2012年9月27日木曜日

ラーンキの音が言葉にならない


こんにちは。千葉です。

コンサートのレビューや読書の感想、溜めるとなかなか出てこなくなる悪い癖があります。下書きをいじってある程度できると満足しちゃってアップしないとか、あるんですよたまに…後で抜けがないか確かめよっと。

************

そういうわけでどういうわけで、行ってきましたコンサート。以下ざっくりとしたレビューです。

◆デジュー・ラーンキ&エディト・クルコン ピアノ・デュオ・リサイタル
~ドビュッシー生誕150年スペシャル・プログラム~

2012年9月25日(火) 19:00開演

会場:Hakuju Hall


ピアノ:デジュー・ラーンキ、エディト・クルコン

曲目:

ドビュッシー:
  牧神の午後への前奏曲 〈四手〉
  六つの古代碑銘 〈四手〉
  小組曲 〈四手〉
  白と黒で 〈二台〉
  リンダラハ 〈二台〉
  夜想曲 〈二台〉

白寿ホールは千葉はこれで二回目、ピアノで聴くのは初めて。前回は「古楽アンサンブルとソプラノ、それにダンス(加えて若干のプロジェクション)」という攻撃的な(笑)公演でしたから、普通のコンサートは初めてと言うべきでしょう。だから、というわけでもないんだけど。このホールの独特のサウンド、なかなか面白いですね。どんなに二台のピアノが低音を鳴らしてもサウンドは頭に、というか上半身に直接響く感じ、足元からは音が来ないんです。そのせいかどうかはわからないけれど、椅子の座り心地よろしきこととあいまって不思議な安らぎがあるんです。もうあれですよ、仕事帰りに慌てて寄った日にはもう。

そんなホールでですね。いきなり「牧神の午後への前奏曲」(ラヴェルによる編曲1910、元曲は1894)から「六つの古代碑銘」(1914)に繋ぐなんてあれですか、このホール自慢のリクライニング・コンサート状態でも作り出したいんですか(笑)。クルコンが牧神のあの有名な冒頭の旋律を弾き始めてからしばし、恍惚というのも変なのだけれど、しばし明晰な認識を旨とする私(いちおう(笑)なしです)にはあるまじき、ただ聴こえてくる音に変わりゆき響きに耳を澄ませるだけの状態でした。なんなんでしょうね、あの音は…一つの旋律から響きが広がっていく感覚、それをただ受け入れるだけというか。なおこの二曲は奥様が上声、ラーンキが低声側でした。
席替えをして前半最後の曲が小組曲(1896)。いやあ、愉快愉快。二人でひとつの鍵盤をシェアする窮屈さも感じないし、「夫唱婦随」なんて言いますけどこのお二人はどちらがリードでどちらがついていく、みたいな役割分担ではなく、まさにわかっているとおりに演奏されているような自在さがこの曲に合うのなんの。この時期はまだそれほど影響を受けていないはずのジャズにも似たノリの良さ、実に痛快でした。


で後半、二台ピアノの時間です。舞台前方に奥様、奥に旦那さまの配置。
はじめの二曲は「白と黒で」(1915)と「リンダラハ」(1901)。不勉強にももしかしてはじめて聴いたかな、私。二台ピアノの録音はたしかベロフとコラールのものが何枚かあるだけ、だと思うので…(だから言ってるでしょ、ピアノは得意じゃないんです)でもですね、この二曲は面白かった。「白と黒で」はプーランクにつながる線が見える様だし、「リンダラハ」はあたかもセッションの様なノリノリの演奏が素敵。あとタイトルからかってにイメージしていたパリ万博由来のエスニックな響きも、あったように思ったけど気のせいかなあ(自信なし)。だって解説を見るとスペイン云々あるもので。しくしく。
そうそう、後半の二台ピアノ、やっぱり連弾、一台のピアノに四手よりも場所が広いからか、二人とも弾きやすそうでしたよ、アクションも大きめでした(笑)。あと、これは書いておかなくてもいいんだけど。このあたりで感じたんですが、奥様のほうがリードされてるのかな、というか、ラーンキが付き従っているというか、だんだんわかってきたような(笑)。ステージの出入りにもクルコンの意志が最優先されてましたし。うん、そういう夫婦なのだな、と思うことにします(笑)。
そしてコンサートの最後はこれまたラヴェル編曲による「夜想曲」(1910、元曲は1899)。この頃になるともうこちらもホールに慣れてきますし、なにより勝手知ったる作品ですよ。もうただ身を任せて楽しませていただきました。あまりにノリノリすぎて、演奏が終わったことに一瞬気付けないほど集中できたのは、お二人の演奏もさることながらラヴェルの編曲がいいんだなあなんだろうこの違和感のないアレンジは、と何度となく思わされました。

アンコールはなく(奥様が、あのう、まったくその気がないようでした)、演奏会は何度かのカーテンコールでおしまい。ドビュッシーの響き、だけじゃない音楽を楽しませていただきました。ごちそうさまです。

************

これは本当に余談というかなんというか。
あのう、ピアノの演奏会はそれはもう、数限りなくありますが(誇張ではないと思います、こと首都圏だけ見ても)、四手/二台ピアノをメインに据えた演奏会はそうありません。少なくとも、このレヴェルで聴けるものは。そしてドビュッシーの記念年にその作品をまとめて演奏してくれる演奏会だったのに、場内満場とは言えない感じだったのは、いかにももったいないことでした。最近、Twitterなどであまりお客さんの入っていない公演があるような雰囲気は感じていましたけど、それはチケット代の高騰やいわゆるミスマッチの類かなと考えていたので、この演奏会でこの反応は少し残念です。東京都内くらいでしかこういう考えられた企画公演には出会えませんのに、あまり求められていないのかしらん。難しいわねえ…個人的には、何人かの絶対に聴きたい音楽家の公演以外にはこういうコンサートに反応する方ですので、なんとか、こういう公演がうまくいく世の中であってほしいなあとぼんやり願うのでした。

************
なお、先ほどは「こんな公演は都内くらいでしか」と書きましたが、彼らの演奏会は9/28に京都で、同じプログラムで行われます(まあ都ですかね←おい)。興味のある方はぜひ。また、デジュー・ラーンキのリサイタルは10/2に浜離宮朝日ホールで行われます。聴きたいなあ、あの音でシューマンとか。いいに決まってるじゃないですか。
なんというか、千葉の語彙だとうまく形容できないのですが、とても純粋に音楽が入ってくる、そんなピアノを聴いたように感じているのです。絶対に録音には入らない、でも間違いなくそこにある美しいものを聴くことができた、ような。いやはや、実演はいいですね、刺激になりました。
ではとりとめなく〆もなく本日はこれにて。もうひとつ、行ってきたコンサートの話はあす午前中にでも。ヒントはリンク先です(笑)。ではごきげんよう。



浜離宮朝日ホールのサイトで岡田暁生さんが言及されてるのはこの盤でしょうかね、ちょっと見逃していた感がありますです。

0 件のコメント:

コメントを投稿