述します。
メインの「四季」ではいつもはソロを取るだろうグリエルモがアンサンブルを引っ張る格好だったんだけど…フルートでこの曲を、という試みそのものは興味深いしなかなか楽しめたのですが、同時にオリジナルのヴァイオリンとの違い、特にグリップ感(笑)の違いは、若干この曲の印象とは異なる部分もあった、ように思います。私見ですけど。
独奏のアンドレア・グリミネッリは前にも一度聴いたことがありますが、細めの音で音の扱いは真面目な印象があったんですよね。実際この日も、アンサンブルに比べると硬さを感じさせる部分はありました。でもなにより、ですね。
変な言い方になりますが管楽器はハイデガー的な「先駆」をしてないとまともな演奏にならない、加えて彼はソリストとしてアンサンブルに対峙し対話し、時に彼らを引き連れて行かないといけない。まあ、ただアンサンブルに神輿として乗っかる、というのも手でしょうけど。昨日の演奏はですね、若干、アンサンブルに揉んでもらってた感じになってました。特に通奏低音組に遊ばれすぎです(笑)。チェンバロにテオルボ、そしてチェロバスの即興やアクセントでの仕掛けの数々に、「先駆」しないといけない管楽器だと反応できたりできなかったり、なんですよね。その点は、ちょっと惜しかった。ちょっとアタックが浅めだったりするのは、まさに自家薬籠中の曲で自由自在に振る舞うアンサンブルの仕掛けの前に、分が悪かったかも。とは言え彼も尻上がりによくなった、と思います。「夏」まではけっこう手探り感もありましたので…
でも個人的にはトゥッティにフルートが一本入った響き、まったくオリジナルでもないものだけどけっこう好きでした。興味のある方はまず、こちらの動画で少し聴いてみては如何でしょう、彼らの「冬」であります。
プログラムはそのフルート独奏版の「四季」までなのだけれど。その後アンコールが「アンサンブルのみ→フルートあり→アンサンブルのみ→フルートあり→フルートあり」と繰り広げられました。喋り出したら止まらないイタリア人かあんたらは(はい、そうだと思います)。ヴィヴァルディをずっと聴いてきてそのスタイルに馴染んだ聴き手にはもうごちそうというしかない二曲、これだけでもお腹いっぱいになれるのに、ソリスト付きでさらに三曲ですからねえ…
グリミネッリも編曲ものじゃない、オリジナルだとかなり楽に演奏できているようで、かなりのスピードで駆け抜けたバッハのバディネリはなかなかでした。
また、彼らがモダンと古楽を往還できるアンサンブル(楽器を持ち替えたらL'Arte del Arco、そのまま古楽アンサンブルになりますからね!)であることをこの上なく雄弁に示したロータの「ガブリエルのオーボエ」(映画「ミッション」より)の艶っぽいこと!それまでの「節約されたヴィブラート」による丸い響きもよかったけれど、嫋々と歌うさまもまた良い。これもまたイタリアの歌、なんですなあ…
そして最後に「ニッポンのまったく知られていない歌を」と言って始まったのが成田為三の浜辺の歌。ああ、知らなかったわこんな綺麗な曲っておい!
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でもね。最後にひとつだけ言わせてほしいの。
私の隣の人達がさ。メインプロが終わったらすっかりくつろいじゃって。アンコールの最中は喋ってもいいマイルールを採用したのかなんなのか、演奏中にぼそぼそとお話になっておりましたの。聞こえるっつーの。そんなルールないって。ありませんから。
でね。最後にね。「浜辺の歌」でね。しくしく。
ええ、私も思っていましたわ、彼らったらまるでのど自慢ですわ歌い出したら止まらない、なんてね。でもね。いくらサーヴィスでみんなの知ってる曲を演奏してるからって、合わせて歌いださないでよ!もう動揺するわこっちが!コンサートのマナーとかそういうレヴェルじゃないよそれ?
アットホームな彼らの雰囲気がそうさせた面がある、とか言えないこともないけれど、さすがに自重しましょうよ。お願いします後生ですから。
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ふう、なんとか午前のうちにアップできました、一安心。今晩もすみだトリフォニーホールでは別プログラムでの公演がありますし、29日(土)にはまた別の「オール・ヴィヴァルディ」のコンサートが横浜みなとみらいホールで行われます。ああ、そっちはグリエルモの独奏で「四季」なのか、むむむむむ。
ともあれここまでで昨日のコンサートのレビューはおしまい。なお、以後のコンサート出没の予定は、ありません。無念。ではまた。
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