2016年12月9日金曜日

書きました:たった2回のみ上演される、充実のモーツァルト———演奏会形式で体感する《コジ・ファン・トゥッテ》

こんにちは。千葉です。

最近、突然忙しくなってその後出番そのものが消えるパターンではあるけれど仕事があります。ありがたいありがたい。ぜひお声掛けください、何でもとは言わないけど書きます(都合のいい営業)。
人目に触れる記事は少しでも早くお出ししたいし、記事が出たら自分のブログで軽めのB面も書いておきたい。その手が回らないのはなんとも残念なことですが、この週末に向けて私が推す公演の記事が二つばかり出ています。

その一は、ジョナサン・ノット監督と東京交響楽団の、第三シーズンを締めくくる公演のリハーサル紹介です。


取材は12月6日、記事にも書きましたとおりリハーサルは第一幕のみでした。ですが、この第一幕を聴いて公演の成功を確信しないなら、私は会場で寝ていたんでしょうきっと。厭らしい言い回しを省いてしまえば「これはいい上演になるわ」という確信を得て帰ってきたよ、という記事です。
小編成のオーケストラは先日の「ナクソス島のアリアドネ」と同程度ながら、東響得意の作品の成立年代、作曲された地域に合わせて楽器やスタイルを変える方法で20世紀の新古典主義の先駆けから古楽オーケストラに近いサウンドをも使いこなす古典派オーケストラに変貌していました。もちろん、それはスダーンの時代から培われた団内の共通理解あっての変貌です、無理をしているようなところは一切ない。ホールの方も「ここまでの小編成はモーツァルト・マチネでもしていない」と驚かれるほどのサイズながら、オーケストラの伸びやかな音はホールを柔らかく満たしていくんですよ。素晴らしいのなんの。

そして、ノット監督の治世が三シーズン目も終わろうとしている今、さらに言うならば欧州ツアーも成功させた今のコメントとしては、先日のイザベル・ファウストを迎えたベートーヴェンを思い出しておくべきかもしれません。「強い音でヴィブラートをかけて弾きまくるタイプのソリストではない彼女と、互いに聴きあい立体的なサウンドを創り上げ、それをツアーで繰り返し演奏する」貴重な経験を経て、今の東響にはこんなモーツァルトが可能になった、と申し上げればファウストとの共演をご記憶の皆さまはサウンドをイメージできるのでは?
夏のブルックナーが一つの大きなステップとなった公演であることは、これからリリースされるCDで多くの皆さまに理解されることと思いますが、この「コジ・ファン・トゥッテ」もまたひとつの区切りを感じさせる大きな公演となる。リハーサルを拝見し、そう感じていますので、今まだ金曜と日曜に時間を作れる方には「是非!」と申し上げます。これを聴くことができるスケジュールなのにスルーしちゃうだなんて、あまりにももったいないことです。
※「コジ」の会場で先行発売されます。

千葉は東響びいきだからそう言うのだろう?と疑われる方もいらっしゃるかもしれませんけれど、どうせなら聴いてから疑ってください、絶対に損はさせませんから(ノット&東響、そしてキャストと合唱の皆さんが、ですけど)。古典派でこういう演奏ができて、もともとモダンな作品に強い、そして監督はベートーヴェン以降のロマン派が大好きだから新シーズンにはそこに注力し、その上オペラでこれだけの演奏ができてしまったらこの先どうするの?なんて余計なお世話もしたくなりますが、そこは団の皆さまが口を揃えて「もっとノット監督の要求を消化していい演奏をしたい!」と思っている東響ですから、もっといい演奏を重ねて成長されることでしょう。そしてそれは私も含めた聴き手にとって、この上なく喜ばしいことです。嬉しいなあ(しみじみ)。

そしてここまでオケの話をメインに書きましたが、今回のキャストにも触れておきましょう。
記事でも書いたことですが、今回の「演奏会形式」がセミステージくらいの演出付きになったのは、ドン・アルフォンソ役のトーマス・アレンのリードで自然とそういう流れになったのだとか。ノット監督がハンマーフリューゲルに向かっているレチタティーヴォの間、またちょっとしたリハーサルの合間に歌手同士がディスカッションをしながら立ち位置や所作がどんどん決まっていくステージ上は、その進行だけでも楽しくて仕方がない、その上作品が「コジ・ファン・トゥッテ」ですからね(私はこの作品、ラトルの録音を聴いて以来ずーっと大好きです)。そして、個人的な思い入れを申し上げますなら私が最初に買った映像のドン・ジョヴァンニだったトーマス・アレン(スカラ座のLD)がとてもいい年のとり方をして、この意地悪なおじさん役を楽しんでいるさまを拝見できたのがもう、嬉しくて。公演に期待です。キャストが二人変更されたほかの面々も大いにこの舞台に積極的に参加されていて、舞台のできあがりを心配する必要はないのではないかと。記事にも少し書いたエピソードではありますが、フィオルディリージとして舞台袖から歌いながらカミンスカイテが登場した瞬間の驚きと喜び、どう書いたら皆さまに伝わるものでしょうか…即席の”カンパニー”、とてもいい感じなんです。

彼女が到着して、歌いながら舞台に登場した直後の写真、幸いにして撮影していました!いえい!(調子に乗らない)


あまり長く書きすぎてもいけませんね、言いたいことをまとめてしまうと「絶対いいものになるから、金曜の川崎か、日曜の池袋、都合のつく方に行こうよ」ということになります。自分の耳でぜひ、ノット&東響の現在のモーツァルトを聴いてみてほしいんです。これが新たなスタンダードになれたら、ちょっとこの先は凄いことになりますよ。

ということで記事の紹介、のような全力推し記事は以上。ではまた、ごきげんよう。

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